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被爆による急性放射線障害の治療

被爆による急性放射線障害の治療

急性放射線障害

放射線は、細胞を傷つけ、死滅させます。ある程度までの被曝であれば、すぐに身体の症状は出ませんが、一度に大量の被曝をすると、たくさんの細胞が死滅し、数週間以内に症状が出ます。これが急性放射線障害です。ただし、福島第一原発の敷地外にいる住民の方は、このような大量被曝の可能性はほぼありません。

体全身ではなく限られた部位の被曝なら、症状も一部にとどまります。全身に浴びれば、様々な症状が起こりますが、影響を受けやすく、命に関わるのは、主に細胞分裂がさかんな皮膚や、血液、小腸など消化管の細胞です。

まず、0.5シーベルトから血液細胞に影響が出始めますが、一時的な症状にとどまります。吐き気などの自覚症状が出始めるのは、1シーベルト程度からです。


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血液の治療

自治医大さいたま医療センター血液科教授の神田善伸さんによりますと、2~3シーベルト程度からは、白血球などの血液細胞になる造血幹細胞の働きが悪くなるため、本格的な治療が必要になります。血液中の白血球を増やす「顆粒球コロニー刺激因子」(G―CSF)という注射薬で免疫力を高め、感染症を防ぎます。

さらに高い被曝量ですと他人の骨髄や血液から造血幹細胞をとり、点滴で移植する治療が必要になります。

皮膚の治療

皮膚の症状は数シーベルト以上で出始め、被曝線量が高いほど深刻になっていきます。新しい皮膚を作る働きが失われるため、最初は赤みや痛みが起こります。徐々に、水ほうや潰瘍が現れます。経過をみて、深刻なら、皮膚を移植します。自分の皮膚を使うのが望ましいですが、全身被曝で健康な皮膚が少ないなら、救急医らで作る「スキンバンク」で凍結保存している皮膚も使います。

1999年の東海村臨界事故では、大量に被曝した作業員2人に、皮膚移植が行われました。うち1人の担当医だった国士舘大教授の田中秀治さんは、「被曝で免疫が落ちていたこともあり、拒絶反応がなく、皮膚移植は成功しました」と話しています。

2人は造血幹細胞移植で血液の働きも改善しましたが、消化管からの出血などは有効な手だてがなく、亡くなりました。

内部被曝の治療

放射線を出す放射性物質が大量に体内に入った場合は、内部被曝が問題になります。ヨウ素は甲状腺、ストロンチウムは骨、プルトニウムは骨と肝臓に集まりやすくなり、セシウムは全身に蓄積します。利尿剤や下剤、放射性物質に応じた特殊な薬で尿や便からの排出を促します。

安定ヨウ素剤(ヨウ化カリウム)を予防的に内服して甲状腺内を安定ヨウ素剤で満たし、以後のヨウ素の取り込みを阻害します。

安定ヨウ素剤は、摂取ガイドラインに沿って摂取することで24時間甲状腺を保護し、後から取り込まれた「過剰な」ヨウ素は速やかに尿中に排出します。

また、放射性ヨウ素の吸入後であっても、8時間以内であれば約40%、24時間以内であれば7%程度の取り込み阻害効果が認められると言われています。この薬は副作用は少ないと言われていますが、ヨウ素への過敏症や、甲状腺機能異常が副作用としてあります。

プルトニウムアメリシウムなどの除去剤「ジトリペンタートカル」と「アエントリペンタート」があります。

有効成分は、ジトリペンタートカルがペンテト酸カルシウム三ナトリウム、アエントリペンタートがペンテト酸亜鉛三ナトリウムです。

この薬剤は、超ウラン元素(プルトニウム、アメリシウム、キュリウム)による体内汚染の軽減させます。

この薬のメカニズムは、原発事故などで体内に吸収した超ウラン元素のプルトニウムなどを、カルシウムや亜鉛と置換し、尿中に排泄するキレート作用によるものです。

現在(2011年6月)厚生労働省薬事・食品衛生審議会薬事分科会からの、承認をまっています。

セシウム除去剤は「ラディオガルダーゼ」です。

薬の一般名は、ヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸鉄(Ⅲ)水和物です。つまり、鉄の周りに、6個のシアンが結合し、そこに更に水分子と鉄が結合しています。

この物質は一種の吸着剤で、薬そのもの自体は殆ど体内に吸収されず、腸管のセシウムを吸着して、それを便から排泄します。

体内に入った放射性セシウムは、その多くが腸管から静脈、肝臓を循環しているので、それを腸管で捕捉し、体外に排泄するのが、この薬のメカニズムです。

主な副作用は低カリウム血症です。これはこの薬はカリウムよりセシウムを、より吸着し易い構造になっている訳ですが、生体はそもそもカリウムとセシウムを、あまり区別はしていないので、当然カリウムも体外に排泄され、低カリウム血症の原因となります。

このため個人でかってに服用せず、入院して医師の監視下のもと、適宜カリウム値を測定して、低カリウム血症を防いでください


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