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肺の最新治療法


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慢性閉塞性肺疾患(COPD)の薬物療法と酸素療法

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の原因

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の原因は、長期にわたる粉塵の吸引や喫煙などです。慢性閉塞性肺疾患(COPD)の初期の症状は咳や痰がでて、一定の期間を経て急速に進行して肺胞の破壊や気管支粘液腺の肥大が起き、最後には呼吸不全や肺炎を起こし死に至ります。

気管支を広げる薬物療法

壊れた肺胞は治したり進行を止めたりするこはできませんが、息苦しさは薬物療法で、症状を軽くすることができます。息苦しさの原因は、気管支が炎症をおこして、気管が狭くなっているからです。この狭くなった気管を、薬物で広げることができるのです。

この気管拡張薬には、気管を広げる神経に作用する抗コリン薬、気管の筋肉に作用するベータ2刺激薬(β2刺激薬)、昔か使われているメチルキサンチン(テオフィリン)の三種類があります。

抗コリン薬は吸入薬で、最も効果が高いとされています。効果が数時間の短時間作用型と、半日以上効果があり長時間作用型がります。軽症の場合短時間作用型を使い、重症の人は長時間作用型を定期的に使います。

長時間作用型の抗コリン薬(チオトロビウム)の作用時間は24時間で、1日1回の吸入で済みますが、緑内障や前立腺肥大を悪化させる副作用がありますので、医師と良く相談してください。

ベータ2刺激薬(β2刺激薬)は息苦しさを和らげる即効性がありますが、肺気腫への効果は個人差があります。

メチルキサンチン(テオフィリン)は飲み薬ですが、他の2剤と比べて有効性に関するデータは少ないです。

重症の場合は酸素療法

慢性閉塞性肺疾患の症状が進み重症になった場合は、鼻から通したチューブで、肺に直接酸素を送りこむ酸素療法があります。

関係医療機関 順天堂大学病院

強皮症による間質性肺炎の治療にシクロホスファミド点滴

強皮症による合併症「間質性肺炎」

強皮症は、リウマチのように体のあちこちの組織に炎症が起きる膠原病(こうげんびょう)の一つで、皮 膚のほか肺、消化器、腎臓などの組織が硬くなります。原因は不明で、25-50歳前後の女性に多く、患 者は全国で2万人以上とみられています。

発病すると、肺の細かな肺胞を仕切る壁(間質)が炎症を起こす、間質性肺炎を伴うことが多く、進行す ると肺が硬くなって呼吸機能が失われます。強皮症による死因の第一位を占める、最も重大な合併症です。 しかし、決め手になる治療法がありませんでした。

免疫抑制剤シクロホスファミド(商品名エンドキサン)の点滴治療

膠原病には、本来は体を守る免疫が、自分の体の組織を攻撃する異常が関係しているとみられ、さまざま な免疫抑制剤が試されてきました。

シクロホスファミド(商品名エンドキサン)はその一つです。もともと抗がん剤でしたが、1990年代後 半から、強皮症による間質性肺炎に有効との報告が海外で相次ぎました。なぜ効くのか、詳しい仕組みは分 かっていませんが、日本でも専門施設で広がりつつあります。

強皮症に関する厚生労働省研究班長で金沢大皮膚科教授の竹原和彦さんによりますと、この肺炎がある程 度進行すると肺は元に戻らないため、早期に治療することが重要になるそうです。肺のCT画像や呼吸機能、 気管支鏡検査、血液検査などで、間質性肺炎が早期かどうかを見極めます。

同大は、少量のステロイド(副腎皮質ホルモン)の飲み薬に加え、シクロホスファミドを、1か月ごとに大 量に点滴するパルス療法を6か月間、七人の患者に実施しました。このうち5人に、CTの肺炎の影が小さく なったり、呼吸機能が改善したりといった効果が表れ、ステロイド薬も徐々に減らすことができました。

米国では、治療を受けた39人の患者のうち72%が改善したとの研究があり、大規模な臨床試験が進行 中です。しかし、シクロホスファミドには、白血球や血小板の減少、出血性膀胱炎、感染症といった重大な 副作用があります。このため、しっかりした副作用対策ができる専門医に、治療を受けることが必要になり ます。

竹原さんは「症状が体のさまざまな部位に現れる全身性強皮症は、膠原病の中でも特に治療が難しいと言 われてきましたが、病状の改善を図れるようになってきました」と話します。重い合併症の一つで、肺動脈 の血圧が高くなって呼吸困難などが起きる肺高血圧症では、性機能改善薬シルデナフィル(商品名バイアグ ラ)が有効との研究も出ています。

強皮症研究班は2003年3月、強皮症の重症度分類と治療指針試案をまとめました。全身や皮膚の状態 、間質性肺炎、肺高血圧症といった肺症状、消化管や悪性高血圧のような腎障害、心臓や関節の症状、レイ ノー現象などの血管症状というように、臓器別の重症度分類と治療指針案が示されました。進行性の間質性 肺炎へのシクロフォスファミド治療も、指針に盛り込まれています。

膠原病

膠原病には、

  1. 膠原線維という結合組織に異常がある。
  2. 関節や筋肉に、炎症やこわばりがる
  3. 自己免疫に異常がある。

といった特徴を持つ病気の総称です。最も代表的なのは、全国70万人の患者がいるとみられる関節リウ マチで、そのほか、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症、多発性筋炎・皮膚筋炎、シェーグレン症候群 など、混合性結合組織病、抗リン脂質抗体症候群などの病気があります。

関係医療機関 金沢大病院

肺がんの治療薬「イレッサ」

肺がんの治療薬「イレッサ」の効果への評価

国際的な臨床試験で延命効果が証明されなかった肺がん治療薬「イレッサ」(一般名・ゲフィチニブ 製 造元・アストラゼネカ)について、厚生労働省の専門家検討会は2005年3月、「東洋人には効果が示唆さ れた」として使用断続を決めました。

「がん細胞を狙い撃ちする」と言われたイレッサは、2002年7月に、大きな期待を集めて日本で承認 されました。がんが小さくなるなど効果が現れる患者がいる一方、重い肺炎による副作用死が続出しました 。

「夢の新薬」か「危険な薬」か、評価が分かれる中、日本を除く海外28か国・約1700人の患者を対 象に行った臨床試験で、製薬会社は2004年12月、イレッサの延命効果が認められなかったことを明ら かにしました。

しかし、厚生労働省の検討会はデーターを再分析して、「東洋人に限ると延命効果が示唆される」と結論 しました。これを受けて厚生労働省は使用断続を決定して、日本肺癌学会が作った、新たなイレッサ使用指 針を参考にする旨、医薬品の添付文章に記載するように、指示しました。

指針は、(1)非小細胞肺がんの一種・腺がん(2)女性(3)非喫煙者(4)日本人または東洋人(5 )がんの増殖と関連があるEGFR(上皮因子受容体)の遺伝子に異変がある、これらの患者は薬の効果が 得られやすいとして、投与を推奨しています。

肺がんの治療薬「イレッサ」の使用方法

厚生労働省の使用断続を決定に対し、薬の作用に詳しい医薬品・治療研究会代表の医師、別府宏圀さんは 「試験結果から一部だけを抜き出して『東洋人に延命効果』というのは、解析方法として信頼度が低い。そ もそも日本人への延命効果は分かっていないのに、日本人なら誰でもが服用できることになり、有効で安全 に薬を使用できる患者の絞込みに、なっていない。」と指摘しています。

しかし現時点では、既にこの薬を服用し、効果が表れた患者は、副作用に注意しながら服用を続けてよい と考えられています。毎日1錠を原則として効果がある限り飲み続けます。

重い肺炎の副作用は服用を始めて1か月以内に起きる危険性が高いですが、4か月目に急に発症した例も あります。息切れ、呼吸困難、せき、発熱などの症状が出たら、すぐに主治医に連絡する必要があります。

一方、新たにこの薬を使う場合、判断は簡単ではありません。注目されるのが、薬の効果を予測する遺伝 子検査です。

イレッサは、肺がん細胞の表面にあるEGFR(上皮成長因子受容体)と呼ばれるたんぱく質に作用し、 がんの増殖を抑えるとされています。この受容体に遺伝子変異があると、薬が効きやすいとの研究がありま す。日本人、特に女性や、非小細胞肺がんの一種、腺がんの患者は、遺伝子変異の割合が高いとされていま す。この検査で事前に効果を判定しようというわけです。ただ、まだ研究段階の検査であるうえ、実施でき る病院も限られています。

イレッサと遺伝子検査

東大医科学研究所の教授・中村祐輔さんらは、がん細胞の増殖にかかわる12種類の遺伝子を調べること で、イレッサの効き目を投与前に見分ける方法を開発しました。同研究所付属病院で2004年9月から、 この方法で診断する臨床研究を始めました。中村教授は「患者1人1人に合わせて治療法を選ぶことができ れば、薬の効果を最大限に生かせる」と話しています。

効果や副作用の仕組み、日本人での延命効果など、この薬には未解明な部分が多です。それを十分に理解 した上で治療法を選択してください。

関係医療機関 東大医科学研究所付属病院

肺がんの胸腔鏡(きょうくうきょう)手術

一般的な手術と胸腔鏡手術

肺がんの一般的な手術では、横向きに寝た患者の肩甲骨に沿って、背中側から胸の側面まで40センチほ ど切開し、肋骨と肋骨の間を器械で押し広げて手術します。この方法が肺がんの標準治療として確立されて いる反面、胸の筋肉を切断するため、治療後の痛みが長く続き、患者への負担が大きいです。

これに対し、体を大きく切らずに済む方法が胸腔鏡手術です。体の側面に2-3センチの穴を4、5か所 開け、小型カメラ(胸腔鏡)や自動縫合器などの器具を差し込み、カメラが映し出した内部の映像をモニター で見ながら、器具を操作します。

胸部を切る手術は、胃や腸など腹部の手術に比べても、手術後の痛みが強いです。胸腔鏡手術は、この痛 みを著しく軽減できます。衰弱して通常の手術では体力的に耐えられない方や、高齢の患者でも行える点も 長所です。

慈恵医大外科教授の森川利昭さんによると、平均的な手術時間は3時間余で、開胸手術より約1割長いで すが、手術後の入院日数は約1週間と従来の半分程度に短縮されるそうです。

胸腔鏡補助手術

「胸腔鏡手」は、術患部を肉眼で直接見ることができないなどの制約から、外科医には高い技術が求めら れます。肺がん手術ではとくに、肺と心臓を結ぶ肺動脈などを誤って傷っけてしまうと大出血を招き、命に かかわります。胸を大きく切る手術では迅速にできる止血措置も、胸腔鏡手術では難しいです。

このため、完全に胸腔鏡だけで手術するのではなく、胸腔鏡のモニター映像は補助的に用いながら、通常 の手術より小さい10センチ足らずの切開口から肉眼でも見ながら手術する「胸腔鏡補助手術」も広く行わ れています。

胸腔鏡手術は1992年、原因不明で肺に穴が開く気胸などの手術から始まり、次第に肺がんのような難 しい手術にも使われるようになりました。森川さんは2000例を超える胸腔鏡手術の経験を持ち、10年 前から肺がん手術にも本格的に導入しました。

一般的には、リンパ節転移のない早期(1期)の肺がんが胸腔鏡手術の対象となり、5年後の生存率は、通 常の開胸手術の場合と変わらない成績をあげています。森川さんの場合は「それより進んだ肺がんでも、可 能なら胸腔鏡で行う」方針だそうです。

胸腔鏡など内視鏡を使った手術は高度な技術が求められるだけに、消化器外科や婦人科、泌尿器科の学会 は、手術の実技ビデオ審査による技術認定を始めました。しかし、肺がん胸腔鏡手術などの呼吸器外科分野 では、技術認定はまだ実施されていません。医師によって、手術の方法も少しずつ異なります。手術経験数 や長所、短所など、よく説明を聞いたうえで治療を受けてください。

肺がんの治療

肺がんは喫煙の影響が大きく、年間死者数は57000人と胃がんを抜いてトツプになりました。患者の 85%は「非小細胞肺がん」というタイプで、早期なら手術などによって根治が期待できますが、「小細胞肺 がん」という進行が早く悪性のタイプもあります。リンパ節転移が広がって進行した場合には、シスプラチ ンなどの抗がん剤と放射線を組み合わせた治療が中心になります。

また、がんが肺にとどまって手術での根治が期待できる1期のがんに対して、放射線をピンポイントで照 射する治療が2005年に保険適用されました。体力的に手術が難しい高齢患者らへの体に負担の少ない治 療として期待されています。

関係医療機関 慈恵医大病院

早期肺がんの放射線治療「動体追跡照射」

早期肺がんの放射線治療

早期肺がんの放射線治療では、「定位照射」と呼ばれる方法が、2004年から保険適用になりました。 治療台に横たわる患者の周りを、治療装置が回転しながら、様々な角度から照射し、がん病巣に放射線を集 中させる方法で「3次元照射」「ピンポイント照射」ともよばれていて、手術と同等の治療成績とされてい ます。

ただ、肺がんなどは、呼吸とともに位置が動くため、照射の狙いがずれる恐れがあります。そのため、一 般には治療直前にコンピューター断層撮影法(CT)などで位置を確認し、患者が呼吸を止めた状態で照射 する方法が多いです。

ズレを極力抑えようと、患者の体を器具で固定する方法もあります。呼吸による病巣の移動対策は、病院 ごとに、さまざまな工夫がされています。

北海道大病院が用いる方法は、治療台の周りにX線透視装置を設置し、まさに治療の最中に動くがんの位 置を即時に把握します。

同大学教授の白土博樹さんによると、治療前にがんの位置を確認する方法では

1.治療に移るまでの間に、患者の体が微妙に動く

2.呼吸の止め方次第でがんが狙った位置からずれる

などの恐れが、あるそうです。

「動体追跡照射」は、こうした弱点を克服しようと考案され、同病院は1999年から導入しています。

定位照射を確実に行う「動体追跡照射」

初めにがん付近に直径2ミリの金の球(マーカー)を挿入する。肺がんの場合は口から、気管支ファイバ ーという管を差し入れ、がん近くの気管支の細い所にマーカーを置いてきます。その後、CT検査で、がん とマーカーの位置をコンピューターに記録します。微妙な角度の誤差も見逃さないよう、通常、挿入するマ ーカーは3、4個で、挿入にかかる時間は20~30分といいます。

治療の際は、患者が治療台に乗った状態で、2方向からX線透視装置を用いて0.03秒ごとに患部を撮 影します。2枚の画像に映るマーカーの位置から、コンピューター計算で3次元の位置をとらえ、追跡しま す。

マーカーの位置があらかじめ計画された照準にある瞬間だけ、放射線を照射します。照準に捕らえてから 照射までの時間差はわずか0.05秒で、「臓器の動きに遅れることはありません」(白土さん)といいま す。照射装置は治療台の周りを回転し、さまざまな角度から照準へ放射線を集中させます。

治療は1回10~40分で、4回行います。肺の下部など、動きの大きい位置にがんがある場合に治療時 間が長くなります。

白土さんによると、この治療の対象となる肺がんは直径5センチ以下の早期がんで、転移のないタイプで す。同病院では、動体追跡を、定位照射だけでなく、がんの形に合わせた照射ができる「強度変調放射線治 療」(IMRT)にも応用し、前立腺がんの治療にも使います。

白土さんは「この動体追跡照射で前立腺も、治療中にかなり動くことが確認できました。放射線による直 腸炎、ぼうこう炎などの副作用も、大幅に減らせるようになりました」と語っています。

関係医療機関

北海道大病院

高山病の予防薬アセタゾラミド(商品名・ダイアモックス)

高山病

標高が高い場所では、気圧が下がります。富士山頂では、平地の3分の2しかありません。高くなった分 、酸素が薄くなり、頭痛、吐き気、全身の疲労感など2日酔いに似た「山酔い」を起こします、これが高山 病です。

一般に3000メートルの高さで10%の人が、4000メートルで50%、4500メートルで60% が山酔いになるといわれています。

従来、高地での特殊な病気とみなされ、米国の医学教科書は「3000メートル以上で発症する」と定義 していました。しかし、比較的気軽な登山でも動けなくなる人が出てきたことから、最近は「2000メー トル以上」に直されています。

個人差もありますが、年齢とともに低酸素状態への身体の適応能力が落ちるため、80歳以上では150 0メートルから注意が必要といいます。重症化すると肺や脳に水がたまる「高所肺水腫」、「高所脳浮腫」 になり、放置すれば死に至る危険もあります。重症化するのは1%足らずですが、油断は禁物です。

中高年の登山やトレッキングは世界的なブームです。文部科学省登山研修所によれば、登山人口は約47 5万人で、40歳以上が6―7割を占めると推計されています。「経験が浅い人が高山病になりやすいわけ ではなく、誰にも危険があります」と、日本旅行医学会専務理事を務める医師の篠塚規(しのずかただし) さんは、警告しています。

予防薬のアセタゾラミド(商品名・ダイアモックス)

予防法として、海外で広く使われている利尿作用のある薬アセタゾラミドが国内でも注目されてきました 。この薬は通常、緑内障やてんかんなどの治療に使われています。脳血管を拡張する作用があることから、 高山病には脳への血流量を増やすことで、酸素不足を防止する効果が期待できます。

高地滞在の前日から3日目まで朝夕に半錠(125ミリ・グラム)づつ飲みます。高山病予防薬としては 、保険は適用されず、処方には約3千―5千円かかります。副作用として指先がしびれることがありますが 、比較的安全な薬とされています。持病のある人は、医師と相談して服用を決めたほうが良いです。

ただし「アセタゾラミドが高山病予防薬として効果があることは、医師も知識を持っていないことが多い です」と篠塚さんは指摘します。日本旅行医学会ではアセタゾラミドを処方する病院リストを、ホームペー ジで公開しています。

高山病の治療法

もし運悪く、高山になってしまったら、低地に移動することが1番良いです。また治療薬としてアセタゾ ラミドを活用する方法もあり、1回1錠(250ミリ・グラム)を服用するのが一般的です。

携帯用酸素発生器で酸素を数分間吸入すれば、改善することが多いです。大きな風船の中に患者を入れ空 気圧を高める「プレッシャーバッグ」などで対処する手もあります。

篠塚さんは「最近人気の南米やネパール、中国・雲南省のツアーでは飛行機やバスで一気に高地に到達し ます。きちんと予防して、後悔のない旅をしてほしい」と呼びかけています。

関連サイト

日本旅行医学会

自然気胸の新しい治療法「カバーリング法」

自然気胸の原因と症状

自然気胸は、10代後半から20代の若い男性に多く、手術を受ける患者は毎年約1万人にのぼります。 肺で酸素と二酸化炭素の交換を行う肺胞の一部が壊れて融合し、風船のように膨らんだ「肺のう胞」(ブラ )の破裂がきっかけで起こります。空気が肺の外側の胸腔に漏れて肺が縮み、胸や背中の痛み、息苦しさな どが現れます。

ブラの発生原因は、まだ解明されていませんが、背が高くやせ形で、胸板の薄い男性に多いことから「成 長期に、肺が十分に成長していないことが原因ではないか」と日産厚生会玉川病院(東京都世田谷区)の呼 吸器外科部長、栗原正利さんはみています。

自然気胸の従来の治療法

軽度の気胸なら、胸に小さな穴を開けて胸腔の空気を抜き、安静にして肺の穴がふさがるのを待つことも できます。しかし、破裂しやすい部分がそのまま残るため、再発することが多いいです。

根治するには、ブラとその周囲の組織を切除して、穴を縫い合わせる手術が必要です。胸腔鏡手術は、カ メラや切除器具を挿入する直径約1センチの穴を、胸や背中に2~3か所開けて行います。

従来の手術は、胸を10センチ以上切開しましたが、術後の痛みが強く、10日以上の入院が必要でした 。胸腔鏡手術では、痛みが大幅に軽減され、数日から1週間で退院できることから、現在は手術の主流にな っています。

ところが胸腔鏡手術には、再発率が上がるという弱点がありました。

従来の開胸手術では、肺を包み込む胸膜などを大きく傷つけるため、ブラを切除した部分と、肺の外側の 胸壁が術後に癒着してしまいます。将来、心臓や肺、食道の手術が必要な時に、やりにくくなる問題が生じ ます。

一方でブラが再発しやすい部分も癒着するため、結果的にブラの発生が抑えられる利点があり、再発率は 2%程度と低かったです。

ところが、傷が小さい胸腔鏡手術では、癒着が起こりにくく、切除した組織の周囲から新たなブラが発生 しやすく、再発率は10~20%に上ります。

再発を防ぐ「カバーリング法」

そこで栗原さんが考案したのが、ブラを切除した肺の表面に、セルロース素材の網を張るカバーリング法 です。名刺2枚ほどの大きさの網を、肺の状態に応じて複数枚使います。網は約1か月で吸収されて肺の表 面が厚くなり、ブラの再発が抑えられます。

カバーリング法により、年間300件以上の胸腔鏡手術を行う同病院の再発率は約3%となり、開胸手術 の数字に近づきました。他の医療機関でも、同様の再発防止の試みが始まっています。

喫煙が原因の肺気腫(きしゅ)を伴う高齢者の気胸でも、カバーリング法の効果は高いです。しかし、胸 腔鏡手術は医師の技術差が大きく、カバーリング法で使う網の素材が異なることもあるため、再発率などを 必ず確認したうえで病院を選択してください。

関係医療機関

日産厚生会玉川病院

肺炎予防の肺炎球菌ワクチン

肺炎の原因

肺炎は風邪をこじらせて発症する場合が多く、年間の死亡数は約8万人以上(2002年の厚生労働省調 べ)にのぼります。がん、心臓病、脳卒中に次ぐ死因の第4位です。その大半を占める高齢者は、インフルエ ンザにかかると肺炎を併発しやすいのです。

寝たきりの人は、食べ物を誤飲して肺炎を起こしやすいですが、健康な人でも細薗、マイコプラズマ、ク ラミジア、ウイルスなど様々な病原体によって肺炎を起こします。その中で最も多い肺炎球菌による患者の 8割に、ワクチンが効きます。

アメリカの研究では、肺炎球菌ワクチンで、入院が必要な重症者を27%減らすことができます。気管支 ぜんそくなど慢性肺疾患の高齢者にインフルエンザと肺炎球菌の両ワクチンを使うと、入院を63%、死亡 は81%、それぞれ減少させるとの報告もあります。

肺炎球菌ワクチン

肺炎球菌ワクチン研究会代表世話人の松本慶蔵さん(長崎大名誉教授)の説明によりますと、「ワクチンの 効く仕組みは、肺炎球菌は特殊な膜(きょう膜)に覆われているため、体内に侵入してきた細菌を取り込んで 退治する貧食細胞(マクロファージ)では、殺菌されません。しかし、ワクチンを接種すると、きょう膜を攻 撃対象として認識する抗体ができ、貧食細胞は肺炎球菌の周りに取りついて、菌を殺すことができる」との ことです。

特にワクチン接種が勧められるのは、高齢者のほか

●呼吸器・心臓の慢性病

●糖尿病

●腎・脾(ひ)臓機能不全、肝臓障害

などの患者さんです。

肺炎球菌ワクチンは、一般のワクチン注射と同じ要領で行い、どの季節に受けても良いそうです。毎年、 接種しなくてはならないインフルエンザワクチンと違い、1回の注射で5年以上、効果が続きます。副作用 は接種した方の数%に出る発熱、注射部位の痛みなどで、ほかのワクチンと同程度で、おおむね軽くすみま す。

自治体による肺炎球菌ワクチンの助成

世界保健機関(WHO)が肺炎球菌ワクチンを奨励するなど、国際的に定着しています。アメリカでは、65 歳以上の人の45%が接種しています。

一方、日本では、世界的に使用されているワクチン「ニューモバックス」(商品名)が発売されて20年以 上たちますが、脾臓摘出患者以外、保険が適用されません。ワクチンを知らない医師も多く、接種を受けた 高齢者は全体の0.5%に過ぎません。しかし近年、抗生物質の効かない耐性菌が増え、肺炎に最も有効な 予防法として、ようやく注目され出しました。

全国に先駆け北海道の瀬棚町は2001年、高齢者に接種費用を一部助成しました。65歳以上の58% に当たる460人が、接種を済ませました。

瀬棚町は風カ発電をするほど風が強く、冬は日中でも氷点下10度という日も珍しくありません。町国保 医科診療所長の村上智彦さんは「お年寄りは冬場、肺炎を恐れて家に閉じこもりがちでしたが、接種後、活 発に外出するようになりました」と効果を強調しています。

全国約9700の医療機関で接種が可能ですが、全額自己負担の自由診療のため、医療機関によって60 00円から9000円かかります。ただし、ワクチンの承認時、再接種の副作用や接種間隔が不明だったた め、「再接種不可」とされています。アメリカでも当初同様の条件が付いきましたが、その後、4年以上間 隔をあければ安全と確認され、再接種できるようになっています。

助成金の交付は、各自治体の保険課、保険センター等にお問い合わせください。


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