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自然気胸の新しい治療法「カバーリング法」

自然気胸の新しい治療法「カバーリング法」

自然気胸の原因と症状

自然気胸は、10代後半から20代の若い男性に多く、手術を受ける患者は毎年約1万人にのぼります。肺で酸素と二酸化炭素の交換を行う肺胞の一部が壊れて融合し、風船のように膨らんだ「肺のう胞」(ブラ)の破裂がきっかけで起こります。空気が肺の外側の胸腔に漏れて肺が縮み、胸や背中の痛み、息苦しさなどが現れます。

ブラの発生原因は、まだ解明されていませんが、背が高くやせ形で、胸板の薄い男性に多いことから「成長期に、肺が十分に成長していないことが原因ではないか」と日産厚生会玉川病院(東京都世田谷区)の呼吸器外科部長、栗原正利さんはみています。


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自然気胸の従来の治療法

軽度の気胸なら、胸に小さな穴を開けて胸腔の空気を抜き、安静にして肺の穴がふさがるのを待つこともできます。しかし、破裂しやすい部分がそのまま残るため、再発することが多いいです。

根治するには、ブラとその周囲の組織を切除して、穴を縫い合わせる手術が必要です。胸腔鏡手術は、カメラや切除器具を挿入する直径約1センチの穴を、胸や背中に2~3か所開けて行います。

従来の手術は、胸を10センチ以上切開しましたが、術後の痛みが強く、10日以上の入院が必要でした。胸腔鏡手術では、痛みが大幅に軽減され、数日から1週間で退院できることから、現在は手術の主流になっています。

ところが胸腔鏡手術には、再発率が上がるという弱点がありました。

従来の開胸手術では、肺を包み込む胸膜などを大きく傷つけるため、ブラを切除した部分と、肺の外側の胸壁が術後に癒着してしまいます。将来、心臓や肺、食道の手術が必要な時に、やりにくくなる問題が生じます。

一方でブラが再発しやすい部分も癒着するため、結果的にブラの発生が抑えられる利点があり、再発率は2%程度と低かったです。

ところが、傷が小さい胸腔鏡手術では、癒着が起こりにくく、切除した組織の周囲から新たなブラが発生しやすく、再発率は10~20%に上ります。

再発を防ぐ「カバーリング法」

そこで栗原さんが考案したのが、ブラを切除した肺の表面に、セルロース素材の網を張るカバーリング法です。名刺2枚ほどの大きさの網を、肺の状態に応じて複数枚使います。網は約1か月で吸収されて肺の表面が厚くなり、ブラの再発が抑えられます。

カバーリング法により、年間300件以上の胸腔鏡手術を行う同病院の再発率は約3%となり、開胸手術の数字に近づきました。他の医療機関でも、同様の再発防止の試みが始まっています。

喫煙が原因の肺気腫(きしゅ)を伴う高齢者の気胸でも、カバーリング法の効果は高いです。しかし、胸腔鏡手術は医師の技術差が大きく、カバーリング法で使う網の素材が異なることもあるため、再発率などを必ず確認したうえで病院を選択してください。


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関係医療機関

日産厚生会玉川病院

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