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人工骨「水酸化アパタイト」による骨の「再建」

人工骨「水酸化アパタイト」による骨の「再建」

骨の復元「再建」

事故などで頭を打つと、脳の血管が切れることがあります。すると頭がい骨と脳の間にたまった血液で脳が圧迫され、深刻な障害を起こす危険があります。救急医療では、頭がい骨の一部を切り取って圧力を逃がす処置が取られますが、頭が変形してしまうため、けがが治った後、骨の復元を試みる「再建」を希望する患者は少なくありません。

頭がい骨の欠損をふさぐ、従来の方法には

1.特殊な樹脂を使う。

2.腰骨や肋こつ骨など患者自身の骨を移植する。

などがあります。

しかし樹脂は人体にとって異物なので、炎症が起きやすいです。自分の骨は異物ではありませんが、移植してうまく付く保証はありません。健康な骨を切り取るので、患者の体に負担も大きく、欠損部分が広いと、そもそも不可能です。


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人工骨「水酸化アパタイト」

樹脂や骨に代わり、注目されているのがセラミック系素材の「水酸化アパタイト」です。歯の成分に似ており、生体になじみすく、強度もあり形も自由自在に作れます。ただ、ダイヤモンドを用いた特殊な機械でないと削れないほど硬く、手術中に簡単に加工できません。

その難点を克服したのが、CTによる診断と、コンピューター制御の加工技術の組み合わせです。慶応大看護医療学部助教授の小林正弘さんらが、1990年代初めに開発した。「患者に合わせた精密な形状の人工骨を事前に作り、手術中に加工する煩雑さを回避できる」と説明します。

頭部を1.5ミリ間隔で輸切りに撮影した約100枚のCT画像で、頭骨の詳細な「設計図」を作ります。次に欠損部分を埋める人工骨のデータを計算し、コンピューター制御の工作機械に入力、水酸化アパタイトの塊を切削すれば、オーダーメードの人工骨ができあがります。「誤差1ミリ以内で、頭がい骨の欠損部にピタリとはまる人工骨を作ることができる」と小林さんは言います。

患者の骨の移植では4-8時間かかる手術も、半分以下に短縮できます。

手術時間の短縮に役立つもう一つの「武器」は、人工骨と同時に作る頭骨の全体模型です。人工骨の治療も、この模型製作技術から生まれました。

光を当てると固まる樹脂やナイロンの粉を使い、CTで得た頭骨の輪切りデータに従って、工業用の装置で立体地図を作るように成型します。

実際には見えない頭骨の裏側までほぼ完全に再現できるので、手術計画が立てやすいです。細かい手術に特に有効で、あごの骨の整形の際、歯のかみ合わせを考えた、骨の切り方などを決めるのに、模型を使う病院もあるといいます。

人工骨による形成術には保険が適用されます。ただ、模型を作成する部分は高度先進医療で自己負担となり、患者の負担額は人工骨の大きさなどによっても異なりますが計数10万円となります。小林さんは「利点の大きい技術なので、すべて保険適用にしてほしい」と期待しています。

人工骨の開発

生体になじみやすい人工骨の研究は、近年、急速に進んでおり、ここで紹介した「水酸化アパタイト」をはじめ、様々な素材が開発されています。

例えば、大阪大や早稲田大の研究チームは、直径0.5ミリほどのレンコン状の穴が多数開いたチタンやステンレスを使い、性能の良い人工の骨や歯根を作る実験に成功しました。穴に新しい骨や毛細血管などの組織が入り込んで、元の骨と一体化します。

財団法人「ファインセラミックスセンター」(JFCC、名古屋市と中部大学の共同研究チーム)は、高密度ポリエチレンの中に微小な二酸化チタンをちりばめた人工骨を開発。本物の骨と同様の弾力性があり、椎間板ヘルニアの治療などに使えそうです。


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関係医療機関 慶応大病院形成外科

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