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子宮頸がんのHPVワクチン

子宮頸がんのHPVワクチン

子宮頸がん

子宮の頚部にできるもので、子宮がん全体の約65%を占めるほど発生率の高いがんです。

初期は無症状のこともありますが、不正性器出血、おりものがみられます。進行すると出血が持続的になり、おりものも膿性になり悪臭を伴います。さらに進行すると、骨盤の神経が置かされて腰痛が起こったり、膀胱や直腸に広がって排尿困難が生じるようになります。

子宮頸がんの診断は、まず細胞診を行ないます。面貌(めんぼう)などで子宮頚部の細胞を擦り取って、がん細胞の有無を調べます。異常があれば、コルポスコープ(膣拡大鏡)で観察し、頚部の一部を採取して組織を調べます。この段階で、どの程度進行しているかなどがわかります。

出産を希望する人、妊娠中で早期がんの人には、子宮頸部だけを円錐状に切り取って子宮を保存する方法(円錐切除術)が用いられます。


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子宮頸がんの原因

子宮頸がんの原因がヒト・パピローマウイルス(HPV)であることは、ドイツのハラルト・ツアハウゼン博士(2008年ノーベル生理学・医学賞)が1983年に発見しています。

HPVには100種類以上の型があります。発がん性があるのは15種類で、子宮頸部の粘膜組織の奥にある基底細胞に感染すると、「いぼ」ができます。

ほとんどの場合は自然に治癒しますが、まれに、HPVの遺伝子が基底細胞のDNAに組み込まれます。そうなると、細胞分裂が異常になり、がん化してしまいます。

感染からがん発症までに10-30年かかると推定されています。国内では毎年約1万5000人が発症し、約3500人が亡くなっています。

世界では年に約24万人が、このがんのため死亡していて、近年は20-30代の患者さんが増えています。

子宮頸がんワクチンによる予防手段があるため「予防できる唯一のがん」と言われ、有効性は10-20年継続するといわれています。

自治医大さいたま医療センター産婦人科の今野良教授によりますと、「12歳の女児全員が接種すれば、子宮頸がんにかかる人を73・1%減らせ、死亡者も73・2%減ると推計されます」と話しています。

子宮頸がんのHPVワクチン

HPVワクチンは、多くのワクチンとは働き方が異なります。

インフルエンザワクチンなど通常のワクチンは、無毒化したウイルスの一部などを体内に注射し、抗体を作って、免疫システムの中に「記憶」を残します。本物のウイルスが来たとき、感染自体は防げませんが、素早い免疫反応で、重症化を防ぐことができます。

一方、HPVワクチンは、ウイルスの「殻」を注射して、血中に大量の抗体を作ります。抗体は子宮頸部の粘膜組織からしみ出て、外からやってきたウイルスの感染を防ぎます。どのくらいの期間、抗体の量が維持され、効果が続くかは分かっていませんが、政府は、今年度中に接種費用の助成を始める予定です。

HPVの「殻は」、L1、L2という2種類のたんぱく質でできています。現在流通しているHPVワクチンは、患者数の多い16型と18型のL1を利用していますが、L1はウイルスの種類によって異なるため、ほかの型の感染は防げません。

万能型HPVワクチンの開発

理化学研究所の神田忠仁チームリーダーらは、L2に、がんを起こす15種類のHPVに共通する部分があることに注目して、L2の共通部分とL1を合体させた「次世代型ワクチン」を開発しました。すべての種類に効果がある万能型ワクチンになると期待されています。

武田薬品工業は先月、このワクチンの製造準備を始めました。神田さんは「次世代型ワクチンが完成すれば、検診の頻度も減らせます。2013年には臨床試験を始めたい」と話しています。

子宮頸けいがんワクチンの副作用「慢性的な痛み」

子宮頸けいがんワクチンの接種後に慢性的な痛みを訴える患者が出ている問題で、厚生労働省研究班は、 接種時の痛みや思春期のストレスが関与しているのではないかとする見方を、同省の有識者検討会に報告しました。子どもたちを学校生活に戻すため、専門家、親、学校の連携した支援が欠かせません。

子宮頸がんワクチンは2013年4月、予防接種法に基づく定期接種に加えられました。対象は小学校6 年生から高校1年生で、接種後に原因不明の慢性的な痛みや手足の震えが起きる患者が出たため、2013 年6月、厚労省は接種を勧めることを一時的に中断しました。有識者検討会は、この措置を解除すべきか議 論しています。

2013年末、ワクチンとの因果関係の究明と、痛みの治療法の研究を目的とするそれぞれの厚労省研究 班が、半年間にわたる調査結果を有識者検討会に報告しました。

一般に、交通事故などで強い痛みが生じた後、傷が完治しても原因不明の痛みが続くことがあります。二 つの研究班が共通して指摘したのは、子宮頸がんワクチンは接種時の痛みが強く、それが引き金になって慢 性的な痛みが生じた可能性です。

また、日頃ストレスを感じていると、こうした痛みが起きやすいです。女子中学生の3分の1は何らかの、ストレスを感じているという報告もあり、他のワクチンとは違い、多感な思春期の接種も影響しているので はないかとの見方を示しています。

痛みの治療法を探る研究班(代表=牛田享宏たかひろ・愛知医大教授)は、全国11病院での治療結果を 発表しました。痛みが完全に消えた人はいませんでしたが、継続して治療ができた36人中23人(64% )に改善傾向が見られました。

この研究班が行った治療は、他の原因不明の慢性痛の治療と同じでした。問診とリハビリを基本に状態に 応じて痛みを抑える薬を出します。

強い痛みが強い不安を引き起こし、不安がさらに痛みを増強します。まず、患者の話をじっくり聴くこと で不安を減らし、悪循環を断ち切ります。リハビリで体を動かすと「脳内麻薬」と呼ばれるエンドルフィン などが分泌され、痛みを抑える神経を活性化させるといいます。

痛みがある体を動かすには、家族など周囲の理解も重要です。心配のあまり、「どこが痛いの?」「痛い なら動かなくていいよ」などと接していると、子どもはさらに痛みを意識し、症状を長引かせます。

牛田教授は「動かさないだけでも体は変調をきたしてきます。できる範囲で体を動かし、規則正しい生活 を送れるように方向付けていくことが痛みの緩和につながっていきます」と話しています。

患者の中には手足の震えが見られる人もいます。因果関係を探る研究班代表の池田修一・信州大教授は、 脳と手足の神経の活動を調べた結果、脳波は正常なのに手足の神経が過敏に働いていることを発見しました 。

「ワクチンとの関係は不明ですが、自律神経系に障害が起きて震えが生じている可能性があります」と指摘しています。32人の患者を診察、末梢まっしょう血管を広げる薬の投与で歩行障害が治ったケースもあ ります。

治療だけでなく、学校生活の継続への支援も欠かせません。文部科学省の調査では、ワクチン接種後の副 作用で学校生活に支障が生じているのは全国で171人います。うち51人が学校を30日以上も欠席して います。

文科省は2013年9月、こうした生徒に適切な対応をするように教育委員会などに事務連絡を出してい ます。

階段での教職員による介助や保健室で試験を受けられるなど、個別に配慮している学校もありますが、対応は学校によってまちまちです。

首都圏の私立中高一貫校に通っていた少女(16)は、痛みで歩行困難になり、車いすでの登校を希望し ましたが、学校の理解が得られず、やめざるを得なくなりました。

痛みがありながらも、学校に戻ることを目標にしている子どもの希望を奪ってはなりません。専門家、親 、学校が連携し、支援体制を創り上げることが必要になります。


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関係医療機関

自治医大さいたま医療センター産婦人科

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