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口・歯

口・歯の最新治療法


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歯周病の歯科薬剤到達システム(3DS)

歯周病菌

歯周病菌が増殖すると、日常的な歯磨きでは除去できません。歯周病菌は本来、酸素に触れると死滅する 弱い菌ですが、それゆえ身を守るすべを持っています。糖類などでできた無色のネバネバした膜(バイオフ ィルム)を張り巡らし、その中で増殖します。

バイオフィルムは歯ブラシでは取れないため、歯科での専門的な治療が欠かせません。細菌の死骸(しが い)などが固まった歯石を除去した後、専用の器具で研磨剤を塗った歯の表面を磨き、バイオフィルムを除 去します。この研磨の操作は歯面清掃(PMTC)と呼ばれています。

歯科薬剤到達システム(3DS)

しかし、それでも取りきれないしつこい歯周病菌もあり、この場合に行われるのが、歯科薬剤到達システ ム(3DS)です。

マウスピースの内側に、うがい薬にも使うヨードを含んだ薬剤を塗ります。1日5分、歯にかぶせ、1週 間続けると、歯面清掃で破損したバイオフィルムの間から薬が染み込み、歯周病菌を退治します。

抗菌剤を使う場合もあるが、副作用の恐れがないヨードで、十分な効果が得られます。

薬を歯と密着させて、効果を引き出すこの方法は、虫歯菌の除菌を目的に考案されたが、3年前から歯周 病治療にも用いられ始め、8割の患者で、歯周病菌が健康的なレベルまで低下します。

様々な種類がある歯周病菌のうち、歯周病と密接に関係するのは4種類です。抗菌剤を使っても菌を完全 になくすことはできないが、これらの歯周病菌が、口内の総菌数のそれぞれ0.1~0.2%程度であれば、 歯の健康を保てることが分かってきています。

治療後は丁寧な歯磨きを心がけ、数か月ごとに通院して磨き残し部分の清掃などを行うことで、歯周病菌 の増殖を抑えることができます。

これらの治療は、事前に唾液(だえき)検査を行い、歯周病菌の数などを見極めた上で行うことが肝心で す。歯面清掃(PMTCと歯科薬剤到達システム(3DS)は、ともに保険が適用されません、費用は医療機 関によって異なるますが、数万円程度です。

関係医療機関 日本歯科大学病院

歯周組織の再生法「GTR法」と「エムドゲイン」

歯周組織の再生

歯周ポケットが5ミリ以上の深さになりますと、し歯根に固着した歯石やクラープを取り除く外科手術が 必要になす場合もあります。しかし手術をしたとしても失われた歯周組織は回復しません。

これに対して、損傷が一部だけなら、歯周組織を再生させる治療法が実用化されました。スウェーデンで 開発された「GTR法」と「エムドゲイン」です。

再生法「GTR法」と「エムドゲイン」

GTR法の意味は「組織再生誘導」で、歯周組織が壊れた部分から細菌が侵入するのを防ぐため、合成繊 維でできた特殊な膜を挿入して空洞を作り、歯槽骨などの再生を促す方法です。約5週間後、入れた膜を除 去する2度目の手術が必要ですが、最近は数週間で自然に溶け、1度の手術ですむ膜も開発されています。

エムドゲインの方は、組織が失われた部分に、歯周組織の再生を導くゲル状の材料を塗る、簡単な方法で す。ゲル状物質の名前がエムドゲインで、歯の発生期に重要な役割を果たす、タンパク質が主成分です。豚 の歯の元になる組織から抽出します。再生が確認できるまで3から6週間かかります。

どちらの手法も、まず麻酔をかけて歯肉を切開し、歯根についた歯石などを取り除きます。その後に膜を 入れたり、エムドゲインを塗ったりして縫合します。手術は約1時間程度で、入院は必要ありません。歯周 組織の再生には数ヶ月から半年かかり、手術後も定期検査が欠かせません。

スウェーデン・デンタルセンターの最近の研究では、数年後まで組織の再生が続くなど、エムドゲインの 方が優秀であることがわかり、今後はエムドゲインが主流になりそうです。しかしエムドゲインは、歯根が 分かれている奥歯には使えず、前歯など1部の歯の歯周病に限られますし、歯周組織の破壊が、あご全体に 広がっている場合も使えません。

保険は適用されず、費用は病院によって異なります。GTR法は検査などに保険がきく、高度先進医療と して認められている医療機関もあります。

関係医療機関 スウェーデン・デンタルセンター

関連ページ 歯周病・骨髄液による歯槽骨再生

歯周病・骨髄液による歯槽骨再生

歯周病

歯が失われる原因で、最も多いのは歯周病です。歯と歯茎の間にたまる歯垢に含まれる細菌によって、歯 茎が赤く腫れて、進行すると、歯を支える土台の歯槽骨まで破壊させます。

骨髄液による歯槽骨再生

歯槽骨が失われた場合、これまで骨を移植するなどをしていましたが、名古屋大学では、患者本人の骨髄 から採取した細胞を使って、歯槽骨をなど歯の周囲の組織を再生させる治療法を開発し、2002年に同大 学病院に「再生歯科外来」を開設しました。

培養した細胞などを利用して、様々な臓器や組織をよみがえらせる再生医療の中で、最も実用化が進む分 野の一つです。治療では、まず患者の腰骨にごく細い針を刺して、骨髄液を2ミリリットルほど採取します 。全身麻酔や入院などの必要はなく、15分ほどで済みます。骨髄には、骨や筋肉、血管などに分化する幹 細胞が含まれていて、4週間かけて培養し、約10万倍に増やします。

培養した幹細胞に、骨などへの分化を効率よく促すために、患者の血液から取り出した血小板を加えて、 注射器で歯槽骨の患部に流し込みます。幹細胞は歯槽骨や歯根膜など、歯を支える組織に成長していきます 。3ヶ月ほどで患部は、ほぼ完全な状態になるといいます。

骨髄も血液も、患者自身のものを使いますので、拒絶反応の心配もなく、患者さんの負担も比較的少ない のが特徴です。この治療を受ける前に、歯垢を除去するなどの処置を受けて、歯周病自体の進行は止めてお かなければなりません。

関係医療機関 名古屋大学病院

関連ページ 歯周組織の再生法「GTR法」と「エムドゲイン」

虫歯治療の3Mix(ミックス)-MP法

歯の自己修復能力

虫歯は、口の中にいるミュータンス菌など様々な細菌が、食べかすなどから酸を作り、酸が歯を溶かすこ とで起こります。虫歯部分にはびこる細菌を退治すれば、歯を削らずに虫歯の進行を抑え、歯の持つ自己修 復能力により、元の歯に戻すことができます。

これが「3Mix(ミックス)-MP法」による治療の考え方です。細菌を殺す三種類の抗菌薬と、薬剤 を浸透させる軟膏などの頭文字をとってこう呼ばれています。

歯は、表面の硬い「エナメル質」、その下の「象牙質」、血管や神経が走る「歯髄」の三層構造でできて います。虫歯がエナメル質にとどまっているうちは、痛みはないが、象牙質まで進行すると痛みがでること があります。象牙質は「象牙細管」という細いチューブが集まってできていて、歯髄の神経につながってい るからです。

象牙質に達した虫歯の治療では、虫歯で色が変わった部分を削り、そこを消毒液で殺菌して金属などをか ぶせるのが一般的です。しかし、細管に潜む菌まで完全に殺すことは難しく、しばらくたつと虫歯が広がり 、再び歯を削るケースが多いです。

虫歯治療の3Mix(ミックス)-MP法

3Mix-MP法は、この弱点を克服する手法です。虫歯部分に抗菌薬を塗り、樹脂などでふたをすると 薬で細菌が死滅します。細菌で破壊された部分にカルシウムが沈着し、約一年後には象牙質部分が元のよう な状態に回復します。

一度処置すれば、抗菌効果は長期間続きます。虫歯が歯髄まで達し、通常なら歯髄を抜く治療が必要な重 度の虫歯でも、九割以上のケースで、一ヶ月後にはほとんど削らずに痛みが消えるそうです。3Mix-MP 法は虫歯は削って治す、という従来の常識を覆す手法です。

この治療で使う抗菌薬は、メトロニダゾール、ミノサイクリン、シプロフロキサシンの三種類です。この 三剤に軟膏のマクロゴール(M)プロピレングリコール(P)を加えることで、歯の中への抗菌薬の浸透性 が高くなります。

いずれの薬も内科などで使われていて、使う量は微量なので安全性には問題はないと、されています。保 険の適用はありませんが、薬剤費は歯一本あたり約5円で、負担は従来の虫歯治療と変わりません。

関連サイト 3Mix(ミックス)-MP法

ドライマウス(口腔乾燥症)の原因と治療

ドライマウス(口腔乾燥症)の原因

唾液は、耳の下や舌の下にある唾液腺などから、1日に1.5~2リットル分泌されます。この唾液腺に 異常が起き、唾液が少なくなるのが「ドライマウス」です。

原因は様々ですが、最も多いのは「薬の副作用」で、患者のほぼ半数にみられます。抗アレルギー薬や降 圧剤、抗うつ剤などには唾液の分泌を抑える作用があるからです。

涙や唾液が出にくくなる疾患「シェーグレン症候群」も原因として多いです。本来は病原体を退治する免 疫細胞が、誤って唾液腺を異物として攻撃する自己免疫疾患です。

糖尿病や腎臓病が原因で起きることもあるほか、顔や口のがんで放射線治療を受けて唾液腺が破壊された 場合や、強いストレスも一因となります。

ドライマウスが問題なのは、症状が続くと歯周病、虫歯、口臭の原因になるからです。舌がヒリヒリし、 味覚に異常を来すこともあります。唾液は、口の中の殺菌や歯の修復(再石灰化)など大切な働きを持って いるからだです。

ドライマウスは、唾液検査に、薬の服用状況などを総合して診断します。唾液検査はガムを10分間かみ 続け、出た唾液の量を測り、10cc以下だとドライマウスが疑われます。

ドライマウス(口腔乾燥症)の治療

治療は、原因を特定し、除去するのが原則です。薬の副作用なら、薬を変えるか、量を減らします。シェ ーグレン症候群の場合、根治治療ができないため、口腔内を清潔に保ち、乾燥を防ぐことが重要になります 。

最近は、保湿や粘膜の再生を促す作用を持つジェルやスプレーなどの口腔ケア商品が登場しています。

ドライマウスの患者30人(平均年齢62歳)に、市販の口腔ケアのジェルを就寝前に口の中の粘膜に塗 ったところ、2週間後、患者の83%が症状が緩和しました。特に食べにくさ、味覚の異常などが改善した そうです。ストレスを避けることも大切です。

歯科矯正デーモンシステム

従来の歯の矯正

歯並びが悪いと、見た目が気になるだけではない。磨きにくい部分が多いため虫歯になりやすく、かみ合 わせの問題から、口の開閉がうまくできない顎(がく)関節の異常や肩こりも引き起こしかねません。人前 で話すことに負い目を感じたりする場合もあります。そこで広まってきたのが、歯並びを矯正する治療です 。

歯列の治療は、まず歯の表面に矯正装置(ブラケット)を接着剤で固定します。これに、あらかじめ骨格 に合わせ最適な歯列に調節した形状記憶合金のワイヤを通し、ワイヤが元に戻る力で徐々に歯を動かしてい きます。

ただ、歯並びが整って装置が外れるまで、これまでの方法では子供で1、2年、大人では2、3年程度か かり、期間の長さが治療の障害になっていました。さらに、ワイヤを装置に縛りつけて歯に力をかけるため 、痛みもあります。

新型装置デーモンシステム

これに対し、「デーモンシステム」と呼ばれる新型装置は、治療期間が約40%短くなり、治療時の痛み も少なくなる場合が多いことが特色です。

新装置では痛みが少ないのは、従来の方法と違ってワイヤを固定せず、装置の内側の透き間にワイヤを通 す「ゆとり」の構造のためです。

ワイヤを通すだけでも、形状記憶で元に戻ろうとする力が、歯にかかる舌や唇の圧力を手助けし、ちょう ど良い位置に歯が動いていきます。無理に歯を動かすのではなく、人間の生まれ持った力を利用するので痛 みも少ないです。

ただ、新型装置には目立ちやすい難点があります。従来の装置はセラミック製の透明のタイプや、歯の裏 側に装着するものがありますが、新型は金属製です。上半分が透明の最新型も登場しましたが、歯の裏側に 着けることは構造上できません。

関係医療機関 シグマ矯正歯科

顎関節症(がくかんせつしょう)の補てつ治療

顎関節症

顎関節症は(1)口を大きく開けられない(2)あごが痛む(3)口の開け閉めで「カクッ」「ポキッ」という音がするの、三つが主な症状です。20-30歳代前後の若い人に多く、特に女性に目立つといいます。

顎関節症が起きるのは、かみ合わせの悪さ、歯ぎしりや歯を食いしばる癖、さらにはストレスなど精神的なものまで、原因は複合的です。

特に就寝中に歯ぎしりする人は要注意です。無意識に歯を食いしばるため、あごの筋肉が疲れます。関節にも大きな負担がかかります。悪化すると、顎関節の「関節円板」がずれて、あごの骨が引っかかり、ほとんど口が開けられなくなるほど重症化するケースもありまます。

補てつ治療

顎関節症の治療法として、金属スプリントと呼ばれる精巧な矯正具を歯にかぶせる、「補てつ治療」があります。「補てつ」とは、歯が欠けたり抜けたりしたところを義歯や冠で補い、歯の形やかみ合わせを改善する意味の歯科用語です。「補てつ治療」は、これを顎関節症に応用したものです。

治療は次のように進みます。

1.あごや歯の型をとる。

2.患者一人一人に合わせたスプリントを上の歯列に装着し、歯ぎしりなどを防いで筋肉を楽にする。

3.かみ合わせに問題がある人は矯正する。

これが基本的な流れで、1980年代に徳島大が開発しました。その後、岡山大と新潟大も加わり、現在は三大学での治療が国の高度先進医療に認定されています。まずは保険適用となる樹脂製スプリントを試します。新潟大では「光重合型レジン」という、白由な造形が可能な特殊な樹脂を使います。

それでも症状が改善しなければ、高度先進医療の出番となります。ポイントは、一人一人に合うスプリントを精密に作るため、金属の材料を使うことと、あごの動きを正確に測ることです。

あごは左右一対の関節が連動しながら、上下・前後・左右に動きます。新潟大は、この複雑な動きをとらえるため「TRIMET(トライメット)」という装置を使います。発光素子(LED)8個を内蔵した弓状の金具を患者のあごに固定、LEDの発する光を、三方向から高速撮影します。測定時問は約30分ほどで、誤差は歯列の部分で0.19ミリ程度です。

こうして得たデータと、患者の歯型をもとに、精巧な金属スプリントを作ります。普通のスプリントは食事の際に違和感があって外す必要がありますが、金属スプリントなら、はめたままで食事ができます。耐久年数も3-4年あります。

高度先進医療によるスプリントの完成には、4回通院で約二か月かかりますが効果は高いです。費用は、治療後にあごの動きを再測定するかどうかで異なりますが、おおむね8万-10万円ほどです。

関係医療機関

新潟大学医科歯科総合病院

岡山大学病院

徳島大学病院

自己の歯を再利用するティースバンク(歯の銀行)

ティースバンク(歯の銀行)とは

歯周病や虫歯で歯を失う人は多いいです。そんな時に備え、矯正治療で抜いた親知らずなどの歯を冷凍保 存しておくのが、ティースバンクです。広島大病院矯正歯科教授の丹根一夫さんと講師の河田俊嗣(としつ ぐ)さんらが2004年に設立した企業「スリーブラケッツ」が運営する、世界初の「歯の銀行」です。

保存するのは、原則として小臼歯(しょうきゅうし)と親知らずで、多いのは親知らずです。上下に4本 ある親知らずは、生えるのが20歳前後と遅く、生えた時に歯並びが悪くなると、虫歯や歯周病の原因にも なるため、抜歯することが多いからです。

抜いた歯を、別の歯が抜けた部分に移植する治療は「自家歯牙(しが)移植」と言い、既に一部が保険で 認められています。ただし、移植した歯が生着するために、通常は抜歯後1時間以内に移植を行います。歯 の根っこの周りにある組織「歯根膜」が乾燥などに弱く、短時間で死ぬためです。

河田さんは、歯根膜が付着した状態で、長期に歯を凍結保存する方法を研究しました。試行錯誤を重ね、 着目したのが、磁場をかけながら冷凍する技術です。食品の鮮度を保つのに使われている方法で、「歯根膜 の細胞は解凍後、80%以上が生存している」と話しています。

バンクは、この技術を使い、歯根膜付きの歯を広島大病院の冷凍庫でマイナス150度で保存します。

保存した歯の移植手術

移植手術は、抜けた歯の歯茎に、解凍した歯を植えます。ナイロンの糸で固定し、3週間ほどは、移植し た歯に衝撃が加わらないよう極力使わないようにします。歯の根っこ(歯根)とあごの骨の間にあったすき 間を埋めるよう、あごの骨が伸びます。1年もすると、歯があごに固定され、歯ごたえを感じながらかむこ とができます。

保存した親知らずは、形を整えて小臼歯や奥歯に代用できます。小臼歯も、下の前歯以外の歯に利用でき るといいます。ただし、感染防止のため本人以外には移植できません。

保存できる歯は1人8本までで、最長40年間、保存できます。バンクには、すでに約600人(約13 00本)の歯が保存されています。糖尿病や肝臓病などの持病があると、骨の形成などの問題から、移植で きない場合もあります。

歯の移植は、過去2年間に約20件行われました。移植後10年たたないと成功とは言えませんが、河田 さんは「歯が抜けるなど不具合は生じていない」と話し、経過は良好といいます。

バンクの利用者の7割は女性です。広島大病院のほか、スリーブラケッツ社の研修に参加した全国29の 協力歯科医院でも受け付けています。

その一つ、内田歯科・矯正歯科クリニック(東京・練馬区)は約10人の歯をバンクに送っています。副 院長の内田禎子さんは「矯正で歯を抜いたお子さんの将来を考えてバンクに預けた親もいます」と話してい ます。

凍結保存の場合は保険がきかず、費用は抜歯、移植、輸送費などを含め、1本当たり20万~28万円程 度かかります。

関係医療機関

広島大病院矯正歯科

内田歯科・矯正歯科クリニック


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