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アレルギー

アレルギーの最新治療法


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アレルギー症状「アナフィラキシー」の自己注射薬

アナフィラキシーとは

アナフィラキシーは、異物が体に入った時に過剰に反応するアレルギー症状の一種です。ハチ刺され、食品や医薬品などが原因となり、数分から1時間以内に呼吸困難、嘔吐(おうと)、発疹(ほっしん)、下痢など複数の症状が現れます。食物では、そばやピーナツで起きやすいですが、子どもは牛乳や小麦、卵でも症状が出ることが少なくありません。

特に血圧が下がって意識を失うなど、重い全身症状になると「アナフィラキシーショック」と呼ばれ、最悪の場合は命を落とします。

アナフィラキシーの自己注射薬

この症状を抑える薬が「エピネフリン」で、心拍数を増やし、血圧を上げ、気管支を広げて呼吸しやすくするなどの効果があります。一刻でも早く使えるよう開発されたのが、エピネフリンの自己注射薬です。

太めのペンほどの大きさで、使い方は簡単です。安全キャップを外し、太ももの外側に垂直に先端を強く押しつければ、バネの力で注射針が飛び出して皮膚に刺さり、薬剤が注入されます。緊急の場合は服の上から注射しても大丈夫です。

この薬が使えるのは、アナフィラキシーを発症したことのある人や、血液検査で食物アレルギーなどがわかり、発症の危険性が高い人。せき込みや吐き気、唇の腫れ、しびれなど、初期症状が現れた時点で使用します。子どもの場合は、親が注射できます。

医師の処方薬で、製薬会社の講習を受けた登録医が処方します。保険はきかず、費用はハチ刺されに処方している医療機関で、1万5000~2万円程度のことが多いということです。

初期症状を見逃さず、速やかに注射することが重要です。あくまで応急処置なので、注射後は医療機関へ行くことを忘れないでください。

関係医療機関 国立病院機構相模原病院

関係サイト アナフィラキシー対策フォーラム

子宮内膜症のロイコトリエン拮抗薬を使った治療法

子宮内膜症の原因

子宮内膜症は、卵巣や腹膜など子宮以外の場所に、子宮内膜のような組織ができる病気です。悪性ではあ りませんが、ホルモンに対応していますので、強い月経痛や性交痛、そして不妊の原因の一つでもあります 。

20代から30代の人に多く、若い女性の深刻な病気の一つです。

原因はまだはっきり解明されていませんが、動物実験ではアレルギーが深く関係していることが、確認さ れています。実際に子宮内膜症の人の内膜組織で、アレルギー反応にかかわるマスト細胞(肥満細胞)が異 常に増えていることが、わかっていますし、子宮内膜症患者には花粉症やぜんそくなどのアレルギーを併せ 持つ人が多いです。

子宮内膜症のロイコトリエン拮抗薬(きっこうやく)を使った治療法

このため抗アレルギー薬で、アレルギーを誘発する物質ロイコトリエンの反応を抑制する「ロイコトリエ ン拮抗薬」が、子宮内膜症に有効であることが判明したのです。ロイコトリエン拮抗薬は、ぜんそく予防薬 として使われてきました薬です。

臨床試験として気管支ぜんそくを持つ、子宮内膜症患者約100名の方に、服用してもらった結果、約8割の 人が月経痛家や系血量が改善がみられました。服用後、半年から一年で妊娠するひとが多数出て、不妊も改 善されます。また服用した人が内膜症の手術をこのなうと、組織がはがれやすくなり、出血も少なく手術時 間も短縮されます。

ロイコトリエン拮抗薬は、ぜんそく発作を防止する薬として、数年前から使われ始めています。子宮内膜 症治療の場合、患者は毎日、錠剤を飲みます、副作用は少なく、胃がもたれやすくなる程度です。

ロイコトリエン拮抗薬の使用希望の方は、産婦人科の医師と良く相談してから、処方してもらってくださ い。

関係医療機関 大森赤十字病院

尋常性白斑や尋常性乾癬、アトピー性皮膚炎には新紫外線療法「ナローバンドUVB」

尋常性白斑(じんじょうせいはくはん)の原因

尋常性白斑(じんじょうせいはくはん)は皮膚の色素を作る細胞「メラノサイト」が少なくなり、色素が抜けてしまい、白いシミのようになってしまう病気です。かゆみや痛みはありませんが、美容上の問題で悩む方は多いです。

尋常性白斑には、全身に左右対称にできる「汎発型」、片側の神経に沿ってできる「分節型」、一部にできる「限局型」があります。このうち「汎発型」は、免疫細胞のリンパ球があやまって、メラノサイトを攻撃することが原因とされています。このため患部に紫外線を照射し、免疫細胞を死滅させたり、働きを抑制したりする治療が行われます。

従来の治療は、感受性を高める薬と波長の長い紫外線(UVA)照射を併用する、PUVA(プーバ)療法が主な治療法でした。しかし副作用として、照射後24時間は、日光を浴びるとやけどをする恐れがあたり、顔の治療が困難だったりしました。

新紫外線療法「ナローバンドUVB」

新しく開発されたナローバンドUVBは、治療に有効なごく限られた範囲の波長のみを照射しますので、エネルギーがPUVA(プーバ)療法より強力で、薬が不要になり顔の治療も可能になりました。

ナローバンドUVBは、尋常性白斑だけでなく、皮膚の表面に白いかさぶたのような鱗屑(りんせつ)ができ、痛みやかゆみを伴う尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)や、アトピー性皮膚炎の治療にも使われています。

ただし紫外線を使いますので、皮膚がんの心配がありますので、初回に少量を照射し、皮膚の赤みをみて、慎重に治療を進めなければなりません。尋常性乾癬はナローバンドUVBでは完治しませんので、再治療が必要になります。このため尋常性乾癬の治療では、発がんの危険が高まりますので、薬物療法と組み合わせる工夫が必要になります。

関係医療機関 東京大学病院

IgA腎症の「扁桃(へんとう)切除とステロイド剤投与」の併用治療

IgA腎症

腎臓は、血液中の老廃物や水分を濾過(ろか)し、尿を作り、体液の組成を一定に保つ働きがあります。血液を濾過するのは、腎臓の表面近くにある糸球体と呼ばれる毛細血管のかたまった組織です。

IgA腎症は、体内の免疫細胞が作る特殊なたんぱく質(免疫グロブリン)の一種、IgAが、この糸球体に沈着し、組織を破壊する病気です。IgAは本来、病原体など外敵を退治するが、これが腎臓に過剰に集まり、自らの組織を攻撃する自己免疫疾患です。原因は不明で、10―20歳代の人に最も多く発症します。

大半の患者は自覚症状がなく、約7割が検診で血尿が見つかり診断がつきます。発症から約30年たつと、半数が腎不全に陥り、人工透析が必要になります。透析の原因としては、糖尿病性腎症に次いで多いです。

治療は従来、降圧剤などの薬物療法や食事療法が行われてきましたが、病気の進行を遅らせることはできても、完治は無理でした。

「扁桃(へんとう)切除とステロイド剤投与」の併用治療

仙台社会保険病院腎臓疾患臨床研究センター主任部長の堀田修さんは、IgA腎症患者では、のどにある扁桃(へんとう)に病原体が常に感染し、糸球体に沈着しやすい異常なIgAが大量に作られていることに着目し、扁桃摘出とステロイド薬を組み合わせた治療法を考案しました。1980年代後半から800人を治療、その6割でたんぱく尿と血尿が出なくなりました。

治療は、入院して扁桃を摘出した後、強いステロイド剤(メチルプレドニゾロン)を3日間点滴して、4日間休むことを3回繰り返します。退院後は、弱いステロイド(プレドニゾロン)を飲み、2か月おきに量を減らし、1年後には服用をやめます。副作用は少ないです。

「扁桃の切除で、異常なIgAの供給源を断つ。次にステロイドの波状攻撃で、糸球体を攻撃する免疫細胞を抑える治療戦略」と堀田さんは説明します。扁桃を切除しても、体調に問題はないと言います。

治療を始めてから10年以上たった患者のデータでは、血尿が出てから3年以内に治療を始めれば、8割以上が治まります。一方、5年以上たって治療を始めた場合、完治率は4割以下に落ちます。早期に治療すればするほど、再発の確率は低くなります。しかし治療が遅れた患者の方でも、治りにくい反面、悪化もしないそうです。

堀田さんによると、腎臓細胞を採取し調べる腎生検の結果、糸球体の破壊が30%程度以内までの患者が併用療法の対象になります。併用療法は急速に広がっていて、保険も適用できます。

関連医療機関

虎の門病院分院腎センター

仙台社会保険病院腎臓疾患臨床研究センター

アトピー性皮膚炎の症状を緩和する乳酸菌「ラクトバチルス・アシドフィルス L-92株」

「ラクトバチルス・アシドフィルス L-92株」の二重盲検試験

カルピス健康・機能性食品開発研究所は、同社保有の乳酸菌「ラクトバチルス・アシドフィルス L-92株 」(以下、L.アシドフィルスL-92株)を用いた食品を継続摂取することで、アトピー性皮膚炎の症状が緩和 されることを二重盲検試験(ヒト試験)で確認しました。

文部科学省実施の児童生徒対象の「アレルギー疾患に関する調査研究」(小中高生:有効回答1277万3554 人)によると、アレルギー性鼻炎9.2%(約117.5万人)、喘息5.7%(約72.8万人)、アトピー性皮膚炎5.5 %(約70.3万人)の患者数がいることがわかりました。

アレルギーのなかでもアトピー性皮膚炎は、子どもの発症が多く、年齢を経るにつれて治る傾向にあるよ うですが、成人になっても続く人や再び発症する人もいます。

アトピー性皮膚炎は、皮膚にかゆみが起きるアレルギーで、皮膚生理機能の異常やハウスダスト・食物成 分による過剰反応などが要因のひとつといわれています。

長期間の特別な対処法が必要で、短期間ではなかなか改善されないアレルギーとして知られています。

同社では、保有乳酸菌の一つである「L.アシドフィルスL-92株」が花粉症・通年性アレルギー性鼻炎の症 状緩和の働きがあることを確認しました。前の年、同じI型アレルギーであるアトピー性皮膚炎においても同 様の働きがあるかどうかの試験を実施し、有効性が示唆されたため、プラセボ対照二重盲検試験を実施し、 治療の補助に役立つかどうかを調べていました。

アトピー性皮膚炎の原因

アトピー性皮膚炎の原因は、現在の生活環境が昔と違って細菌の無い超清潔社会になったため、戦う相手 がいなくなった体の免疫がバランスを崩して、体に入ってくるダニの死骸やホコリそして特定の食品などに 過剰に反応して独特の皮膚炎を起こすのがアトピー性皮膚炎です。これがアトピー性皮膚炎を含めたアレル ギー反応の原因です。

アトピー性皮膚炎のアレルギー反応についてもう少し詳しく解説しますと、人間の免疫システムには細菌 に対する細菌型免疫と、吸血ダニや寄生虫に対するIgE抗体とマスト細胞(肥満細胞)を使ったIgE型免疫の 2つのシステムがあります。しかし現在は細菌があまりいない、清潔な環境のため細菌型免疫システムが小 さくなり、IgE抗体型免疫システムが大きくなり免疫のバランスが崩れてしまったのです。

乳酸菌は細胞性免疫を活性化、つまり、細菌型免疫システムを活性化して、IgE抗体型免疫が優位に偏っ た免疫システムのバランスを改善することが期待できるのです。

アトピー性皮膚炎の症状

年代によって症状の現れ方は異なりますが、思春期以降は、首のまわりが黒ずみ、皮膚が苔癬化(たいせ んか:厚ぼったく、きめが荒い状態)して、強いかゆみを訴えます。

顔面に紅班が生じるケースもあり、角質が剥がれ落ちてしまうこともあります。季節によって症状の重さ は変化します。通常は夏季に軽減し、冬季は乾燥して悪化します。

スギ花粉症の早期治療法

早期治療で症状を緩和

スギ花粉症は自分の症状のタイプを知り、花粉の飛び始める前に治療を始めることで、症状を軽くできます。スギ花粉症の患者さんは、1998年に6人に1人でしたが、2008年には3~4人に1人まで急増しています。10代でも3人に1人、5~9歳でも7人に1人になっています。

東京・千代田区の西端(にしはた)耳鼻咽喉科理事長(北里大非常勤講師)の西端慎一さんは、「予測日前でもわずかながら花粉は飛んでおり、この時期の過ごし方が肝心」と強調しています。

毎年、

1.鼻がむずむずし始めた日

2.症状が本格的に出始めた日

3.住んでいる地域の飛散開始日

をメモし、自分にあった治療開始の時期を見つけるよう勧めています。花粉に触れる機会はできるだけ減らすよう、「マスクは、薬を飲み始める前からつけた方が良いです」と、西端さんは話しています。

鼻アレルギー診療ガイドラインによりますと、治療は、飛散量の予測や症状のタイプ、重症度に応じ、飛散開始予測日より1、2週間前から当日までに始めると良いです。自分が「くしゃみ・鼻水型」か「鼻づまり型」か、両方の症状があるタイプなのか、表でチェックしてみましょう。

くしゃみ・鼻水型なら炎症を抑える抗ヒスタミンの飲み薬を用いたり、鼻づまり型なら別のタイプの飲み薬やステロイドの点鼻薬を用いたりと、症状や重症度によって薬の選択を変えます。ステロイドの飲み薬は最重症の場合以外では使いません。

スギ花粉症患者の32歳の女性は2008年、症状が出る前からステロイド点鼻薬を通常の半分の1日2回だけ使い始めました。鼻がむずむずし始めたら、抗ヒスタミン剤の服用を開始しました。花粉が飛び始めた日からは点鼻薬を通常量の1日4回に増やしたところ、「もう治ったかと思うほど楽になった」と話しています。

スギ花粉症、その他の治療法

重症の場合は、鼻の粘膜をレーザーで焼く手術もありますが、効果の持続には個人差があります。

花粉エキスを注射して体質を変えることを目指す「減感作療法」もあります。週1回から月1回程度の注射を3年ほど続ける一般的な方法のほかに、甘い花粉エキスを含ませたパンを舌の下に入れ、口から摂取する方法も研究されています。日本医大病院耳鼻咽喉科准教授の大久保公裕さんは「約300人に試し、7~8割の人に何らかの効果がみられました」と話しています。

関係医療機関

日本医大病院

関連ページ

花粉症の「舌下減感作療法」

 くしゃみ、鼻水型    鼻づまり型
 くしゃみに、鼻をかむ回数(1日平均)  症状  鼻づまりの状態
 1~5回  軽症  口呼吸は全くないがつまる
 6~10回  中等度  ひどくつまり、口呼吸が1日のうち時々ある
 11~20回  重症  非常にひどくつまり、口呼吸が1日のうちかなりの時間ある
 21回以上  最も重症  1日中完全につまっている

ぜんそく重症患者向けの新薬オマリズマブ(商品名ゾレア)

ぜんそくの重症患者

ぜんそくは、空気の通り道である気道が狭くなり、呼吸が苦しくなる病気です。せきが止まらないなど重い発作が出ると、酸素不足や意識障害に陥り、最悪の場合は命を落としてしまいます。国内の患者数は400万450万人と推計されています。

1990年代、ぜんそくの原因は「気道の慢性的な炎症」と分かり、炎症を抑える吸入ステロイド薬が治療の中心になりました。これに気管支拡張薬や抗アレルギー薬を併用し、治療効果は格段に向上しました。95年に7000人を超えていたぜんそく死亡者数は、2007年には約2500人にまで減った。

「残念なのは、複数の治療薬を最大限に使っても発作を抑えられない重症患者さんが、まだ少なからずいることです」と、昭和大学呼吸器・アレルギー内科教授の足立満さんは語ります。同大学では1割以上が重症患者です。

重症患者にはステロイドの飲み薬を併用しますが、吸入薬と違って長く飲み続けると、糖尿病や白内障、骨粗しょう症などになりやすく、できれば避けたいです。

新薬オマリズマブ(商品名ゾレア)

オマリズマブ(商品名ゾレア)は、こうした重症患者を対象に承認されたのです。ぜんそくの引き金になるアレルギー反応を起こらなくする薬です。ダニやほこり、花粉などアレルギーの原因となる「抗原」が体内に入ると、身体を異物の侵入から守る血液中の免疫細胞のB細胞が、免疫グロブリンのG抗体(IgG抗体)を主に作り出し、対抗します。

これは正常な免疫機構の働きです。

ところが、一部の人では、「IgE」という別の抗体が作られ、鼻や気管など粘膜の下にあるマスト細胞(肥満細胞)に結合します。この細胞はアレルギー反応を起こす本体で、再び抗原が接すると、ヒスタミンなどの化学伝達物質を放出し、気道の炎症などを引き起こします。これがぜんそくが起こる、仕組みです。

オマリズマブは、IgE抗体と結合することで、抗体がマスト細胞に結合するのを防ぎます。化学伝達物質の働きを抑える従来の抗アレルギー薬とは異なり、その前の段階で作用します。

オマリズマブの対象患者

対象は、血液検査などでIgE抗体が確認できるタイプの患者さんで、重症患者の約5割を占めます。ただし小児には使えません。2週か4週おきに皮下注射し、吸入ステロイドなど基本的な薬はこれまで通り使います。国内の臨床試験では、有効成分を含まない偽薬と比べ、ぜんそく症状が悪化する率が低く、気管支の状態も改善しました。

横浜市立大学呼吸器内科准教授の宮沢直幹さんは「副作用が心配な経口や点滴のステロイドを減らせます。重症患者さんは試す価値があります」と期待しています。

ただ、費用が1本約7万円と高価で、健康保険の3割の自己負担でも、2週おきに3本ずつ使えば、負担は月に12万円を超えますので、国の高額療養費制度などを十分活用してください。

関係医療機関

昭和大学病院呼吸器・アレルギー内科

横浜市立大学病院呼吸器内科

食物アレルギーを食べて治す 「経口免疫療法」

食物アレルギー

卵、牛乳、小麦にピーナツなど特定の食品を口にすると、嘔吐やじんましんなどのアレルギー症状が出る食物アレルギーに悩む子どもは多いいです。多くは5、6歳までに自然に食べられるようになりますが、大人になっても続く人もいます。症状が重いと、呼吸困難など全身症状が激しく出る「アナフィラキシー」を起こすこともあり、命の危険もあります。

そんな食物アレルギーに対し、これまでは、「徹底的に原因食物を避ける」のが常識でした。その発想を逆転したのが、欧米を中心に数年前から広がる「経口免疫療法」です。いわばアレルギーの原因物質であるアレルゲンを「食べてまたは、飲んで治す」療法です。

経口免疫療法の効果

小学5年生の男の子(11)は2010年3月1日、卵アレルギーで、神奈川県立こども医療センター・アレルギー科に入院しました。

まずは、生卵の白身から作った粉を少しずつ飲む検査で、アレルギー症状が出る最低量(閾値:いきち)は30ミリ・グラムと確定されました。比較的軽症のため、治療は通常より多めの5ミリ・グラムからスタートし、1日5回、前回量を毎回20%ずつ増やしながらジュースに混ぜて飲みました。8グラムに達したらいり卵に変え、卵1個分(60グラム)が食べられるようになるまで続けます。

男の子は21日後に退院しました。退院後も、週2回は目標量を食べ、効果を維持します。

牛乳なら200ミリ・リットル、小麦粉は60グラム、ピーナツなら10粒が目標量です。同科では、これまで、6歳から12歳の卵アレルギー患者12人を治療し、全員が平均2週間で目標量を達成しました。ほかにもピーナツ8人、牛乳4人、小麦2人を治療し、一部目標量を減らしたものの、全員食べられるようになりました。

経口免疫療法の仕組み

この療法は、免疫学では古くから知られる「経口免疫寛容」という体の仕組みを利用しています。これは、「口から入って、腸管から吸収された物質に対しては、免疫反応が起こりにくくなる」というものです。

しかし、原因物質を食べ続けることで、なぜ耐性ができるかは解明されていません。食べられるようになっても、アレルギー検査の値は治療前と変化がなく、吸い込んだり、目の粘膜に入ったりすれば症状は出るといいます。食べ続けるうちにこの値も下がることが確認されていますが、根本治療につながるかは今後の研究が必要です。

病院によって手法もバラバラで、標準治療はまだないです。重症者を受け入れているところが多く、多くは治療過程でアレルギー症状も出ます。自己流で行うのは危険なため、必ず医師の監視下で行わなければならなりません。大人も対象ですが、食べるうちにアレルギーになるエビ、カニは適しません。

同科部長の栗原和幸さん(57)は「アナフィラキシーを経験した人の食事は一食一食が命がけで、常に緊張感を強いられます。安心して食事ができ、仲間と同じものを食べられるようになることは、生きる喜びにつながるはずです」と語り、治療法の確立を目指します。

関係医療機関

神奈川県立こども医療センター・アレルギー科

国立育成医療研究センター・アレルギー科

国立病院機構相模原病院・小児科

あいち小児保健医療総合センター・アレルギー科

岐阜大学病院・小児科

国立病院機構三重病院・小児科

関西医科大学滝井病院・小児科

国立病院機構福岡病院・小児科

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アレルギー症状「アナフィラキシー」の自己注射薬

花粉症の「舌下減感作療法」

花粉症の新しい減感作療法

花粉症は、花粉という異物から身を守ろうとする免疫反応が過敏になって、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどが出るアレルギー反応です。

治療は、

1.マスクや眼鏡で花粉を避ける

2.飲み薬や点眼、点鼻薬で症状を緩和させる

3.鼻粘膜のレーザー手術で反応を減らす

などの対症療法が一般的です。

花粉症の治療法として、東京都と日本医大が、花粉エキスをパンに浸し口に含む「舌下減感作療法」の共同臨床研究を行ったところ、7割の患者に症状軽減などの効果が表れました。注射による減感作療法はすでに行われていますが、これに比べ、通院回数を大幅に減らせる利点があるといいます。

減感作療法は、花粉中の「抗原」という、アレルギーを起こす物質を定期的に取り込んで体を慣らし、アレルギー反応(感作)を減らすのが狙いです。花粉症治療の中では唯一、完治の可能性があるとされています。

保険診療で行える現在の方法では、スギ花粉エキスの注射を2年以上、毎月受ける必要があります。しかし、長期間の通院の手間や注射の痛みが負担となり、あまり普及していません。

今回の臨床研究をとりまとめた日本医大耳鼻咽喉科准教授、大久保公裕さんによりますと、舌下減感作療法は、痛みがなく、自宅でできるので通院回数を減らせるのが利点となるそうです。フランス、イギリスなど欧州では一般的治療になっています。

舌下減感作療法の臨床試験

やり方は、注射用と同じスギ花粉エキスを、約1センチ角に切ったパンのかけらに垂らし、舌の下に2分間置いた後、はき出します。

舌の下にエキスがとどまっている間に、口の中に無数ある免疫細胞を刺激し、花粉に慣らしていく、という仕組みです。口に入れるのは、花粉症の症状が出やすいのどや鼻に近いからです。

今回の臨床試験では、徐々に濃度や1回当たりの量を増やしつつ、当初の毎日の投与から徐々に回数を減らしました。注射同様、2年以上続ける必要があります。

臨床試験は、3年以上症状がある患者193人を対象に2006年6月に開始しました。花粉飛散時期の鼻詰まりの状態、くしゃみ、鼻をかむ回数などを記録し、重症度を「無症状」から「最重症」まで5段階で評価しました。

その結果、2年間続けた142人は、試験開始前よりも花粉飛散量が増えたにもかかわらず、70%で症状が改善。その中で、重症度が2段階以上改善したのは43%、28%で症状が無くなりました。全体の30%は「変化なし」「悪化」でした。

副作用として、皮膚や口内のかゆみ、発疹、鼻水などが出た人もいましたが、呼吸困難など重大な副作用はありませんでした。しかし、ぜんそくなどの持病がある人は治療の対象外になります。

効果について大久保さんは「注射による減感作療法とほぼ同等」と話しています。

30年間花粉症に苦しみ、この治療で改善した60歳男性は「注射は頻繁に通院が必要で仕事に支障が出ますが、舌下減感作療法なら自宅でできるので試したいとおもいました」と話しています。

舌下減感作療法の治療費

しかし、この治療法は保険が利きません。一部医療機関で臨床試験や自費診療で行われていますが、薬の用量、回数など標準的手法が確立しているわけではありません。

日本医大のほか、千葉大、福井大、岡山大、鹿児島大病院が臨床試験中。三重大病院は自費診療で行っていますが、年間約6万円かかります。

関係医療機関

日本医大病院

千葉大学病院

福井大学病院

岡山大学病院

鹿児島大学病院

三重大学病院

乳幼児アトピー性皮膚炎のスキンケア

アトピー性皮膚炎の治療

アトピー性皮膚炎は、ダニやカビ、ペットの毛などがアレルギーを起こす原因(アレルゲン)となり、皮膚の炎症を引き起こします。肌が乾燥し、角質層のすき間を埋めている脂分が不足すると、アレルゲンが入り込みやすくなります。

かゆみのためにかくと、さらに皮膚が傷つき悪化を招きます。長引くと、皮膚が厚くなり皮がカサカサむけるなどの症状が出ます。

治療は、以下の3つが柱となります。

1.炎症を抑えるステロイド(副腎皮質ホルモン)の塗り薬

2.保湿剤によるスキンケア

3.ダニやカビなどのアレルゲン除去

ステロイドでしっかり炎症を抑える

ステロイドを長期間使うと皮膚が薄くなるなどの副作用がありますが、副作用を恐れるあまり塗り方が不十分だと、かえって治療を長引かせることにつながります。東京都立小児総合医療センター(府中市)アレルギー科医長の赤沢晃さんは「まずステロイドでしっかり炎症を抑えた後、徐々に量を減らしていき、最終的には保湿剤だけに切り替えます」と説明しています。

注意)ステロイド外用剤にまつわる誤解が多数ありますが、専門のお医者さんの指導そって治療すれば安全ですので、怖がらずに使用してください。

患者さんの8割は5歳までに発症します。赤沢さんらが2008年度に実施した厚生労働省研究班の調査によりますと、北海道や東北の小学生に発症が多く見られ、冬の寒さが及ぼす肌への影響も考えられるといいます。

アトピー性皮膚炎のスキンケアは、朝晩の1日2回入浴するのが望ましいです。汚れを落とすため、せっけんはよく泡立てて使います。スポンジなどを使わず、皮膚を傷つけないよう、素手で包み込むように洗います。特別なせっけんは必要ありませんが、殺菌作用の強いものは肌を傷めてしまうことがあるので、避けた方が良いいです。

乾燥を防ぐ保湿剤

お風呂から上がったら3分以内に、保湿剤を塗って肌の乾燥を防ぎます。汗をかきやすい夏場はさらさらしたローションタイプがよく用いられますが、乾燥しやすい冬場は、ワセリンなどベタベタしたタイプが望ましいです。

保湿剤を塗った後には、ステロイドを塗ります。大人の指先の第一関節分ぐらいを取り、手のひら2枚分ぐらいの広さに、べたつく程度に塗ることが必要です。

冬場は、暖房に伴う乾燥にも注意してください。室内では加湿器などを使って湿度を保つことが大切です。外出して外気にあたる際には、顔や手などには改めて保湿剤を塗るのが良いです。

また、ホットカーペットはダニのすみかになりやすいため、清掃はこまめにしてください。窓の結露はこまめにふき取り、カビの原因にならないよう気をつけてください。

関係医療機関

東京都立小児総合医療センター


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