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肌・皮膚

肌・皮膚の最新治療法


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皮膚ケロイドの治療法

ケロイドとは

外傷、やけど、手術などで皮膚が傷ついた跡は、傷を修復する過程で赤く盛り上がり、かゆみが出ること があります。通常の傷は少しずつ目立たなくなりますが、赤みなどが残る傷跡は、肥厚性瘢痕(ひこうせい はんこん)と呼ばれます。この場合、悪化することはなく、治療の必要はありません。

これに対し、傷跡が数ヶ月以上経過しても、周囲の正常な組織に少しずつ広がり続けるのがケロイドです 。強いかゆみや痛みがあるばかりでなく、赤黒くなるなど、見た目の問題も大きいです。

とくに肩や胸、下腹部など呼吸や日常動作で、皮膚を引っ張る力がかかる部位にケロイドは、できやすい です。にきびやピヤスで開けた耳たぶの穴から、こぶ状に大きくなることもあります。遺伝やアレルギーな ど複合的な原因がると言われ、自然に治りません。

ケロイドの治療法

これまで確実な治療法がなかったですが、最近は傷跡の手術と、電子線(放射線の一種)を当てる治療を 組み合わせる方法が、効果を上げています。

日本医大の治療の手順は、手術でケロイドの広がりを防ぐため、傷跡を手術で大きめに深く切り取ります 。皮膚の深い部位から皮下、真皮、表皮の三層を、傷が盛り上がるような形に縫い合わせる三層縫合という 方法をとります。いずれの傷の部分が伸びて、平らになることを見越して、皮膚に余裕を持たせる特殊な縫 い方をします。

しかし手術でケロイドを取り除いただけでは、再発の恐れがありますので、翌日から手術した部位に放射 線治療器で電子線を照射します。傷を修復する働きが過剰になり、ケロイドの原因となる線維芽細胞の増殖 を抑えるためです。日本医大では、再発しやすい胸や肩は4日間、耳たぶは2日間と、部位によって当てる 放射線の量を変えています。電子線は皮膚表面に強い作用がありますが、内臓や骨などには達しない性質を 持つため、照射による発がんの心配はないそうです。

治療後の自己管理は、患部の保護や湿布のため、厚さ数ミリのシリコン製シートを3ヶ月から半年ほど張 ります。さらにアレルギーを起こす物質の作用を抑えるために、抗アレルギー薬のトラニストを内服するこ とが多いです。

これらの治療で日本医大では、再発率は胸や肩などで3割、その他では2割以下に抑ええられ、患者の7 割が治っています。治療には保険が使え、通常1週間程度の入院が必要になります。

関係医療機関 日本医科大学付属病院

尋常性白斑や尋常性乾癬、アトピー性皮膚炎には新紫外線療法「ナローバ ンドUVB」

尋常性白斑(じんじょうせいはくはん)の原因

尋常性白斑(じんじょうせいはくはん)は皮膚の色素を作る細胞「メラノサイト」が少なくなり、色素が 抜けてしまい、白いシミのようになってしまう病気です。かゆみや痛みはありませんが、美容上の問題で悩 む方は多いです。

尋常性白斑には、全身に左右対称にできる「汎発型」、片側の神経に沿ってできる「分節型」、一部にで きる「限局型」があります。このうち「汎発型」は、免疫細胞のリンパ球があやまって、メラノサイトを攻 撃することが原因とされています。このため患部に紫外線を照射し、免疫細胞を死滅させたり、働きを抑制 したりする治療が行われます。

従来の治療は、感受性を高める薬と波長の長い紫外線(UVA)照射を併用する、PUVA(プーバ)療法が主な 治療法でした。しかし副作用として、照射後24時間は、日光を浴びるとやけどをする恐れがあたり、顔の治 療が困難だったりしました。

新紫外線療法「ナローバンドUVB」

新しく開発されたナローバンドUVBは、治療に有効なごく限られた範囲の波長のみを照射しますので、エ ネルギーがPUVA(プーバ)療法より強力で、薬が不要になり顔の治療も可能になりました。

ナローバンドUVBは、尋常性白斑だけでなく、皮膚の表面に白いかさぶたのような鱗屑(りんせつ)がで き、痛みやかゆみを伴う尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)や、アトピー性皮膚炎の治療にも使われて います。

ただし紫外線を使いますので、皮膚がんの心配がありますので、初回に少量を照射し、皮膚の赤みをみて 、慎重に治療を進めなければなりません。尋常性乾癬はナローバンドUVBでは完治しませんので、再治療が必 要になります。このため尋常性乾癬の治療では、発がんの危険が高まりますので、薬物療法と組み合わせる 工夫が必要になります。

関係医療機関 東京大学病院

重度の火傷などに人工皮膚

皮膚組織と治療法

皮膚は表面から表皮、真皮、皮下組織の三層構造になっています。皮膚表面が傷ついた場合、表皮に近い 組織を尻や腹などの正常な部分から移植します。

しかし重い火傷や傷によって、皮下組織まで傷つくと、表面の移植では、厚みがなくなって傷ついた部分 に不自然な段差ができたり、へこんでしまったりします。また皮膚をつまんだ時に、皮膚全体が伸びるよう な柔軟さも取り戻せません。

人工皮膚

このような重度の皮膚の損傷には、「人工皮膚」を使用します、主成分はコラーゲンです。厚さ約3ミリ のスポンジ状で、牛や豚の真皮や腱を材料に、拒絶反応が少ないように作られています。

重い火傷や事故などによる皮膚の損傷、皮膚がんなどの腫瘍の切除後、唇や上あごがくっつかないで生ま れてくる口唇・口蓋烈(こうしん・こうがいれつ)などに使われます。保険は適用されます。

皮膚は5、6倍に伸びるため、全身の30%程度までの火傷なら、自分の皮膚に移植だけで治すことがで きます。しかし、それ以上の火傷では感染症を起こしやすく、治りも遅くなるため、人工皮膚が使用されま す。

使い方は、傷口をきれいにして、不要な組織を切除した上で、人工皮膚を糸などで張り付け縫い合わせま す。後はガーゼなどをあてて、軽く圧迫し固定します。手術から一週間程度で、皮下組織から新たな毛細血 管や細胞の元になる線維芽細胞が人工皮膚のスポンジの中に入り込みます。二、三週間ほどで元の皮膚に近 い状態になります。

人工皮膚の課題は、張り付けた部分から発汗や発毛がほとんどなく、感触も劣ることです。頭髪など目立 つ部分は、残った髪を移植する場合もありますが、広範囲ではかつらが必要になります。黒ずむ場合もあり 、見た目に分からないほどまでに、回復するのは難しいです。

関係医療機関 日本医科大学付属病院

糖尿病性潰瘍や壊疽などに「創傷ケアセンター」

糖尿病性潰瘍や壊疽

糖尿病が悪化しますと、動脈硬化が進んで足の血管が詰まり、皮膚や骨が膿む壊疽(えそ)を起こします 。この場合は、足を切断するケースが多いです。

このような糖尿病性潰瘍や壊疽(えそ)の患者は増えており、70万人とも推定されています。このほか 、動脈や静脈の血流障害による潰瘍、床ずれ(褥瘡:じょくそう)など、なかなか治らない傷を総称して「 慢性創傷」と言います。

しかし、慢性創傷を治す体系的な技術や知識を持った医師は、日本にはほとんどいないのが実情です。担 当の診療科も決まっていません。

内科は糖尿病の治療はできるが、足の傷は不得手です。一方、骨を治療する整形外科も、細菌感染を伴う 場合は治療を避けがちになります。足の切断は、医師の治療経験が乏しい場合もあると言われてます

創傷治療の「創傷ケアセンター」

そこで、創傷治療が進んだ米国の医療マネジメント会社が、専門病院から検査・治療法などの情報を集め 、日本の病院での治療に導入したのが「創傷ケアセンター」です。腐りかけた足などの「再生」を目指しま す。その最も重要な鍵となるのが「血流」です。

専用の検査機器で血流を調べ、ある程度血流があれば、腐った部分切除して組織の再生を促します。血流 が足りないなら、バイパス血管を植えるなどの治療を行い、足の切断を回避します。

医療マネジメント会社は、このような治療手順書を病院に提供し、担当の医師や看護師には米国で研修を 受けてもらいます。実際の診療では、傷の大きさ、状態などの診療記録を送ってもらい、問題点を指摘した うえ、米国の創傷専門医との電話検討会を通し、治療法について助言します。

練馬総合病院など比較的治療経験の長い全国5か所の創傷ケアセンターでは、14週間以内での治癒率は 平均7割。別の病院で「足の切断が必要」と言われた患者のうち、4割は切断を回避できた。治療には保険 が使えます。

関係医療機関 練馬総合病院

多汗症の治療

多汗症の症状

汗には2通りあります。暑い日や、運動で体温が高くなった時、体から熱を逃がすために全身から出る汗と、もう1つは、緊張したり、驚いたりした時に手のひらや足の裏、額、わきの下から出る汗です。

多汗症は後者の汗が異常に多い症状を指しますが、緊張していなくても汗が出ます。「手のひらや足の裏が常に湿っている」状態から、「間をおかず、しずくがポタポタ落ちる」まで程度の差はありますが、人口の約0.5%を占めています。

多汗症は、交感神経の働きに関係があります。背骨に沿って左右両側に走る副交感は、脳の中枢からの発汗の指令を汗腺に伝えます。原因は不明ですが、中枢の働きが過敏なため、汗が絶え間なく出るのです。

多汗症の薬による治療法

治療には、まず薬を使います。汗が多い場所に、制汗剤を塗るのが一般的です。だだ、効果には個人差があり、症状が重いと不十分なことが多いです。交換神経の働きを抑える飲み薬もありますが、全身の汗を止めるので、体温調節ができなくなる上、便秘や脈拍の増加といった副作用もあります。

多汗症の手術

薬物治療で十分な効果がない場合、手術を行います。まずわきの下に数ミリの穴を1か所あけ、胸腔鏡(きょうくうきょう)と呼ばれる小型カメラを入れます。拡大画像を見ながら、先端についた電気メスで、手のひらなどの発汗をつかさどる、交感神経を切ります。手術は、左右のわきの下から行います。保険がきき、通常は1~2泊ほどの入院が必要になります。

代償性発汗

効果は高いのですが、問題もあります。手のひらや足の裏の発汗を抑えると、代わりに背中やおなか、太ももなどの汗が増えるのです。これが「代償性発汗」と呼ばれる副作用で、原因は分かりませんが、ほとんどの場合に起こります。

NTT東日本関東病院では、1400人に手術を実施した結果、90%は手のひら発汗が「完全に止まる」「ほぼ止まる」状態になった反面、代償性発汗も96%に見られました。アンケートでは、86%が手術を受けて「満足」と答えた一方、「受けない方がよかった」(2%)「どちらとも言えない」(12%)と答えた人もいます。

多汗症の手術を受ける場合は、代償性発汗についてよく理解して、手術を受けるかどうか時間をかけて慎重に判断することが必要になります。「何となく不快」というだけでなく、「非常に困っている」「手のひらの汗さえ止まれば仕事ができる」といった強い動機が必要になります。

代償性発汗を配慮した、手術もあります。チタン製クリップで挟み、交換神経の働きを遮断する方法です。手術に手間がかかり、傷口も左右2か所ずつに増えますが、神経を切らずにすみます。代償性発汗が予想以上につらい場合は再度、手術でクリップを取り除けば、以前の状態に戻る可能性が高いのです。

関連医療機関

NTT東日本関東病院

昭和大藤が丘病院

メラノーマ(皮膚がん)のダーモスコープ検査

皮膚がんの一種、悪性黒色腫「メラノーマ」

ほくろが気になり、受診した皮膚科で「早めに取った方がいい」と言われたのに、別の皮膚科では「心配 ありません」。そんな経験のある人は、意外に多いのではないでしょうか。

ほくろは皮膚に色素が集まったもので、通常は心配ありませんが、ごく一部に、がんの可能性があります 。短期間で色や形が変わったり、大きさが5ミリ以上になったりした場合は、注意が必要です。

メラノーマは、腫瘍の厚さが1.5ミリ以下で、転移がない早期の場合、手術でほとんどが完治します。 しかし、不用意に切除するなど外的な刺激で細胞がばらばらになりやすく、傷つけると転移が促されると考 えられています。

このため、胃、大腸がんの検査のような、組織の一部を採って顕微鏡で調べる検査はあまり行われません 。従来、医師が肉眼や虫めがねで観察して、がん化した「悪性」か、「良性」かを見分けていました。

しかし、これだけでは正確な診断は難しいです。そこで登場したのが医療用拡大鏡「ダーモスコープ」で す。

メラノーマのダーモスコープ検査

小ぶりな懐中電灯くらいの大きさで、先端の円形レンズ部を肌に密着させると、ほくろを10倍に拡大し て見ることができます。レンズ部に組み込まれた電球で明るい視野を得て、中央に映る目盛りでほくろの直 径を測ります。肌には超音波検査などで使われるゼリーを塗り、レンズ内の光の乱反射を抑えます。数10 倍の拡大機能を備えた製品もあり、いずれも検査中の痛みはありません。

ダーモスコープの登場で、手のひらや足の裏のほくろの検査精度が格段に上がりました。足の裏などに数 多く刻まれた「皮溝」(ひこう)と呼ばれる細い筋と、皮溝と皮溝の間で丘のように高くなった「皮丘」( ひきゅう)の観察が、診断に役立つことが分かったためです。

国立がんセンター中央病院、皮膚科医長の山本明史さんは「良性のほくろは、主に皮溝の部分だけに黒い 色素が見られるが、メラノーマでは逆に、主に皮丘部に黒い色素が見られる」と話しています。

日本人のメラノーマの約三割は足の裏にできるため、この装置の意義は大きいのです。皮溝がはっきりし ない肩や背中などでも、肉眼ではとらえきれないメラノーマ特有の色や形の変化が判別できます。

ところが、この検査はあまり普及していません。「装置の元祖」であるドイツ製品の販売会社によると、 全国に約一万五千か所の皮膚科がありますが、販売台数は700台に過ぎません。検査に保険点数が加算さ れないことなどが原因です。

しかし、ダーモスコープはほくろの診察に欠かせません。受診する際は、事前にこの装憧の有無を確認す るといいです。

日本皮膚科学会では、ホームページで皮膚科専門医の名簿を掲載しています。指導的な専門医がいる「教 育研修施設」約570の病院名を知ることもでき、ダーモスコープ導入の有無を問い合わせる手がかりにな ります。

関連医療機関 国立がんセンター中央病院

関連サイト 日本皮膚科学会

床ずれ(褥瘡じょくそう)の「局所陰圧閉鎖療法」

床ずれ(褥瘡じょくそう)の原因

床ずれ(褥瘡じょくそう)は、体の特定の部位に体重の圧力がかかり続け、長時間血流が妨げられた結果、皮膚やその下の脂肪などの組織が壊死(えし)に至る状態です。おしりの中心の仙骨部、後頭部、かかと、肩、ひじなど、骨が突出した部位に起きやすいです。

寝たきりの人が床ずれ(褥瘡じょくそう)になりやすく、皮膚がただれ、悪化するとポケットのように深い穴が開きます。

床ずれの危険因子は、以下のようなものがあります。

  • やせて骨張っている。
  • 自分で動けない。
  • 栄養状態が悪い。
  • おむつをするなど、常に湿っていて皮膚が弱い部分がある。
  • 関節がこわばっている。
  • むくみがある。

日本褥瘡学会の2007年の試算では、床ずれの患者は、少なくとも12万人に上ります。2010年春、専用の装置で傷を密閉して、傷口から出る体液(滲出液しんしゅつ)を吸引し、回復を早める「局所陰圧閉鎖療法」が新たに保険適用になりました。床ずれ(褥瘡じょくそう)重症患者の治療の選択肢が、広がりました。

床ずれ(褥瘡じょくそう)の治療

杏林大病院(東京都三鷹市)形成外科講師の大浦紀彦さんによりますと、床ずれ対策で最も重要なのは、寝たきり患者さんの体にかかる圧力を分散させることです。寝返りを打たせることや、空気圧を調節できるエアマットレスなどの使用が必要になります。次に大切なのが栄養管理です。低栄養状態の患者さんは、傷の誘因となるむくみや骨の突出が、起こりやすいからです。

この2点を踏まえたうえで、出来た傷に対しては、ポリウレタン製のスポンジなどで覆って湿り気を保つなどし、皮膚の再生を促すのが治療の基本とされます。症状に応じ、傷をふさぐために盛り上がってくる肉芽の形成を促進する塗り薬やスプレーも用いられています。皮膚にとどまる浅い傷であれば、通常2~3週間でふさがるといいます。

しかし、傷が皮膚だけでなく、その下の脂肪や筋肉に及ぶほど深くなった重症例は治りにくいです。マットレスに皮膚が引っ張られるズレの影響で、傷が皮膚の下にポケット状に広がるケースも多く、病院に治療に来る患者さんの4割は、傷が皮下組織に至るタイプです。

保険適用になった「局所陰圧閉鎖療法」

2010年春、保険適用になった「局所陰圧閉鎖療法」は、こうした深い床ずれなどが対象になります。海外では、1990年代から専用機器が使われてきました。

壊死部分を切除し洗浄したうえで、傷にスポンジ状のポリウレタンをあて、上からフィルムで覆い密閉した後、穴を開けて吸引用チューブをつなぎ、中の圧力を下げます。

大浦さんは「陰圧すると肉芽の形成が促進されるうえ、吸引によって過剰な滲出液や老廃物を除去でき、傷を清潔に保てます。傷周囲の血流促進効果もあり、早い回復につながると思われます」と解説しています。

国内の11医療機関で、80人の患者を対象に、専用装置を用いた陰圧閉鎖療法の臨床試験を行ったところ、5センチ以上の傷が閉鎖(肉芽が出来た状態)に至った平均日数は17・7日です。従来の治療を行った127人の平均63・5日と比べ、大幅に短縮しました。

重症患者の場合、回復を早めるために、壊死した組織を切除し、皮膚を移植する手術を行うことも多いいですが、「事前に陰圧閉鎖療法を行えば、切除範囲を小さくできることも多くなる」と大浦さんは話します。

なお、傷口が細菌に感染していた場合は、抗菌剤を先に使用します。細菌繁殖の恐れがあるので、すぐに傷を覆うのは避けた方がいいそうです。

関係医療機関 杏林大病院

関連ページ 糖尿病性潰瘍や壊疽などに「創傷ケアセンター」

アトピー性皮膚炎の症状を緩和する乳酸菌「ラクトバチルス・アシドフィルス L-92株」

「ラクトバチルス・アシドフィルス L-92株」の二重盲検試験

カルピス健康・機能性食品開発研究所は、同社保有の乳酸菌「ラクトバチルス・アシドフィルス L-92株 」(以下、L.アシドフィルスL-92株)を用いた食品を継続摂取することで、アトピー性皮膚炎の症状が緩和 されることを二重盲検試験(ヒト試験)で確認しました。

文部科学省実施の児童生徒対象の「アレルギー疾患に関する調査研究」(小中高生:有効回答1277万3554 人)によると、アレルギー性鼻炎9.2%(約117.5万人)、喘息5.7%(約72.8万人)、アトピー性皮膚炎5.5 %(約70.3万人)の患者数がいることがわかりました。

アレルギーのなかでもアトピー性皮膚炎は、子どもの発症が多く、年齢を経るにつれて治る傾向にあるよ うですが、成人になっても続く人や再び発症する人もいます。

アトピー性皮膚炎は、皮膚にかゆみが起きるアレルギーで、皮膚生理機能の異常やハウスダスト・食物成 分による過剰反応などが要因のひとつといわれています。

長期間の特別な対処法が必要で、短期間ではなかなか改善されないアレルギーとして知られています。

同社では、保有乳酸菌の一つである「L.アシドフィルスL-92株」が花粉症・通年性アレルギー性鼻炎の症 状緩和の働きがあることを確認しました。前の年、同じI型アレルギーであるアトピー性皮膚炎においても同 様の働きがあるかどうかの試験を実施し、有効性が示唆されたため、プラセボ対照二重盲検試験を実施し、 治療の補助に役立つかどうかを調べていました。

アトピー性皮膚炎の原因

アトピー性皮膚炎の原因は、現在の生活環境が昔と違って細菌の無い超清潔社会になったため、戦う相手 がいなくなった体の免疫がバランスを崩して、体に入ってくるダニの死骸やホコリそして特定の食品などに 過剰に反応して独特の皮膚炎を起こすのがアトピー性皮膚炎です。これがアトピー性皮膚炎を含めたアレル ギー反応の原因です。

アトピー性皮膚炎のアレルギー反応についてもう少し詳しく解説しますと、人間の免疫システムには細菌 に対する細菌型免疫と、吸血ダニや寄生虫に対するIgE抗体とマスト細胞(肥満細胞)を使ったIgE型免疫の 2つのシステムがあります。しかし現在は細菌があまりいない、清潔な環境のため細菌型免疫システムが小 さくなり、IgE抗体型免疫システムが大きくなり免疫のバランスが崩れてしまったのです。

乳酸菌は細胞性免疫を活性化、つまり、細菌型免疫システムを活性化して、IgE抗体型免疫が優位に偏っ た免疫システムのバランスを改善することが期待できるのです。

アトピー性皮膚炎の症状

年代によって症状の現れ方は異なりますが、思春期以降は、首のまわりが黒ずみ、皮膚が苔癬化(たいせ んか:厚ぼったく、きめが荒い状態)して、強いかゆみを訴えます。

顔面に紅班が生じるケースもあり、角質が剥がれ落ちてしまうこともあります。季節によって症状の重さ は変化します。通常は夏季に軽減し、冬季は乾燥して悪化します。

爪白せんのパルス(間欠)療法

爪白せんの症状と原因

爪白せんは、水虫の原因になる白せん菌が爪の傷や割れ目から入り込み、爪が黄色に濁って変形する病気です。爪がぼろぼろになって、はがれることもあります。

皮膚科専門医で作る「ジャパン・フット・ウィーク研究会」は、爪白せんの患者は1200万人いると推定しています。国民の10人に1人が、かかっている計算です。長く水虫とつきあってきた中高年層が爪白せんを併発している場合が多いですが、若い年代にも徐々に広がりつつあります。

この病気がなおりにくいのは、水虫用の塗り薬が爪の内側に入りにくく、効かない点です。内服薬で効果のある「塩酸テルビナフィン(商品名・ラミシール)」も出回っていますが、半年以上使わなければ、なりません。かゆみなど自覚症状もないため、放置している人が多いです。

帝京大皮膚科教授の渡辺晋一さんは「爪白せんは、菌をいわば培養している状態です。治療しないと爪から菌が出てきて、家族にもうつすことになります」と話しています。

イトラコナゾールを使った「パルス療法」

治療には抗菌薬「イトラコナゾール(商品名・イトリゾール)」も広く使われています。カプセルタイプの薬ですが、保険で認められている一日投与鍛は100ミリ・グラムです。これだと毎日飲み続けなければなりません。そこで渡辺さんらは、毎日は服用しなくてもすむ「パルス療法」について、全国30か所の病院で三つの方法を比較テストして、治療期間を大幅に短縮できる手法を確認しました。

パルス療法は、薬の内服を一定期間続けた後に、しばらく休止期をおく治療法です。200人近い爪白せん患者にイトラコナゾールを使い、

(1)1日200ミリ・グラムを一週間服用後、3週間休むパターンを3回 ( 総投与量4200ミリ・グラム)

(2)(1)と同様で6回( 同8400ミリ・グラム)

(3)1日400ミリ・グラムを1週間服用後、3週間休むパターンを3回( 同8400ミリ・グラム)

に分け、半年後の爪の濁りなどを比べました。

すると、「一度に薬をたくさん投与、短期間に終わらせる」(3)が、効果が最も高かったです。6%は完治し、「著しい効果」「有効」も加えると約85%に上りました。一方、(1)(2)の効果は、65%前後にとどまりました。

パルス療法は欧米で、安全性が確認されています。国内でも大学病院や地域の基幹病院などで、独自の判断で取り組む医師が増えています。そんな中、詳細なデータ比較はこれが初めてで、最も効果の高い方法はどれか、データを元に明らかにできました。

イトラコナゾールは、体内で分解されない分は爪に運ばれ長くとどまります。そのため、服薬終了後も効果が続きます。パルス療法は、この性質を利用しました。爪の中のイトラコナゾール濃度をみると、(3)では、服用終了から9か月間、白せん菌を殺す十分な量の薬効成分が残り、効果が続いていたのです。

慶応大皮膚科教授の西川武二さんは「副作用もほとんどなく、患者のアンケートでも、7割はこの治療が良いと実感している」と語っています。

爪白せんの診断

爪白せんの診断は、爪の一部を切り取って、顕微鏡での確認と、菌の培養の2通りで行います。「水虫」と見えても、足の皮膚の湿疹(しっしん)であるケースも少なくなく、勝手に水虫と誤解している人は多いです。気になる人は、皮膚科専門医で正確な診断を受けることが、望ましいです。

関係医療機関

帝京大学病院皮膚科

慶応大学病院皮膚科

高齢者に多い「軟性線維腫」や「脂漏性角化症」「汗管腫」のレーザー治 療

「軟性線維腫」

横浜市在住の67才の男性は、最近半年ほどの間に、首の右側に2~3ミリ大の小さなイボが多発しまし た。色は肌色のものが多く、キノコのように根元が細くなっています。アイロンがけしたワイシャツを着る と、イボがえりにこすられて真っ赤になり、痛みを感じるようになりました。

男性が昨年夏から治療に通うNTT東日本関東病院(東京都品川区)皮膚科医長の出月健夫さんによりま すと、このイボの正体は「軟性線維腫」(なんせいせんいしゅ)です。高齢者に多いできもので、成長する とキノコのように根元がくびれるのが特徴です。放っておくと、中には梅干し大になるものまであります。 治療では、根元からハサミで切ったり、液体窒素で凍らせたりする方法があります。数が多い場合は炭酸ガ スレーザーで焼いてしまうのが効率的です。

男性の場合も当初、切除や液体窒素で少しずつ治療していましたが、細かいイボがあまりに多いため、昨 年12月、レーザー治療に切り替えました。レーザーを照射すると、イボは一瞬で消えました。

「脂漏性角化症」

東京都在住の74才の主婦も同病院で昨年末、イボのレーザー治療を受けました。背中や首回りに、シミ のようにも見える大小のイボが100個以上もあります。「30歳代のころは5~6個でしたが、どんどん 増えました」といいます。

出月さんによりますと、主婦のイボは「脂漏性角化症」(しろうせいかくかしょう)」でした。俗に老人 性イボとも呼びます。皮膚の老化に伴い、ほとんどの人にできます。色は黒や茶色で、大きさや盛り上がり 具合も様々です。いわゆるシミは単なる色素沈着で厚みがないのに対し、脂漏性角化症は厚みがあります。

ホクロとも似ていますが、色はやや薄く、大きくなりやすいです。放置しておいてもいいですが、見た目 を気にして治療に訪れる人が少なくありません。軟性線維腫と同様、切除や液体窒素による凍結のほか、レ ーザー照射などで治します。

「汗管腫」

そのほか、レーザー治療の対象となるできものの中で、比較的多いのが汗管腫(かんかんしゅ)です。聞 き慣れない名前ですが、汗を出す汗腺が良性の腫瘍になったものです。1ミリから数ミリ程度の小さなイボ が、まぶたの下など目の周囲に多発することが多いです。女性に多いため、美容上の問題から治療に訪れる 患者さんが多いです。

関係医療機関

NTT東日本関東病院

皮膚がんに進行する日光角化症(にっこうかくかしょう)

日光角化症の症状

日光角化症はまだ、がんとは言えないものの、そのまま放っておくと皮膚がんに進行する可能性がありま す。

NTT東日本関東病院皮膚科を受診した85才の女性(85)の場合。右ほほ、目の下あたりに、やや黄 色みがかったマメのようなできものが、皮膚から吹き出しているようにも見えます。できものの周りの皮膚 は、少し赤みを帯びていました。医師の診断は、日光角化症でした。

患者さんは中高年が多く、日光の紫外線を長期間浴びることが主な原因とされます。顔面や手の甲、うな じなど日光に強くさらされる部位にできやすいです。放置しておくと、まれに皮膚がんの一種、有棘細胞( ゆうきょくさいぼう)がんに変わることがあります。

基本的な症状は、1センチから数センチ程度の皮膚表面の赤っぽい「がさつき」です。それに加えて、表 面の角質が、黄色っぽいかさぶた状になったり、硬い角のような「皮角」(ひかく)になったりすることも あります。

日光角化症の原因

この女性のマメのような硬いできものも、日光角化症に伴ってできた皮角でした。女性は、「若いころ屋 外で日光に当たりすぎたせいかもしれないです」と話しています。10年以上前、左ほおにも同じような症 状が出て、別の病院で切除したことがありました。

「悪化するとがんになりますが、表面にとどまっているうちは心配はありません」と医師から説明をうけ ていました。

同病院皮膚科医長の出月健夫さんは「日光角化症は、皮膚がんに発展するともいわれますが、症状の進行 はゆっくりです。きちんと治療をすれば大丈夫です」と説明します。

有棘細胞(ゆうきょくさいぼう)がん

皮膚がんと言えば、ホクロと間違われやすいメラノーマ(悪性黒色腫)のように黒っぽいタイプがよく知 られていますが、有棘細胞がんは、皮膚が赤くただれたようになり、出血しやすいです。皮膚がんの中では 日光紫外線との関連が最も強いとされています。

日光角化症から有棘細胞がんに変化した場合、患部の皮膚が盛り上がり、ぐじゅぐじゅした状態になり、 表皮よりも下に入り込んでいきます。

ボーエン病

日光角化症と同様に、有棘細胞がんに変わる可能性がある皮膚の症状にボーエン病があります。ボーエン は発見者の名前です。隆起が少ない不規則な形の発疹で、四肢や胸、背中などにできやすいです。

治療法は、皮膚がんと同様、どちらも基本的には切除手術ですが、細かいものが多発している場合は、炭 酸ガスレーザーで焼き切ることもあります。病変部を取り除けば完治します。

関係医療機関

NTT東日本関東病院皮膚科

心の傷を癒す人工身体「エピテーゼ」

見た目を回復する技術「エピテーゼ」

「エピテーゼ」とは、がんの手術や事故、先天的な障害で欠けた体の一部を、医療用シリコーンな どで作った人工身体のことです。医療用の接着剤や、骨に固定した磁石で欠けた部分に着け、見た目を回復 する技術です。目、鼻、口、耳などのほか、指や乳房など、あらゆる部分を作ることができます。

義手や義足の多くが機能重視で、見た目は二の次だったのに比べ、エピテーゼは美しさや精密さを追求し ているのが特徴です。しわやたるみ、まつげやまゆ毛、透ける静脈なども、本人の体の特徴に合わせて細か く再現し、色合いも周囲の皮膚と違和感なく仕上げます。

米国・UCLA付属病院で経験を積んだ歯科技工士、常国剛史さんが設立した「アヘッドラボラトリーズ 」(東京都中央区)は、エピテーゼの製作会社の一つです。

エピテーゼは心の傷を癒やす

欠けた部分はどんな特徴があったのか、本人や家族の意見を聞きながら、目の前で欠けた部分を復 元する彫刻モデルを作製します。

モデルから作った鋳型にシリコーンを注入してエピテーゼを作り、色づけをします。5回程度通って、製 作期間は約2か月です。遠隔地に住む人や入院などで通えない人のために、出張もします。

手術であらわになった粘膜を外気から保護したり、空気が漏れるのを防いで発音をはっきりさせたりなど 、実用的なメリットもあります。

最も大きいのは患者さんの心に与える効果です。「今は着けていることを忘れることさえある。楽に生き られるようになった」とエピテーゼを体験した患者さんは話します。常国さんは「特に顔面の損傷は、周囲 の驚く顔を見て引きこもりやうつになる人が多いいです。エピテーゼは心の傷を癒やします」と話していま す。

エピテーゼは保険適用外

外科手術をした病院が、自前で作ったり、製作会社に紹介したりするほか、エピテーゼの専門外来 を作った静岡県立静岡がんセンターなど、別の病院で外科手術を受けた患者さんを受け入れる施設も増えて います。すでに皮膚などを移植している場合、エピテーゼを着けやすくする手術が必要な場合もあります。

問題は費用です。義手や義足と違い、保険がきかないため、目(義眼も含む)は40万~50万円、鼻や 耳は30万円程度かかります。さらに、平均数年で傷んでしまうため、作り直すことも必要になります。長 持ちさせるために毎日水洗いするなど、自身での手入れも欠かせません。

国立がん研究センター(東京都中央区)形成外科医の桜庭実さんは「社会復帰するまでが病気の治療で、 エピテーゼも治療の一環になります。医療と認め、保険を適用すべきだと思います。今は、費用や出来上が りの写真などを十分に検討したうえで選択してほしいです」と話しています。

関係医療機関・施設

国立がん研究センター(東京都中央区)形成外科

アヘッドラボラトリーズ

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ニキビ治療の新薬ディフェリン(一般名アダパレン)の効果

ニキビを予防するディフェリン(一般名アダパレン)

ニキビは「青春のンンボル」と呼ばれるように、13歳前後からでき始め、高校生の頃に最も悪化 します。そして9割以上の人が、ニキビを経験します。

思春期を迎えると、男女とも男性ホルモンの働きが活発になり、皮脂の分泌が盛んになります。毛穴の周 囲の皮膚が固くなって詰まり、皮脂がたまると、皮膚の常在菌であるアクネ菌が皮脂を栄養源にして異常に 増えます。この状態が、赤いニキビの炎症を引き起こす原因です。

従来治療に用いられてきた抗菌薬は、アクネ菌を殺すことで、ニキビの炎症を抑える効果がありました。 これに対し、ニキビ新薬の塗り薬ディフェリン(一般名アダパレン)は、ニキビのできる初期段階において、 毛穴が固くなるのを抑え、皮脂がたまるのを防ぐ働きがあります。医師が処方する医療用の医薬品として、 2008年10月に発売されました。

ディフェリンによるニキビ治療の効果と副作用

12~35歳の男女約100人を対象にした3か月間の臨床試験では、ディフェリンを塗った患者 さんではニキビの数が平均で約64%減少したのに対し、有効成分を含まない軟こうを塗った場合には40 %の減少にとどまり、ニキビを抑える効果がみられました。

一方、ディフェリンを使った8割以上の人に、皮膚の乾燥やかゆみなどの副作用がみられました。

副作用の多くは、薬の使用開始直後に起こります。1、2週間で軽快しますが、販売するガルデルマ社は 「保湿剤と併用するなど、皮膚科の専門医による指導の下に使用してほしい」と注意を呼びかけています。

新薬の登場に合わせ、日本皮膚科学会は2008年9月、初めてのニキビ治療ガイドラインを策定しまし た。ニキビのでき始めにはディフェリンを使い、軽症から中等症にはディフェリンと抗菌薬の塗り薬を併用 、中等症から重症のニキビに対してはディフェリンと抗菌薬の飲み薬との併用を勧めています。

ディフェリンは保険適用

治療の基本は皮膚を清潔に保つことで、1日2回の洗顔のほか、化粧をする場合には刺激の少ない ものを使うことを推奨しています。食べ物は「ニキビの悪化との関係を示すデータはない」として特に制限 はありません。

臨床試験の中心となった東京女子医科大学皮膚科教授の川島眞さんは、「症状が軽いうちに、皮膚科で治 療を受けてほしい」と話しています。

ディフェリンは就寝前に1日1回、洗顔をした後に塗ります。保険がきき、約2週間分の15グラム入り チューブ1本の薬代は約530円(3割負担)です。

関係医療機関

東京女子医科大学皮膚科

肌の傷跡を再生治療するフラクショナル・レーザー

従来のレーザーは、皮膚の再生までに時間がかかる

けが、やけど、手術の縫合などで皮膚が傷つくと、最初は赤くなりますが、通常は時間とともに色 が薄くなり、やがて目立たなくなります。

傷跡が赤く膨らんだまま残ったり、ケロイドになったりした場合は、皮膚を縫い合わせたり移植したりす る外科的な治療が行われてきました。しかし、傷跡は様々で、外科的な治療の対象とならない白くなった傷 跡や小さな膨らみでも、顔や腕など、人の目に触れる場所にあると気になります。

そんな傷跡には、レーザー治療が役に立ちます。レーザーは、黒いしみや赤いあざなど、色素に反応して 焼くタイプや、皮膚の表面を焼いて削ることで新たな皮膚の再生を促すなど、様々な種類があります。

傷跡に使われるのは、表面を焼いて削るタイプです。しかし、従来のレーザーは、皮膚の再生までに時間 がかかり、日本人の場合、治療後に色素が沈着して残る危険性が高かったです。

皮膚の再生が速いフラクショナル・レーザー

それに対し、フラクショナル・レーザーは、一つの線や面ではなく、特殊なフィルターを通すこと で、1平方センチ・メートルあたり数十から数百の微細な点で照射します。レーザーで焼いた部分を正常な組 織が取り囲むため、皮膚の再生が速く、色素沈着が少ないです。

このため、フラクショナル・レーザーは広範囲な傷やニキビ、やけど跡など、凹凸がある肌の治療がしや すいです。皮膚科や形成外科のクリニックで美容目的に使用することが多いですが、日本医科大学形成外科 では、傷跡ややけど跡の治療にも研究として積極的に使っています。

同大学形成外科医師の小池幸子さんは、「完全に跡が消えるわけではないことは理解しておいてください 。それでもなめらかになるので、メークで跡を隠す方法もあります」と話しています。

治療はやや痛みを伴うため、事前に麻酔のテープやクリームを使うこともあります。保険はきかず、医療 機関によって治療費は異なります。自分の皮膚には効果がどの程度期待できるのか、事前に医師から詳しく 説明を受けて治療を受けてください。

フラクショナル・レーザーに効果がある症状

しわ、たるみ

傷後

やけど跡

ニキビ跡

逆に効果のない症状

あざ

ほくろ

ケロイド

関係医療機関

日本医科大学形成外科

余った皮膚を真皮縫合法で除去する「減量後手術」

余った皮膚を除去する減量後手術

ダイエットに成功して、余ったおなかの皮膚が垂れ下がってしまった場合、「減量後手術」で取り 除くことができます。術後は、傷が大きく、痛みもあますが、半年後には傷跡も目立たなくなります。

減量後手術は形成外科では昔から行われてきた手術ですが、杏林大形成外科教授の波利井清紀さんにより ますと、ここ2、3年で、希望者の数が急に増えたそうです。メタボリック・シンドロームが注目され、や せ志向が一段と強まるなかで、「今後、患者数はさらに増えるのではないか」とみています。

少々の減量なら、ゆるんだ皮膚は自然に縮んできますが、年齢、性別に関係なく、減量も50キロ以上と なると、かなりの皮膚が余ったままになってしまうことがあります。主におなかと太ももの手術が多いいで すが、乳房や二の腕、背中も対象になります。

おなかの場合、女性なら下着で隠れるラインに骨盤の端から端まで横に切り込みを入れ、余分な皮を引っ 張って切り取ります。へその位置を決め、丸く穴をあけて縫いつけます。背中の皮も余っている時は、腹巻 きのように胴体を一周する形で切ります。

乳房は、乳輪の周囲と下の隠れる部分を図のように切り、縫い縮めて乳輪の位置を上げます。二の腕や太 ももは内側の皮を矢羽根のような形に切ります。

傷跡を目立たなくする「真皮縫合法」

技術的には難しい手術ではありませんが、「縫う距離が長いので、医師にとってはとにかく体力が いる仕事です」(波利井さん)と話します。傷を閉じるには、まず皮下脂肪、続いて皮膚の下層の真皮と呼 ばれる部分、そして、最後に皮膚の表面の部分を縫い合わせて閉じます。形成外科で行う、傷跡を目立たな くするためのという縫い方です。真皮を縫っておくことで、皮膚の表面にかける糸を細くし、強く縛る必要 がなくなります。

このように手間をかけて縫うため、手術時間は腹部だけで5~6時間、腕や足は片方で2時間かかります 。おなかと腕など離れた部分の皮を取る時は、1か所につき2人ずつ、合計で6人の形成外科医が同時に取 りかかることもあります。

減量後手術の費用と設備

5日程度の入院が必要で、費用は自己負担になります。杏林大では手術、麻酔、入院費の合計で、 おなかだけなら120万円、おなかと背中を合わせると180万~200万円になります。乳房だけの場合 は100万~120万円かかります。

この手術は、出産後や、年を取って垂れ下がった乳房や二の腕のたるみを除くためにも行われます。拒食 と過食を繰り返して皮膚がたるんだ人が手術を受けることもあります。

波利井さんによりますと、大学病院など規模の大きな病院の形成外科なら技術的に可能です。美容外科ク リニックで実施している可能性がありますが、手術時間が長いので、安全に全身麻酔がかけられ、入院でき る施設であることが必要になります。

手術の合併症としては、皮下に血腫(けっしゅ)がたまることがありますが、管を入れて除去すればほと んどが治ります。傷跡は半年を過ぎると目立たなくなるものの、細い線は残ります。手術後に再び太ってし まっても、皮はその分また伸びるので、問題は起きないといいます。

関係医療機関

杏林大形成外科

体の形を整える脂肪吸引手術のリスク

体への負担が大きい脂肪吸引手術

脂肪吸引は、おなかや太ももなどの皮下脂肪を取りたい場合に行います。まず、止血剤と生理食塩 水が入った液体を吸引する部分に注射などで注入して脂肪を膨らませます。その後、皮膚を5ミリほど切っ て、直径2~3ミリの管を挿入します。管の先端にある穴の縁は刃物のような構造になっており、前後に動 かすと、脂肪組織が切断されます。切断された組織は管の穴から吸引されます。脂肪を破壊する作用がある 超音波を外から当てて、挿入した管で吸引する方法もあります。

表面の傷口は小さく、皮膚の傷跡はほとんど残りませんが、内部には広範囲に傷ができるので、体への負 担は大きいです。米国では、1994~98年に実施された約50万件の脂肪吸引手術のうち、0・019 %の95人が死亡したという報告があります。

脂肪吸引手術の死亡原因

死亡の原因は、吸引中に脂肪組織の中を走っている静脈が傷つくなどして、血の塊(血栓)ができ 、血流にのって肺へ流れて肺動脈が詰まる「肺塞栓」や、吸引部分の脂肪が溶けて傷ついた静脈に入って血 が固まり、同じように肺に到達して詰まる「脂肪塞栓」などが多いです。特に太ももの場合は、手術後に吸 引部分が腫れて太ももの静脈を圧迫し、足に血栓ができて肺塞栓を起こすことがあります。

おなかの脂肪の吸引では、誤って管が腹壁を貫いて腸管を傷つけてしまい、腸から消化液や便がしみ出し て腹膜炎を起こして死亡することもあります。その他、麻酔事故で亡くなることもあります。

杏林大(東京都三鷹市)形成外科教授で、脂肪吸引を含む美容外科も手がける波利井清紀さんによります と、こうした危険を回避するには、大量の脂肪を吸引しないこと、麻酔科医がおり、手術後の管理がきちん とした施設を選ぶことが重要だといいます。

例えば、二の腕の脂肪を数百cc吸引する程度なら、外来で局所麻酔を受け、その日に帰ってもあまり問 題は起きません。しかし、おなかや太ももの脂肪を2000cc程度吸引するなら、全身麻酔が必要で1日 は入院することが望ましいです。

肺塞栓や脂肪塞栓は、手術後ほとんどが24時間以内に起きるからです。息苦しいなどの症状が出たら、 すぐに酸素を吸入し、血栓を溶かす薬を点滴します。腹膜炎は、手術後2日以内に起きます。おなかが痛ん だり、熱が出たりしたらすぐに医療機関を受診してください。消化器外科で開腹して、内部を洗浄する手術 を受けます。

先の米国のデータでは、死亡した95人のうち約8割は、その日のうちに帰宅したケースでした。また、 肺塞栓や脂肪塞栓は、吸引する脂肪の量が多いほど起きやすいです。

波利井さんは「安全に吸引できるのは、せいぜい2000ccが限度」と話しています。手術を受けても 体重はほとんど減らないわけで、やせることが目的なら意味がありません。杏林大では、体全体は太ってい ないが、二の腕、太もも、おなかなどに部分的に脂肪がついた人にこの手術を行っています。

脂肪吸引は保険適用外

脂肪吸引は保険がきかない自費診療です。「手術後の管理も含めてきちんと行えば、場所や吸引量 の違いもありますが、数十万~百万円のコストがかかる手術です。極端に安い美容外科クリニックでは受け ない方が無難」と波利井さんは話しています。

脂肪吸引を受けるなら、やせるためではないという手術の目的と、危険をよく知り、施設選びにも十分配 慮してください。

関係医療機関

杏林大形成外科

重症熱傷の再生医療「自家培養表皮」

患者自身の皮膚を培養して増やす再生医療

表皮より深い真皮まで損傷が達するやけどが、小児の場合なら全体表面積の15%、成人なら30 %以上になると「重症熱傷」とされます。外界から体を守る皮膚が失われると細菌感染し、敗血症を起こす 危険を招きます。

重症熱傷による死亡者は、年間1000人以上とみられています。聖マリアンナ医科大学(川崎市宮前区) 形成外科教授の熊谷憲夫さんによりますと、治療では、患者自身の正常な皮膚をはがし、患部に植える皮膚 移植が必要になります。

しかし、広範囲のやけどですと、十分な皮膚を確保するのが難しくなります。亡くなった人から提供され た皮膚を冷凍保存しておくスキンバンクがあり、解凍して移植する治療もあります。他人の皮膚なので、い ずれはがれてしまうため、自分の皮膚が再生するまでのとりあえずの治療になります。

こうした問題を解消するために、患者自身の皮膚を培養して増やす再生医療が研究レベルで行われてきま した。皮膚が、体の細胞の中で再生能力が高い特徴を生かそうというものです。そして2009年1月、愛 知県のバイオベンチャー企業「ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)」が開発した培養表 皮が、重症のやけどに対して保険適用されました。

保険適用される培養表皮

病院から連絡を受けると、同社の社員が駆けつけ、患者から切り取られた切手大ほどの皮膚を持ち 帰り培養します。約3週間で1000倍以上の面積に増えます。それを縦10センチ、横8センチのシート 状に加工して、移植に使います。

自分の細胞を使った培養表皮は、はがれることなく、自分の皮膚と一体化します。患者さんは培養にかか る3週間は、スキンバンクから提供を受けた皮膚などで患部を覆い細菌感染を防ぎます。

1枚のシートは30万6000円と高価ですが、高額療養費制度の対象になり、患者さんの負担は、所得 によって異なりますが、月額8万円強ですみます。熊谷さんは「培養にかかる時間が短縮できれば、もっと 多くの人の命が救えます」と話しています。

培養表皮を保険で使える病院は、重症熱傷を治療できる基準を満たし、届け出る必要があります。全国に は聖マリアンナ医科大学や愛知医科大学のほか、千葉県救急医療センター(千葉市)など約100施設ありま す。

関係医療機関

聖マリアンナ医科大学病院

愛知医科大学病院

千葉県救急医療センター

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