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がんペプチドワクチン療法(免疫細胞療法)

がんペプチドワクチン療法(免疫細胞療法)

ペプチドワクチン療法は第4のがん治療法

がん細胞の一部を合成したワクチンを注射し、人が持つ免疫力を高め、がん細胞を撃退する「がんペプチドワクチン療法」の臨床研究が進んでいます。対象は、抗がん剤や放射線、外科手術などの標準治療が難しくなった進行がん患者に限られていますが、最後まで希望を捨てさせない、第4のがん治療法として期待されています。

ペプチドとは、たんぱく質の一部分で、アミノ酸が複数結びついたものです。がん細胞の表面には、がん細胞特有のペプチドが存在します。

ペプチドワクチン療法は、以下のような手順で行われます。

①がん細胞の表面にある、がん細胞特有のペプチドを、ワクチンとして人工合成し、患者に注射します。

②人体の免疫システムは、注射で外部から侵入したペプチドを、細菌やウイルスなどの病原体と同じ異物と認識します。

③免疫システムは異物を攻撃する「キラーT細胞」を増殖させ、がん細胞そのものを破壊します。

以上のようにペプチドワクチン療法は、人為的に免疫作用を強化させる免疫細胞療法なのです。

ワクチンは通常、敵(病原体)の体内への侵入を防ぎますが、ここでは、体内で生まれた敵(がん)を排除するのが目的です。

直径10センチのがんの細胞数は、キラーT細胞の数千倍ともいわれ、その差は圧倒的。ペプチドワクチン療法はキラーT細胞を人為的に増やし、キラーT細胞に攻撃目標を指示して、がん細胞の増殖を抑え、減らすことを目指します。


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ペプチドワクチン療法の臨床研究

女性A(34)は約2年前に手術で膵臓がんを切除しましたが、約3か月後に肝臓への転移が判明しました。

抗がん剤治療を始めましたが、がんは2か月後に倍以上に肥大し、医師からは治療の継続が困難と告げられました。

ペプチドワクチン療法の臨床研究が行われている千葉徳洲会病院(千葉県船橋市)を知り、昨年4月から、最初の2か月間は週1回、その後は月2回、太ももの付け根にワクチン(1回1㏄)の皮下注射を受けてきました。がんは3センチまで増大しましたが、今年5月中旬には4分の1に縮小しました。

女性は「一時は緩和ケアも考えましたが、最後までがんに向き合う気持ちが持てました」と話しています。

ペプチドワクチン療法は、外科手術や抗がん剤、放射線などの標準的な治療が難しく、使用するペプチドを異物と認識する白血球の型(HLA)を持つ患者に行われます。

白血球の型(HLA)とは、白血球の血液型のことです。このため白血球の型(HLA)と使用するペプチドの種類の組み合わせによって、免疫システムが働く人と、働かない人がでてしまうのです。

注射回数は各施設で多少異なりますが、多くは週1回程度です。東大医科学研究所教授の中村祐輔さんらが開発したワクチンは、ほぼすべての臓器のがんが対象になります。各臓器のペプチドが異なるため、がんの種類に応じて使い分け、最大5種類のペプチドを混ぜます。

同研究所は2006年8月から今年5月中旬に、全国59施設で約1050人に実施。生存期間の延長効果などを分析中ですが、明確な結論は出ていません。発熱や注射部位の皮膚の炎症などがありますが、重い副作用は確認されていないといいます。

中村さんは「標準治療を尽くして免疫力が低下した後ではなく、より早い時期にワクチンが使えれば、さらに効果が表れる可能性がある」と強調しています。

ペプチドワクチン療法は、ほぼすべての種類のがんに共通して存在するペプチド「サバイビン」に注目したワクチンを開発した札幌医大や、約30種類のペプチドから患者の体質に最も適合する数種類を用いる久留米大学などでも臨床研究が行われています。

治療を希望する場合、ワクチン療法に関しては、患者の費用負担はないといいます。


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関係医療機関

東大医科学研究所 (℡03-3443-8111)

札幌医大 (℡011-611-2111 内線2691)

久留米大 (℡0942-31-7975)

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