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鼠径(そけい)ヘルニアのメッシュ治療

鼠径(そけい)ヘルニアのメッシュ治療

鼠径ヘルニアの症状と治療

人の体は、骨や筋肉で守られていますが、部分的に弱点もあります。その一つが、太ももの付け根の鼠径部です。男性では、精巣に行く血管や精子を運ぶ精管、女性では子宮を支えるじん帯などが、内臓を守る筋膜を貫いており、筋膜に開いたこの小さな穴(内鼠径輪)が加齢と共に緩んで広がることなどにより、成人の鼠径ヘルニアが起こります。

慈恵医大病院外科の三沢健之さんは「自然に治ることはなく、悪化すると腸閉そくや腹膜炎を招くこともあります」と注意を促しています。国内の手術件数は年間14万~15万件です。患者の8割以上が男性で、女性と比較して内鼠径輪がもともと大きいためと見られています。

内鼠径輪など、ヘルニアが出てくる穴をヘルニア門と呼び、従来の治療法は、この広がったヘルニア門を縫い縮める方法でした。しかし、加齢で弱くなった筋膜などを引き寄せて穴を縫い縮めると、患部が突っ張る感じが残ります。重いものを持つなどして腹圧がかかると、縫った部分や周辺が裂けてしまうこともあり、再発率は約10%と高かく、手術後は1週間以上の入院も必要です。


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最新の治療法「メッシュ治療」

これに対し、1990年ごろから広まったのが、ポリプロピレン製の人工膜で筋膜の穴をふさぐメッシュ治療です。筋膜などの組織を引き寄せる必要がなく、患部に無理な力がかかりません。傷が小さいため局所麻酔で済むこともあり、医療機関によっては日帰り手術も可能なため、急速に広まりました。

当初は、筋膜の穴の上にメッシュをかぶせて固定する方法でした。その後メッシュを筋膜の下に入れる方法が現れ、強度が改善されたため、再発率は約1%にまで低下しました。

現在主流になっているのは、筋膜の穴にメッシュをはめ込む「メッシュ・プラグ法」や「PHS(プロリン・ヘルニア・システム)法」です。メッシュ・プラグ法は、傘状のメッシュを穴に入れ、上から別のメッシュをかぶせて補強する方法です。PHS法は、一体化した2枚のメッシュで穴を上下から補強する方法です。

また、最近注目されているのが、形状記憶のメッシュ(クーゲルパッチ)を使った「クーゲル法」です。鼠径部を5センチほど切開し、筋膜の下にメッシュを差し込みます。筋膜と腹膜の間に入る形となり、体内で元の形に戻って腹圧で固定されるため、縫い付ける必要もありません。三沢さんは「穴を内側からより広い範囲で補強する方法は、力学的に見てもさらに強度が高いです」と指摘します。

メッシュ治療で懸念されるのが、異物を体内に入れることによる拒絶反応ですが、「ポリプロピレンは手術の糸などにも使われ、異物反応の心配がないことは十分証明されています」と三沢さんは話します。なおメッシュ治療には保険が適用されます。

ただし、子供の鼠径ヘルニアの治療にメッシュを使うと、成長にともなって患部に無理な力がかかることが懸念されるため、子供の場合はメッシュ治療は行われません。


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関係医療機関

東京慈恵医大病院

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