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がんの免疫細胞療法

がんの免疫細胞療法

がんの免疫細胞療法の概要

免疫細胞療法とは、人体でがん細胞を攻撃する免疫細胞の「リンパ球」を、体外に取り出し特殊な培養施設で、リンパ球の数を増やしたり、機能を付加したりした後、再び体内に戻すといった療法です。自己のリンパ球を使いますので、拒否反応などの副作用がほとんど無い、がん療法です。

免疫細胞療法は、1980年代の後半にアメリカ国立予防衛生研究所(NIH)のローゼンバーグ博士によって、創始されました。

基本的な考え方は、人が持っている本来の自然治癒力を人為的に高めて、がんを治療することです。このため副作用がほとんど無く、進行がんの治療や手術後のがんの再発防止などが期待されています。

私たちの体内では、常に数百から数千のがん細胞が発生していると、考えられています。しかしすぐには、がんの発病には、いたりません。それは人に本来備わっているリンパ球などの免疫機能によって、がんの発症を抑えているからです。

しかし過労や老化などの要因によって、免疫力が低下して、がん細胞の増殖力が強まった時に、がんを発症します。

人の免疫機能を打ち破って、勢力を増したがん細胞に対して、免疫細胞のリンパ球の働きを人為的に強めて、再び人の免疫機能によって、がん細胞を押さえ込むのが免疫細胞療法なのです。


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免疫細胞療法の種類

免疫細胞療法には、以下のような種類があります。

アルファ・ベータT細胞療法(αβT細胞療法)

ガンマ・デルタT細胞療法(γδT細胞療法)

細胞傷害性Tリンパ球療法(CTL療法)

樹状細胞ワクチン療法(DCワクチン療法)

アルファ・ベータT細胞療法(αβT細胞療法)

免疫細胞のなかで、もっともがん細胞に対して攻撃力が強いのが、リンパ球の「アルファ・ベータT細胞」です。このアルファ・ベータT細胞を体内から採取して、約2週間かけて専用の培養施設で、細胞を増殖させ、細胞全体を活性させます。培養が終わりましたら、薬剤などを使っていますので、十分に洗浄してから体内にもどします。これがアルファ・ベータT細胞療法の方法です。

ガンマ・デルタT細胞療法(γδT細胞療法)

ガンマ・デルタT細胞は、Tリンパ球の中に数%しか含まれていません。療法はアルファ・ベータT細胞療法と同じように、培養して体にもどします。

ガンマ・デルタT細胞療法は、がんの種類や病状によってはアルファ・ベータT細胞療法よりも治療効果が期待できる療法です。

ガンマ・デルタT細胞療法は骨腫瘍、骨移転への応用や、乳がんの抗体医薬と併用するこで、相乗効果が期待されています。

細胞傷害性Tリンパ球療法(CTL療法)

細胞傷害性Tリンパ球療法は、Tリンパ球を培養活性する時に、その患者のがん細胞の特徴を覚えこませて、特定のがんに対する攻撃能力を持つTリンパ球を作り、体内にもどす療法です。この時できた細胞を、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)と呼ぶのです。

樹状細胞ワクチン療法(DCワクチン療法)

体内で直接がん細胞を攻撃するのが、免疫細胞のTリンパ球ですが、そのTリンパ球にがん細胞の目印を教えて、攻撃の指示を与えるのが「樹状細胞」なのです。

この樹状細胞は司令塔的な免疫細胞で、効率的にがん細胞を攻撃します。この療法を樹状細胞ワクチン療法と呼びます。

患者のがん細胞から抽出したタンパク質を、樹状細胞に取り込ませて、がん細胞の情報を記憶させた樹状細胞を体内に戻します。この樹状細胞は、その患者のがん細胞だけに反応する細胞傷害性Tリンパ球を、より効率的にがん細胞に誘導して治療効果を発揮します。

現在の免疫細胞療法では、この樹状細胞の働きを、どのように高めるかが課題となっています。樹状細胞ワクチン療法はがん細胞だけを攻撃して高い治療効果が得られることから、今もっとも注目を浴びてりる療法です。

また樹状細胞ワクチン療法とアルファ・ベータT細胞療法を、組み合わせた療法もあります。

免疫細胞療法の進行がんへの効果

がんが転移した進行がんに対しては、抗がん剤療法が主体になっています。抗がん剤療法は絨毛癌や骨髄性白血病、悪性リンパ腫、睾丸腫瘍などには高い治療効果をあげていますが、抗がん剤の毒性はがん細胞だけでなく、正常な細胞にも影響を及ぼします。特に白血球や毛根細胞、消化管上皮などに集中的に働くために、免疫力の低下や脱毛、吐き気、食欲不振などの強い副作用があいます。

このため進行がんに対して、副作用のない免疫細胞療法は、抗がん剤療法に替わる治療法として期待されています。

免疫細胞療法による、がんの再発防止

発症した直後に発見された「早期がん」は、手術でがん細胞を全て取りきれれば、完治ということになりますが、一定の確率で検査で見つからなかった、がん細胞が残存して、数年後に再発するケースが多々あります。

再発防止として抗がん剤が術後の補助療法として、用いられますが、先ほど述べましたように、強い副作用があります。残存しているかどうか確認できていないがんを攻撃するのに、深刻な副作用がある抗がん剤を使用することに対して様々な意見があります。

このよながんの再発防止に対しても、副作用がほとんどなく、発見が困難な微小ながん細胞を全身的に攻撃できる免疫細胞療法は、非常に有効な療法として注目されています。

免疫細胞療法とがんの三大療法

がんの治療には現在、手術と放射線療法、抗がん剤療法といった三大療法があります。

免疫細胞療法は、三大療法に次ぐ「第四の柱」と呼ばれています。そして三大療法と併用することにより、より高い効果が期待されています。

現在、免疫細胞療法と三大療法を様々に組み合わせたがんの治療方法は、「集学的がん治療」と呼ばれています。


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