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肝臓

肝臓の最新治療法


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難治性C型肝炎のペグインターフェロとリバビリン併用治療法

難治性C型肝炎の新しい治療法

治療薬のインターフェロンが効きにくかった難治性のC型肝炎に、新しい治療法が承認され、保険も適用され使用できるようになりました。

新型のインターフェロンのペグインターフェロンと、リバビリンという抗ウイルス薬を併用する方法で、難治性患者でも、ほぼ半数でウイルスが消失する効果が認められています。

C型肝炎はウイルス感染によって起こり、病気が進むと肝硬変、さらに肝臓がんになる原因になります。国内には、150万人前後の患者がいるとみられています。

インターフェロンは、C型肝炎ウイルスを退治する効果がある唯一の薬です。もともとは体に侵入した病原体を抑えるために体内で作られる物質で、人工的に合成したインターフェロンを大量に注射することにより、ウイルスを排除します。

ただ、C型肝炎ウイルスには様々なタイプがあります。日本人の場合、70%が「1b型」で、そのうちさらに80%がウイルス量が多いタイプです。全体の過半数を占める「1b型で高ウイルス量」タイプは、従来のインターフェロン単独療法では数%にしか効果がなく、治療が難しいのです。

しかし抗ウイルス薬のリバビリンとインターフェロンの併用療法、さら新型インターフェロンであるペグインターフェロンが登場し、少しずつ治療成績が向上し始めました。

このうちリバビリンは、海外では別のウイルス性疾患に20年以上前から使われていたが、インターフェロンと併用すると、C型肝炎ウイルスを排除する効果が高まることが近年わかった薬です。

一方、ペグインターフェロンは、ポリエチレングリコールという物質をインターフェロンに結合させ、体内に長時間とどまり効果が長続きするよう改良された新薬です。従来のインターフェロン治療は、原則として最初の4週間は毎日、その後も週3回、注射する必要がありました。これに対し、ペグインターフェロンは週1回の注射で済み、通院回数が少なく患者の負担が軽いのです。

治療は、ペグインターフェロンを週1回、通院で注射し、カプセル薬のリバビリンを1日2回飲み、これを1年間続けます。

国内での臨床試験では、「1b型で高ウイルス量」の患者の48%でウイルスが消え、従来の治療法に比べ格段に高い効果が表れました。中でも、以前にインターフェロン治療を受けたものの再び悪化した人では、63%に効果がありました。

インターフェロン治療は、うつ症状や血小板減少といった副作用が大きく、リバビリンとの併用では、貧血など副作用が増えます。

高齢者では副作用が表れやすく、70歳程度までが治療の対象になります。糖尿病や心臓病などの持病がある場合は、特に注意が必要になります。

1年間治療を続けた場合の薬剤費の総額は、平均約250万円で、保険で患者負担はその3割になります。従来のインターフェロン治療は約2000の病院で行われており、新治療もそれらの施設で受けることができます。

C型肝炎の対症療法

インターフェロンでもウイルスを駆除できない場合や、副作用で治療ができない場合は、肝臓の炎症を抑えたり、進行を遅らせる目的で対症療法が行われます。

治療薬には、点滴注射の「強力ネオミノファーゲンC」、内服薬の「ウルソデオキシコール酸」などがあります。

この他に、血液を抜く「瀉血療法」(しゃけつりょうほう)などがあります。肝臓内の鉄分は、細胞を傷つける活性酸素を発生させるので、肝細胞を痛めてしまいます。そこで献血の要領で血液を抜いて、軽い貧血状態にすると、肝臓内の鉄分が減少して、肝機能の悪化を妨げるのです。

関係医療機関 虎ノ門病院

肝硬変の亜鉛補充療法

肝硬変の合併症「肝性脳症」

肝臓は、体に有害な老廃物のアンモニアを無害の尿素に変えます。この代謝が不十分だと、アンモニアが体内にたまり、神経を傷めて意識障害を起こします。これが肝性脳症で、肝臓が著しく弱っている肝硬変の患者がしばしば起こす合併症です。

アンモニアの代謝を促すのは、肝細胞の中にある「OTC」という酵素です、この酵素は、金属元素の亜鉛がなければ十分に働きません。亜鉛は食物中に微量含まれ、不足すると肝硬変から肝性脳症を招くことがわかってきました。

肝硬変患者は、健康な人より、血液中の亜鉛濃度が約30%低く、小腸が弱って食物中の亜鉛を十分に吸収できないことや、肝臓で亜鉛をため込む力が落ちていることが原因とされています。

肝硬変の亜鉛補充療法

大阪厚生年金病院で、血液中の亜鉛濃度が基準値を下回る肝硬変患者に、亜鉛を補う治療を試みています。

亜鉛不足の肝硬変患者約30人を対象に、アミノ酸を投与する従来の治療と、これに硫酸亜鉛を併用する治療を比較したところ、3ヵ月後に血中のアンモニア濃度は、従来の治療では上昇したのに対し、併用治療では約20%下がりました。

亜鉛を過剰にとると、胃腸障害や吐き気などの副作用を起こす可能性があります。これを防ぐため、血液中の亜鉛濃度を測定します。

肝硬変になると、肝臓は正常には戻らないがこの治療で、病状の悪化を抑えることができると考えられています。

関係医療機関 大阪厚生年金病院

E型肝炎ウイルス(HEV)の検査と予防法

E型肝炎ウイルス(HEV)の検査

食べ物を通して感染し、急性肝炎を起こすのがE型肝炎ウイルスです。国内で感染が続いていて、重い症状になり亡くなる人もいます。これまでは厚生労働省の承認を受けた検査薬がないため実態がよくわからず、適切に治療するための診断にも支障がありました。2010年、医療関係機関向けの検査薬がようやく承認され、治療や実態把握に貢献すると期待されています。

2010年6月、北海道の病院に50代の女性が急性肝炎の疑いで入院しました。38度台の熱があり、最初にかかった診療所で採血して肝機能の異常が見つかりました。翌日にはさらに悪化して「重症型」と診断され、肝臓の炎症を抑えるために、ステロイド剤や免疫抑制剤を使った治療が行われました。入院はーカ月に及びました。

入院当初は、原因がわかりませんでした。B型肝炎やC型肝炎でないことは、検査ですぐにわかりました。担当医師はE型肝炎を疑いました。しかし、このときは病院で使える厚労省承認済みのE型肝炎検査薬が、有りませんでした。厚労省研究班で研究レベルの検査をしている、東芝病院(東京)に依頼して調べてもらい、しばらくしてE型肝炎ウイルス(HEV)に感染していたことが判明しました。

HEVは食べ物を通して感染しますが、潜伏期間が約6週間と長いため、感染経路の解明は難しいです。この女性の場合も、どこで感染したかは、はっきりしなかったといいます。

担当医師は「結果的にE型肝炎と判明しても炎症を抑える治療法が変わるわけではありませんが、原因がはっきりしないと医師としては不安があります。患者さんや家族にとっても病名がわからないのはストレスになります」と語っています。

こうした事情から、専門家はE型肝炎検査薬の承認を待ち望んでいました。2010年7月に厚労省が製造承認し、11月から臨床検査機関や病院など向けに発売されました。

E型肝炎の治療経験が豊富な手稲渓仁会病院(ていねけいじんかいびょういん 札幌市)の姜貞憲(カンジョンホン)・主任医長(消化器内科)は、「E型肝炎検査薬で正しい診断ができる意義は大きいです。たとえぱ、薬剤性肝炎や自己免疫性肝炎との区別をつけられます」といいます。

姜さんによりますと、急性肝炎は自然に良くなる場合がほとんどです。「だが一部の重症化する患者を早めに区別することが大切」といいます。

E型肝炎ウイルス(HEV)による死亡例

北海道では09年4月、HEVで劇症肝炎(脳症などを起こす重い肝炎)になった60代男性1人が亡くなっています。黄疸(おうだん)などの症状が出て、入院治療を受けていました。厚労省は死亡を受けて、2010年6月に都道府県などに注意を喚起しています。

東芝病院研究部の三代俊治部長によりますと、2010年6月の重症患者や09年の死亡患者からみつかったHEVを遺伝子解析した結果、2004年や06年に北海道で劇症肝炎を起こしたウイルス株ときわめて近縁のものでした。「重症の肝炎を起こすウイルス株がどこかで生き残っていると考えられます。重症をこれ以上増やさない対策が必要です」といいます。

E型肝炎ウイルス(HEV)の国内感染経路

感染が杜会的問題になり注目されてきたB型肝炎やC型肝炎に比べて、E型肝炎は日本ではあまり知られていない病気です。アジア・アフリカの衛生環境が整っていない地域で、飲料水の汚染などが原因で数万人規模の大流行を起こして注目されてきました。

日本では海外から帰国した人に起きる、輸入感染症と考えられてきました。しかし、この10年ほどで研究が進み、国内にいる動物にもウイルスが定着していて、その動物の肉や内臓などを十分加熱しないで食べることで人に感染する人獣共通感染症としての実態が明らかになってきました。感染経路として指摘されている動物は豚、イノシシ、鹿です。

03年に兵庫県で鹿肉を生で食べた4人が、E型肝炎を起こしたと報告されています。04年に北海道で起きた集団感染では、加熱不十分な豚レバーを食べた可能性が指摘されています。

東芝病院の三代部長らの調査では、東京都内のスーパーと肉屋22店舗で非加熱国産豚レバーを購入し、計260個のレバーのうち7個(2・7%)からHEVを検出しました。

感染症法にもとづくE型肝炎の報告数は、このところ年間50人前後で推移しています。しかし、実態ははるかに多いとされています。これまでは承認を受けたE型肝炎検査薬がなかったため、一般の病院で、検査ができず一部の大学や研究機関で検査が進められてきた事情があるためです。

検査薬が承認されたことで、今後、実態把握が前進しそうです。

自治医科大学の岡本宏明教授(ウイルス学)は、国内での急肝炎の発生状況などをもとにE型肝炎の患者は「少なくとも年間約600人」と推計されます。さらに、感染しても発症しない不顕性感染が多く、感染者数は「年間12万~18万人」と推定されます。

国内で判明しているE型の劇症肝炎は09年までに14人で、うち11人(79%)が死亡しているといいます。

E型肝炎ウイルス(HEV)の予防法

感染の予防法としては、豚やイノシシ、鹿の肉やレバーなどを食べる時に、十分に中心まで加熱することなどが重要になります、岡本教授らの実験によりますと、70度で10分間加熱するとHEVは感染力を失いました。56度で30分の加熱では、感染性が残っていました。

岡本教授は「感染経路はまだわからないことが多いです。さらなる解明が必要になります」と語っています。

ウイルス性肝炎の種類

ウイルス性肝炎には、A~E型の5種類あります。B、C、D型は主に血液で感染し、慢性肝炎になって肝硬変や肝がんを起こすことがあります。注射器の使い回しや輸血、血液製剤などが原因です。B型は出生時の母子感染が多かったです。いずれも対策が進み、激減しました。

D型はB型とともに感染し日本は少ないです。A、E型は食べ物や飲料水などから感染、慢性化せずに急性肝炎を起こします。まれに劇症肝炎になり死亡します。衛生環境の悪い地域で流行を起こすが、日本など先進国は少ないです。

関係医療機関

東芝病院(東京)

手稲渓仁会病院

自治医科大学

B型肝炎ウイルスの再活性化

免疫抑制によるB型肝炎ウイルスの再活性化

B型肝炎は、B型肝炎のウイルス感染によって発症する疾患ですが、B型肝炎ウイルスは感染して も自然に治ることも多いです。しかし、治ってもウイルスの遺伝子は肝臓に残っています。近年、免疫を抑 える新薬や新治療法が登場し、病気の治療でウイルスが再活性化する例が報告され始めました。

B型肝炎ウイルスの感染歴のある人が、血液がんやリウマチなどの免疫を抑える治療をきっかけに、ウイ ルスが再活性化する危険があることが厚生労働省研究班の調査でわかりましたが、再活性化を早期に発見す れば肝炎発症は防ぐことができます。

2000年代に、悪性リンパ腫で新薬を使った人に再活性化が報告されるようになり、当初はこの薬の副 作用かと考えられましたが、調査などから、他の治療にも広がる可能性がいで出て来ました。

リウマチの治療は、特定の免疫物質を抑える「生物学的製剤」が2003年から相次いで登場し、既存の 免疫抑制剤をより多く使う治療も普及しました。

治療効果は格段に上がりましたが、同時に強く免疫が抑制されるようになり、B型肝炎ウイルスの再活性 化が起きるようになったと考えられています。

これとは別に、2009年にはリウマチ患者が死亡しました。また間質性肺炎の治療でB型肝炎を発症し たとの報告もあります。

悪性リンパ腫の死亡例は全員、新薬の「リツキサン」を使っていたが、それ以外は特定の薬剤との明確な 関連はわかっていません。持田智埼玉医大教授が研究代表者の厚生労働省研究班は、どんな治療でB型肝炎 ウイルスの再活性化が起きるか調査中です。

早期発見が治療のカギ

早期に抗ウイルス薬を使えば肝炎が予防できますが、治療しないと一部が劇症化して死亡すること があります。

劇症肝炎の全国登録調査では、2004~09年に少なくとも17人が劇症肝炎で死亡しています。内訳 は、悪性リンパ腫13人、白血病2人、多発性骨髄腫1人、乳がん1人です。

B型肝炎ウイルスの再活性化の特長

  • B型肝炎ウイルスの感染ルートとは出産時の母子感染と、性感染が一般的です。母子感染はワ クチンなどの予防対策が進み、現在はありません。原因不明の場合は、過去の集団予防接種での注射の器使 い回しなどの医療行為によって感染した可能性があります。

  • B型肝炎ウイルス感染した場合、母子感染では、多くが持続感染者(キャリアー)となりますが 、その他の感染では自然に治ることが多いいです。自覚症状がないまま治り、自分が感染したことを知らな い人もいます。感染歴のある人は中高年に多く、50歳以上だと約2割、全国1000万人以上と推定され ます。そのうち、血液中にウイルスのたんぱく質(抗原)が検出される持続感染者は100万~130万人と みられています。

  • 感染歴の検査は、血液検査で抗体(ウイルスに対する免疫物質)を調べればわかります。

  • 再活性化するメカニズムは、B型肝炎ウイルスは、治った後も、ウイルスの遺伝子が肝臓に残 っているためです。通常はそのままで何も間題はありませんが、免疫を抑える薬を使うと体の低抗力が低下 するため、ウイルスが再び増えることがあります。感染歴がわかっていても、免疫を抑える治療を受けなけ ればまず心配はありません。

  • 再活性化した場合、感染歴のある人は、免疫を抑える薬や抗がん剤で治療中から治療後1年間 まで、ウイルスの遺伝子検査を定期的に行います。遺伝子が検出された場合、抗ウイルス薬を服用した例で は、肝炎の発症は抑えられています。

  • 再活性化を恐れて、治療を差し控えるべきではありません。B型肝炎ウイルスの再活性化を起 こす薬は、元の病気の治療効果が高いものが多いいです。検査を受け、対策をとれば再活性化は防げます。

  • B型以外のA型、C型肝炎ウイルスは治るとウイルス自体が体内になくなるので、再活性化は 起きません。

関連医療機関

埼玉医科大学病院


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