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下肢静脈瘤の「硬化療法」と「ストリッピング手術」

下肢静脈瘤の「硬化療法」と「ストリッピング手術」

下肢静脈瘤

体の隅々から、二酸化炭素や老廃物を運んでかえる静脈は、ポンプの働きをする心臓から遠いので、血液が滞留しがちです。人間は立って生活しますので、静脈には逆流防止用の弁が何か所も付いていますが、これが壊れ、血液が足にたまるのが静脈瘤です。命にかかわることはありませんが、足のかゆみなどが続き、放置しますと悪化し、皮膚がただれることもあります。

患者には、長時間の立ち仕事を長年続けてきた職人や、妊娠・出産を経験した中年以上の女性などが多いです。

足の静脈血は、歩いたり階段を上ったりすれば、筋肉の働きに助けられて心臓に帰っていきます。足が「第二の心臓」と言われるゆえんです。しかし立ったまま働く人などは、足の血液が滞留しがちで、弁にも負担がかかります。妊娠した女性も、ホルモンの影響などで足の血液が、心臓に戻りにくくなり、弁が故障しやすくなります。

実際、最も逆流が起きやすいのは、足の付け根の内側にある表在静脈の弁です。ここは足の骨近くを流れる深部静脈との合流点で、ひざ下にできる静脈瘤の大部分は、表在静脈の血液を止めることで、治療できます。流れを遮っても、血液は合流部から深部静脈に迂回して流れるので、問題はありません。


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「硬化療法」と「ストリッピング手術」

血管を固めてしまう薬を注射する「硬化療法」もありますが、再発しやすいです。治療には、静脈瘤ができた血管全体を壊れた弁ごと抜き取る「ストリッピング手術」が最も効果的です。ただし全身麻酔を使うため、従来は約一週間の入院が必要でした。

日本医科歯科大血管外科では、この2つの治療法を組み合わせることで、日帰り手術を行っています。太ももの静脈は手術で引く抜きますが、ひざ下には硬化療法を行います。傷口は、足の付け根とひざ下の二か所に約2センチできるだけで、目立ちません。

麻酔の使い方の工夫も、日帰り手術を可能にしました。局所麻酔で、治療が終わると患者は手術室を歩いて出てきます。病院内でしばらく様子を見た上で帰宅できます。長時間の立ち仕事や激しい運動を避ければ、その日から普通に生活できるといいます。

この局所麻酔はTLA(大量低濃度局所浸潤麻酔)といいます。太もも全体に、十分の一の濃度に薄めた麻酔薬を、通常の量の十倍程度つかいます。血管を引く抜く痛みや出血が減り、痛み止めの効果も翌朝まで持続します。

手術時間は40分程度です。手術から約一か月は、血流が滞るのを防ぐため、特殊なストッキングをはいて足を圧迫する必要があります。ストッキング代以外は、すべて保険がききます。

血管内治療

体の負担の少ない日帰り最新治療として、最近、ラジオ波や半導体レーザーを使った「血管内治療」も登場しています。局所麻酔(TLA麻酔)を使い、逆流が起きている静脈にごく細いカテーテルを挿入します。超音波診断装置で血管の形を見ながら、ラジオ波やレーザーの熱で静脈の内部を焼ききり、血液の流れを止めてしまう手術です。

局所麻酔を使い、血管を引き抜くストリッピング手術以上に、傷が小さくて済むのが特長で、手術時間はわずか15分から20分で終わります。

しかし残念ながら、まだ保険がきかないため、一部の医療機関でしか実施していませんが、すでに欧米では主流になりつつあるといいます。

大切なのは正しい診断で、下肢静脈瘤は症状に合わせて、様々な治療を選択できるようになりました。専門の血管外科を受診し、最適な治療法を選んでください。


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関係医療機関 日本医科歯科大血管外科

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