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早期肺がんの放射線治療「動体追跡照射」

早期肺がんの放射線治療「動体追跡照射」

早期肺がんの放射線治療

早期肺がんの放射線治療では、「定位照射」と呼ばれる方法が、2004年から保険適用になりました。治療台に横たわる患者の周りを、治療装置が回転しながら、様々な角度から照射し、がん病巣に放射線を集中させる方法で「3次元照射」「ピンポイント照射」ともよばれていて、手術と同等の治療成績とされています。

ただ、肺がんなどは、呼吸とともに位置が動くため、照射の狙いがずれる恐れがあります。そのため、一般には治療直前にコンピューター断層撮影法(CT)などで位置を確認し、患者が呼吸を止めた状態で照射する方法が多いです。

ズレを極力抑えようと、患者の体を器具で固定する方法もあります。呼吸による病巣の移動対策は、病院ごとに、さまざまな工夫がされています。

北海道大病院が用いる方法は、治療台の周りにX線透視装置を設置し、まさに治療の最中に動くがんの位置を即時に把握します。

同大学教授の白土博樹さんによると、治療前にがんの位置を確認する方法では

1.治療に移るまでの間に、患者の体が微妙に動く

2.呼吸の止め方次第でがんが狙った位置からずれる

などの恐れが、あるそうです。

「動体追跡照射」は、こうした弱点を克服しようと考案され、同病院は1999年から導入しています。


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定位照射を確実に行う「動体追跡照射」

初めにがん付近に直径2ミリの金の球(マーカー)を挿入する。肺がんの場合は口から、気管支ファイバーという管を差し入れ、がん近くの気管支の細い所にマーカーを置いてきます。その後、CT検査で、がんとマーカーの位置をコンピューターに記録します。微妙な角度の誤差も見逃さないよう、通常、挿入するマーカーは3、4個で、挿入にかかる時間は20~30分といいます。

治療の際は、患者が治療台に乗った状態で、2方向からX線透視装置を用いて0.03秒ごとに患部を撮影します。2枚の画像に映るマーカーの位置から、コンピューター計算で3次元の位置をとらえ、追跡します。

マーカーの位置があらかじめ計画された照準にある瞬間だけ、放射線を照射します。照準に捕らえてから照射までの時間差はわずか0.05秒で、「臓器の動きに遅れることはありません」(白土さん)といいます。照射装置は治療台の周りを回転し、さまざまな角度から照準へ放射線を集中させます。

治療は1回10~40分で、4回行います。肺の下部など、動きの大きい位置にがんがある場合に治療時間が長くなります。

白土さんによると、この治療の対象となる肺がんは直径5センチ以下の早期がんで、転移のないタイプです。同病院では、動体追跡を、定位照射だけでなく、がんの形に合わせた照射ができる「強度変調放射線治療」(IMRT)にも応用し、前立腺がんの治療にも使います。

白土さんは「この動体追跡照射で前立腺も、治療中にかなり動くことが確認できました。放射線による直腸炎、ぼうこう炎などの副作用も、大幅に減らせるようになりました」と語っています。


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関係医療機関

北海道大病院

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