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拡張型心筋症に対する「免疫吸着療法 」「血漿交換療法」

拡張型心筋症に対する「免疫吸着療法 」「血漿交換療法」

「自己抗体」による拡張型心筋症

拡張型心筋症は、心臓の筋肉が薄くなり、血液を送るポンプ機能が低下する難病です。悪化すると、心不全や不整脈などを招きます。患者数は約1万8000人で、どの年代でも発症しますが、比較的男性に多い傾向があります。

原因は複数あるとみられますが、風邪などのウイルス感染で免疫機能に異常が生じ、本来は体を守る抗体が、心臓を異物と誤認して攻撃することが一因と考えられています。このような抗体を「自己抗体」と呼びます。

血圧を下げるβ(ベータ)遮断薬などの投与で、患者の5年生存率は8割近くに高まりました。しかし、薬物治療で目立った効果がない重症者の治療経過は、依然として悪いです。


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自己抗体を取り除く免疫吸着療法

免疫吸着療法は、血液から分離した血漿から、自己抗体をフィルターで取り除く治療法です。運動神経が障害されるギランバレー症候群などの治療で既に行われています。この治療を拡張型心筋症でも保険で受けられるようにするため、2010年2月から北里研究所病院などで臨床試験が始まりました。

拡張型心筋症で大阪在住の46歳女性は、2005年に同病院が臨床試験に先立ち行った研究に参加しました。治療前は「会話や食事だけで心拍が急増し、苦しくなった。絶望して泣くと更に苦しくなるため涙も流せなかった」といいます。

それが治療半年後には、停止の恐れさえあったポンプ機能が正常の下限近くまで回復しました。今も安定し、「夫と会話したり、思い切り笑ったりしても苦しくないのが何よりうれしい」と話します。同病院の研究では、この女性を含む重症者8人中5人のポンプ機能が改善しました。

2010年の臨床試験は18歳以上の重症者約40人が対象です。副作用や、自己抗体の検査値と効果の関係などをみます。入院期間は2週間で、1回2時間の治療を5回受けます。くじ引きで10回行う患者も選び、効果を比較します。

同病院循環器内科副部長の馬場彰泰さんは「最近の研究で、患者の8割から自己抗体が見つかりました。治療効果には個人差がありますが、有効な患者は多いのではないかと思います」と話しています。

子供の拡張型心筋症に対する血漿交換療法

子供の拡張型心筋症に対しては、血漿交換療法の開発が進んでいます。患者の血液から分離した血漿を、献血で得た血漿と入れ替え、自己抗体を取り除く方法です。

山梨大学病院が開発し、2009年末以降、10歳代の子供2人に実施しました。同病院救急部教授の松田兼一さんは「寝たきりだった2人とも階段を上れるようになりましたた。治療数を増やし、国の先進医療に申請したい」と話したいます。


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関係医療機関

北里研究所病院

山梨大学病院

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