最新の医療医学・情報サイト

関節痛

関節痛の最新治療法(7)


スポンサードリンク


変形性膝関節症の三次元培養軟骨移植術

変形性膝関節症の三次元培養軟骨移植術の方法

変形性膝関節症の三次元培養軟骨移植術は、再生医療の一種で、患者から膝軟骨細胞を取り出し、一ヶ月 間コラゲーンで軟骨細胞を培養し、軟骨がすり減った部分に移植する方法です。

この方法ですと、人工関節置換術と異なり、正座や激しい運動もできます。

ただし三次元培養軟骨移植術は60歳までが限界です、60歳以上ですと軟骨細胞成長が弱まり、細胞が増え ないからです。

幹細胞を使った三次元培養軟骨移植術

そのため60歳以上の方でも治療できる、骨髄から取り出した「幹細胞」(かんさいぼう)を使った新たな 治療法が、現在開発されています。幹細胞とは骨や筋肉、軟骨に変化可能な特殊な細胞です。

患者の骨髄から幹細胞を取り出し、培養施設で培養して、患者の軟骨がすり減った部分に移植する方法で す。幹細胞は液状ですので、この方法が確立しますと、注射一本で治療することができます。動物実験では すでに成功していますので、これから臨床実験に移行する段階です。

変形性膝関節症の三次元培養軟骨移植術を行っているのは、広島大学病院の越智光夫医師です。

三次元培養軟骨移植術は保険適用外で、現在厚生労働省に申請して許認可待ちです。(2009年10月現在)

関係医療機関 広島大学病院

関節痛・日本人向け新型人工股関節

従来の人工股関節

「畳文化」の日本では欧米に比べて、正座したり、和式トイレにしゃがみこんだりと、股関節を大きく曲 げる姿勢を強いられることが多いです。

しかし国内で使われている主な人工股関節は、欧米人向けの輸入品で、日本人の生活様式が考慮されてい ません。このため正座などをすると、脱臼して、再手術を余儀なくされることもあります。

日本人向け新型人工股関節

このため日産玉川病院とアメリカのベイラー医大などと協力して、日本人女性の股関節をコンピューター 断層撮影(CT)して、立体的に日本の生活様式における、関節の動きの特徴を分析しました。

その結果、日本人は正座などの姿勢ができるように、大腿骨(だいたいこつ)の突起部分が、欧米人の2 倍以上もねじれていること(前捻:ぜんねん)が、わかりました。

この結果を基本に、日本人に合った人工股関節を、米医療器メーカーと共同開発しました。人工股関節の 長さも日本人の体格に合わせ従来品の3/4に縮め、大腿骨にすき間なく、埋め込まれることで、最適な前 捻が得られます。

人工股関節と大腿骨の間に空間ができてしまうと、その部分の骨が失われ、折れやすくなります。また人 工股関節の形状も工夫して、より曲がりやすくなっています。

日本人の骨の形状に合った人工股関節なので、埋め込むための骨削りが最小限ですみます。たとえ人工骨 がぐらついて埋め直しが必要になっても、それに対応できる骨が十分に確保されます。

関係医療機関 日産厚生会玉川病院

関係サイト NPO法人のぞみ会(変形性股関節症友の会)  社団法人日本リウマチ友の会 

関節痛・人工股関節の極小侵襲(しんしゅう)手術

従来の人工股関節手術

高齢化社会が進むにつれて、骨盤と大腿骨をつなぐ股関節の軟骨がすり減って痛みが出たり、歩行困難に なったりするお年寄りが増えています。症状が悪化すると、人工股関節を入れなくてはなりませんが、入院 が1~2ヶ月かかり、お尻の横に15~20センチの傷が残るので、特に女性には抵抗があります。また傷が 大きいと、感染症にかかりやすくなります。

人工股関節の極小侵襲(しんしゅう)手術

このためアメリカで開発されたのが、「極小侵襲(しんしゅう)手術」です。手術の方法は、まず従来の 半分以下の6~8センチほどを切開をします。そして、その奥の筋肉、じん帯へと切り進み、股関節を露出 させてから、金属の人工股関節を埋め込みます。

小さな切開部を通して手術をしますので、人口股関節を埋め込む穴を開けたり、骨を削ったりするための 特別な医療器、具約10種類を使用します。手術時間は従来に比べて、30分ほど長くなりますが、患者の 平均入院期間は13日と、従来の半分以下です。

手術後3日ほどベッドで安静にするのが一般的でしたが、極小侵襲手術では当日か翌日から歩行器を使っ て起き上がれて、痛みも少ないそうです。手術後、血液の塊ができて血管を詰まらせる肺塞栓や貧血などの 合併症が心配されますので、早期に退院するには、薬を飲むなどして予防しなくてはなりません。

この手術は切開部が小さく、手術中の視野が狭いために、股関節の変形が大きい患者の方への治療が出来 ない場合がありますが、人工股関節が必要な人の9割に対応できるそうです。

関係医療機関 湘南鎌倉人工関節センター

関節リウマチの白血球除去療法

関節リウマチの原因

患者数70万人以上とされる関節リウマチは、白血球が病状進行に大きく影響しています。血液中の白血 球が関節内に入り込み、何らかの原因で関節を包む滑膜(かつまく)を攻撃し、炎症を起こします。本来は 病原体を攻撃する白血球が、自分の細胞を攻撃する「免疫異常」です。滑膜の炎症が長引くと、関節内の軟 骨や骨が破壊され、病状が進みます。

関節リウマチの白血球除去療法

関節リウマチの原因となる白血球を取り除くのが「白血球除去療法」です。方法は片方の腕から静脈から 血液を抜き出し、極細の繊維で作られた布が入ったフィルターを通してから、反対側の腕に戻します。

細菌などの異物に食いつく性質のある白血球は、フィルターの布にくっつき、除去され、リウマチと関係 ない赤血球はほとんど除去されません。約1時間の治療で、白血球の一種、好中球は、ほぼ100%除去さ れます。治療後、半日から1日が経過すると白血球は元の数に戻りますので、感染症にかかる危険性はほぼ ありません。この治療は週一回のペースで、5回行われます。

この治療法に対し、既存の薬が効かない患者の方を対象に、調査研究が行われました。その結果、腫れた 関節の数が2割以上減るなど、病状改善が認められた患者は75%にのぼり、同じく5割以上の改善がみら れた患者も30%を超えました。既存の薬が効かない患者の方が対象でしたので、改善率はけっして低くは ありません。

除去した白血球はすぐ回復すのに、なぜ治療効果があるかの、明確な仕組みは分かっていませんが、白血 球による炎症が一時的にも治まれば、病因の免疫異常も、ある程度正常化するのではないかと、推測されて います。

ただし3年ほど効果が続いた例もある一方で、1年後に再び悪化する例もあり、長期間に渡る効果は分か っていません。また副作用として吐き気、血圧低下、発熱などがありますが、症状は軽いそうです。

白血球除去療法は保険が使え、高額医療費も適用され、自己負担は8万円以下になるそうです。

関係医療機関 佐世保中央病院

関節痛(変形性膝関節症)の運動療法

変形性膝関節症の治療は運動療法が基本

変形性膝関節症に対する運動療法は、以前は補助的なものでしたが、その効果に対して欧米や日本などで 多くの治験(臨床試験)が行われました。その結果運動療法の脚上げ運動は、変形性膝関節症の治療して、 痛み止めの薬と同等もしくは、それ以上の効果があることが確認されました。現在では変形性膝関節症の治 療の基本は、運動療法となっています。

運動療法の目的

運動療法の目的は、膝の関節を支える筋肉を鍛えて、関節にかかる負担を軽くして、膝の動きを滑らかに することです。それにともなって、老化を防ぎ、肥満の改善防止にもなるのです。

膝が痛いために、動かないでいると、筋肉が衰え関節の変形がさらに進行しますし、薬で痛みを抑えても 、一時的なものですので、筋肉を鍛えなければ、症状はもっと進行してしまいます。

運動療法の基本

運動療法の基本は、おもに3つあります。

  1. 筋力トレーニング
  2. ストレッチ
  3. 有酸素運動(ウオーキングや水中歩行)

筋力トレーニングは膝を支え、膝の動きをコントロールしている大腿四頭筋(太ももの前の部分)鍛える ことが、目的です。

ストレッチは膝の動きを滑らかにして、柔軟性を保つために行います。

ウオーキングや水中歩行などの有酸素運動は、膝に負担を軽くするための減量を目的に行います。変形性 膝関節症の原因の一つに肥満がありますので、減量も運動療法の目的になります。

この運動療法は、これら3つを組み合わせて行い、症状の重症の度合いや個々の患者の症状に応じて、中 心となる運動が変わります。

初期の運動療法

膝が動かしやすく、痛みも少ないので筋力トレーニングを中心に行い、筋力をつけて有酸素運動で減量を します。これらの運動のあとは、ストレッチを行い、柔軟性を保つように努めます。

中期・進行期の運動療法

膝の痛みが激しいので、体を動かしずらいので、ストレッチが中心になります。筋力トレーニングや有酸 素運動は負担の少ないものを選び、痛むときは無理をして行わないように。有酸素運動では、水中歩行が負 担が少ないです。

具体的なやり方は、こちらのサイトを参考にしてください。

変形性膝関節症の運動療法

関節痛(変形性膝関節症)の薬物療法

変形性膝関節症の薬物療法のおもな薬として

  • 非ステロド抗炎症薬の湿布や塗り薬、飲み薬 座剤
  • ヒアルロン酸やステロイド薬の関節内注射

非ステロド抗炎症薬

非ステロド抗炎症薬は、炎症を抑え痛みをやわらげ、熱を鎮める作用があります。それぞれの患者さんの 体質・体調などを考えて、剤形を選んでください。

湿布薬や塗り薬は、直接膝から成分が吸収されますので、利用効率が良いです。ただ貼ったり塗った部分 が、かぶれる場合がありますので注意してください。

飲み薬は手軽さ、扱いやすさがありますが、副作用として胃腸障害があります。胃薬を併用したり食後に 服用することで、副作用を防ぐことができます。

最近では、非ステロド抗炎症薬の一種のシクロオキシゲナーゼ(COX)2選択阻害薬は、副作用がおりにく いので、多く用いられています。シクロオキシゲナーゼ(COX)2選択阻害薬にはエトドラクやメロキシカム などがあります。

座剤は腸から急速の成分が吸収されますので、即効性に優れていますが、扱いに慣れていないのが、欠点 です。

ヒアルロン酸の関節内注射

炎症が激しく、関節内に水がたまり腫れがひどい場合は、関節に直接薬を注入します。

関節の中のヒアルロン酸という液体は、膝の動きを滑らかにして、膝にかかる衝撃をやわらげたり、関節 内の栄養補給などの働きをします。ヒアルロン酸は、関節の軟骨や半月板にも多く含まれています。しかし 加齢とともに減少して、変形性膝関節症では、本来ぬるぬるのはずの関節液がさらさらの状態になります。

このため直接ヒアルロン酸を関節に注入して、関節の動きや軟骨を修復改善させます。この他ヒアルロン 酸

には、軟骨を保護する働きと、関節の炎症を抑制する作用があります。特に膝に水がたまっている患者に 、効果があります。週に1回、計5回が原則です。

注意)ヒアルロン酸のサプリメントや化粧品がありますが、ヒアルロン 酸は分子構造が大きいため、腸や皮膚で吸収されませんので、飲んだり塗ったりしても効果はありません。 ヒアルロン酸が効果を発揮するのは、注射のみですので注意してください。

ステロイド薬の関節内注射

ステロイド薬の効果は大変大きく、ヒアルロン酸よりも改善効果が高いと、いわれています。しかし改善 は一時的なもので、変形性膝関節症そのものを治療するもではありません。また副作用として、回数を重ね ると軟骨の破壊を招きます。

ステロイド薬の関節内注射は、症状が重く日常生活に大きな支障があるときなどの、特別な場合に限って 使用した方がいいです。

これらの薬物治療にたよっては、変形性膝関節症の進行を食い止めることはできません。あくまで運動療 法の補助的な治療と考えてください。

変形性膝関節症の進行を抑える薬の開発

現在の薬物治療では、先ほど述べたとおり、変形性膝関節症の進行を食い止めることはできませんが、最 近欧米などで進行を抑制する薬が開発され、治験(臨床試験)が行われています。

変形性膝関節症は関節軟骨がすり減り、破壊されて起こります。軟骨破壊に関係するのは、酵素マトリッ クスメタロプロテアーゼ(MMP)で、炎症が起きている関節内では、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)が 正常よりも、活性化しています。

そこでマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の働きを阻害する、MMP阻害薬や抗菌薬のドキシサイクリン が、変形性膝関節症の進行を抑えると考えられています。

現在これらの薬は、治験(臨床試験)が行われていて、使用できるのは、まだ先といえますが、大きな期 待が寄せられています。

関節痛(変形性膝関節症)の手術

症状が悪化して、膝がほとんど動かなかたり、通常の生活が営めない場合は、手術を行います。

変形性膝関節症の手術は、おもに3つあります。

  • 関節鏡視下手術
  • 高位脛骨骨切り術(こういけいこつこつきりじゅつ)
  • 人工関節置換術

関節鏡視下手術

関節鏡視下手術は、膝のなかに関節鏡(内視鏡)を入れて行う手術で、半月板の損傷した部分や、はがれ 落ちそうな関節軟骨を取り除くのが、関節鏡視下手術です。切開部は1cm前後で、患者への負担が非常に軽い 手術です。

半月板の損傷の修復に効果がありますが、変形した関節軟骨修復はできませんので、すべての症状を改善 させられません。手術後数日で歩行ができますが、効果の持続が短い場合があります。

手術時間は40~60分程度で、1週間の入院が必要ですが、病院によっては日帰りのところもあります。

関節鏡視下手術は心臓病やぜんそく、糖尿病などがある患者で、他の手術ができない場合に選択せれます 。

高位脛骨骨切り術(こういけいこつこつきりじゅつ)

高位脛骨骨切り術は、すり減っていない脛骨(すねの骨)の一部を膝の関節近くで切って、かたよってし まった加重が、均等にかかるようにする手術です。手術時間は90分程度で、関節鏡視下手術を予備手術とし て、行う場合もあります。

入院が2~3ヶ月かかりますが、骨がつけば登山やスポーツができるくらいまで回復します。

合併症として、感染症や神経のマヒ、足にできた血栓が肺の動脈を詰まらせる、肺血栓塞栓症などがあり ます。

人工関節置換術

人工関節置換術は、すり減って変形した骨の表面を、金属やポリエチレンなどで、できた部品に置き換え る手術です。関節全体を置き換える全人工関節置換術と、損傷の激しい部分だけを置き換える、単顆(たん か)人工関節置換術があります。手術時間は約2時間で、入院は1ヶ月程度になります。

手術後は痛みがなくなり、正座や激しい運動などはできなくなりますが、日常生活にはほとんど影響はあ りません。

変形性膝関節症の手術のなかでは、この手術がもっとも患者への負担が大きいくなります。合併症には、 感染症と肺血栓塞栓症があります。ステロイド薬を使用している人や糖尿病の人が、感染症を起こしやすい です。

これらの手術のあとでも、膝の柔軟性や改善されたレベルを保つため、運動療法は無理のない範囲で、続 けなければなりません。

関連ページ

関節痛 日本人向け新型人口股関節

関節痛人工股関節の極小侵襲(しんしゅう)手術

「硬膜外腔内視鏡」(エピドラスコピー)による腰痛治療

腰痛の原因と治療法

腰痛は、年齢と共に、背骨や、背骨のクッションである椎間板が変形し、神経の束である脊髄が圧迫され るのが、主な原因とされています。

腰痛治療は一般に、痛み止めや抗炎症薬などの薬による治療や、痛みが伝わる腰の神経に麻酔をかける「 神経ブロック」が行われます。これで2-3か月しても痛みが改善しない場合、変形した骨や椎問板を除く 手術も行われます。しかし、3か月以上続く慢性腰痛は、部位が、はっきりしないことが多いいです。

実は、痛みや炎症が長く続いた腰痛は、腰の神経の周辺組織が癒着したり、傷跡が引きつるように固く変 性したりしています。このような状態は、エックス線など外部からの画像診断だけでは、わかりにくいです 。

「硬膜外腔内視鏡」(エピドラスコピー)による腰痛治療

こうした腰痛の診断に開発されたのが、硬膜外腔(がいくう)内視鏡です。背骨と脊髄の間の「硬膜外腔 」と呼ばれる狭いすき間を通るよう、先端の直径は1ミリ以下と、極細になっています。

この内視鏡で硬膜外腔の癒着をはがしますと、腰痛が治ったり、軽くなる人がいることがわかってきまし た。1995年に治療を始めた米国では、これまで1万例以上、国内では大学病院など約30施設で400 例以上行われています。

自治医大麻酔科講師の五十嵐孝さんは「神経ブロックが効かず、従来の手術をしたくない人の新しい治療 として期待されている」と話します。

治療は、麻酔をした患者の腰に約1センチの傷をつけて内視鏡を挿入します。医師がモニターで硬膜外腔 の癒着を確認すると、内視鏡の先端から生理食塩水を出し、水圧と内視鏡の動きで丁寧にはがします。最後 に神経ブロックと同じ麻酔薬と抗炎症薬を患部に注入します。

この治療法が有効な理由は、さまざま考えられています。癒着や神経の圧迫を取り除くほか、水で痛みを 起こす物質を洗い流す効果もあります。癒着をはがすことで、神経ブロック注射では患部に届かなかった薬 が浸透することも、関係しているようです。

「硬膜外腔内視鏡」(エピドラスコピー)による効果

自治医大では、薬などの保存療法や神経ブロックが効かない腰痛患者200人以上の治療を行っています 。手術直後はほぼ全例で痛みが軽減し、特に椎問板ヘルニアで効果が高いです。

東大病院での2003年12月までの3年半の集計では、背骨に異常のあるのべ78人に対する治療で、 49人(62%)に痛みが和らぐ効果がありました。ヘルニアで14人中10人、背骨の神経の通り道が狭く なる「脊柱管狭さく症」で24人中15人に効果があった。

しかし完治しない場合もあり、数日で痛みが戻ることもあります。坐骨神経痛などで起きる足のしびれや ヘルニア手術後の再発例は、やや効果が低いです。癒着以外の原因で起きる痛みも考えられるためです。た だ、一度癒着をはがすと、再発しても神経ブロックがよく効くようになる人もいます。

手術時間は1時間ほど。傷跡が小さく、患者の身体的な負担も軽く、翌日に退院することも可能です。保 険は適用されず、自治医大での手術費用は約20万円です。

腰痛治療の現状

腰痛の原因には、椎間板ヘルニアや脊柱管狭さく症のほか、分離症、すべり症、変形性脊椎症、骨粗しょ う症などさまざまな原因があります。

だが、エックス線で明らかにヘルニアや骨折があるのに、痛みをまったく感じない人もいます。心理的な ストレスから痛みを感じる心因性腰痛もあり、腰痛のメカニズムは完全に解明されていません。誰もが10 0%良くなる治療はないのが現状です。

加齢に伴う慢性腰痛は、痛みを少なくすることはできても、若いころのように痛みや重さを感じない腰に 戻すことは難しいです。焦らず気長に、自分にあった治療を見つけることが大切です。

関係医療機関 自治医大病院 東大病院麻酔科・痛みセンター

前十字靱帯断裂の「靱帯再建手術」と「保存的修復法」

前十字靱帯の断裂

スポーツで膝を傷めることはよくありますが、中でも多いのが、膝をねじり、骨と骨をつなぐ太い靱帯( じんたい)を切ってしまう「前十字靱帯(ぜんじゅうじけん)断裂」です。そんな場合、別の部位から腱( けん)を取って靱帯の代わりに移植する「靱帯再建手術」をすれば、再び本格的なスポーツをすることも可 能になります。一方、レクリエーション程度に軽いスポーツを楽しむ人で手術を望まない場合には、早期の リハビリで靱帯の修復を促す「保存的修復法」も試みられています。

「靱帯再建手術」

膝関節は、太ももの大腿骨(だいたいこつ)と、すねの脛骨(けいこつ)が四本の靱帯で結ばれている。 中でも中心的な役割をしているのが前十字靱帯で、これが切れてしまうと急に止まったりジヤンプしたりと いった激しい動作ができなくなります。

元通りに運動できるようにするには、「靱帯再建手術」を行うのが一般的です。

手術は、皮膚を切開し、関節鏡と呼ばれる小型カメラを入れ、膝の内部を見ながら行います。大腿骨と脛 骨に開けた穴に、膝の裏などにある腱を通して固定し、靱帯の代わりにします。数センチの傷口で済み、体 に負担の少ない手術です。その後、半年から1,2年間のリハビリを行います。この手術で、競技に復帰し たスポーツ選手も少なくありません。

「保存的修復法」

一方、「保存的修復法」は、手術はしないで運動療法によって靱帯を修復させる方法です。この治療をい ち早く実施した、九州労災病院(北九州市)スポーツ整形外科部長の井原秀俊(いはらひでとし)さんは「切 れた靱帯は元に戻らないとされてきましたが、早期に適切な運動をすると、再びつながることが経験的にわ かりました」と語します。

膝が不自然な曲がり方をしないように、太ももからすねにかけて、装具でしっかり固定したうえ、屈伸運 動や自転車こぎなどを行います。入浴時を除き、装具は寝ている間も着ける必要があり、3か月後に外して 治療効果を判定します。

井原さんはこの10年余で約200人にこの治療を行い、成功率は7割でした。「膝を適切に動かすこと で、靱帯が本来の形を取り戻すのではないか」と説明しています。切れた靱帯は放置しておくと縮むため、 損傷後2週間以内に始めることが重要だといいます。

「靱帯再建手術」か「保存的修復法」の選択

「保存的修復法」には限界があり3割の人には効果がなく、再建を目指すなら改めて手術が必要となりま す。

また、修復した靱帯は、傷が治った後の「はん痕」のようなものと考えられており、元の靱帯と違って強 度が劣り、1-2割の人で再断裂が起きるといいます。善衆会病院群馬スポーツ医学研究所(前橋市)所長の 木村雅史(きむらまさし)さんは、スポーツ選手など本格的に運動する人(患者さんの5-6割)には手術を 勧め、「歩行など日常生活で困らなければよい」という場合(患者さんの3割)は、手術せずにリハビリだけ で様子を見ます。

保存的修復法を行うのは、残りの1-2割の患者さんです。「休日にテニスをするといったレクリエーシ ョン程度の運動を楽しむ人や、15歳以下の成長期など手術を避けたい場合の選択肢の一つ」と木村さんは 話します。

装具を含めて、保険がききます。治療の対象や入院期問などは医療機関によって異なります。通院だけで 治療する病院がある一方、1か月半と入院期間が長い病院もありますので、事前に問い合わせてください。

靱帯損傷の頻度や原因

木村雅史さんのまとめによりますと、外傷性の膝関節障害では靱帯損傷(90%)がほとんどで、うち前十 字靱帯が全体の59%を占めます。その他の障害では、膝蓋骨(しつがいこつ)の脱臼(5%)、半月板単独 損傷(2%)と続きます。

前十字靱帯損傷の原因を見ると、スポーツ外傷(73%)、交通事故(19%)、その他(8%)で、スポーツ の中ではスキーが半分(34%)近くを占め、サッカー、バスケット、バレーボールと続きます。男女比は4 対6と女性の方がやや多いいです。女性の場合は特に、他人とぶつかったわけではなく、単独で転んだケー スが多いのも特徴です。

また、靱帯損傷の手術は、膝だけでなく、ひじのけがでも行われます。

関連医療機関

九州労災病院(北九州市)スポー ツ整形外科

善衆会病院群馬スポーツ医学研究所


スポンサードリンク


↑ トップページ