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脂肪使った新しい「乳房再建法」

脂肪使った新しい「乳房再建法」

おなかの脂肪を使った乳房再建法

おなかの脂肪は、腹筋を貫く直径1ミリほどの血管が脂肪層で細かく枝分かれして、酸素や養分を隅々まで行き渡らせています。この血管を中心に脂肪層を切り取り、胸の血管に縫い合わせることで、生きたままの脂肪を移植できます。

筋肉を使った従来の手術では、腹筋が切断されるため、人によっては起き上がれない、排便時にいきめないなど日常生活に支障が出ることもあります。脂肪を使う手術なら、腹筋を温存できるうえ、再建した乳房も柔らかく自然な感じになります。ごく細い血管でも縫える技術が進歩したことで、この治療が可能になりました。

手術ではまず、下腹部に紡錘形に切り込みを入れ、脂肪を血管ごと取り出し、胸の血管に縫い合わせます。

その後、全身麻酔をかけたまま、患者の上体を起こし、座った姿勢で乳房の形を整えます。形成外科助教授の武石明精さんは「いったん作ったら、左右の乳房のバランスを何度も確認することが必要です」と話しています。平均の手術時間6~7時間のうち、2~3時間はこの作業に費やします。

手術後は、5日から1週間程度、ベッド上で安静に過ごします。平均2週間で退院できます。乳がん自体の手術と同時に乳房再建ができますし、手術後、時間がたってからでも再建ができます。保険も適用されます。


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脂肪を使った乳房再建法のリスク

ただし、筋肉を使う場合に比べ、縫い合わせる血管が細いため、手術後に血管が詰まり、再建した乳房が壊死(えし)する確率が高まるとの指摘もあります。武石さんによると、血管が詰まる確率は2~3%。このうち約半数は再手術で詰まりを取り除くことができるといいます。乳房再建を手がける医師の間でも個人差がありますので、これまでの経験数と、合併症が起きた数を尋ねてみてください。

「幹細胞」を使った別の方法

この方法とは別に、最近、おなかの脂肪を吸引し、脂肪に含まれる「幹細胞」を抽出、脂肪細胞と一緒に乳房に注入する新治療が、国内数か所の医療機関で試験的に行われています。「幹細胞」は様々な細胞の元になる細胞で、脂肪細胞と同時に注入すると、生着率を高めるのではないかと考えられています。

福岡県の九州中央病院で、臨床研究として2006年に始まりました。横浜市のセルポートクリニック横浜では、東大形成外科と共同開発した手法で、自費診療で実施しています。院長の佐藤克二郎さんは「乳房温存手術や再建手術を受けた乳房の微妙な形の修正ができる場合もあるので、相談してみてください」と話しています。

ただし、脂肪の幹細胞移植は、世界的にも例数が少なく、長期的な成績は未知数です。

乳房再建は、シリコーンを使う方法には保険がきかないなど費用やかかる時間も様々です。体形によって向き不向きもありますので、自分に合った方法を選ぶ必要があります。


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関係医療機関

蘇春堂形成外科(札幌市)  電話 011-222-7681

東京大形成外科

東京慈恵医大形成外科

横浜市立大市民総合医療センター

大阪大形成外科

福岡大形成外科

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