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消化管の運動機能低下による機能性胃腸症(FD)

消化管の運動機能低下による機能性胃腸症(FD)

機能性胃腸症(FD)の原因

食事すると、胃腸は収縮して食べ物を消化したり、直腸側へ送り出したりします。この消化管の運動機能が低下して正常に働かなくなるのが、機能性胃腸症(FD: Functional Dyspepsia)です。主にストレスが原因とされ、30~50歳代の女性に比較的多いいです。

内視鏡検査では、粘膜に外見的な異常が見つかりません。このため、従来は「気のせい」「病気ではない」と言われたり、「慢性胃炎」と診断されたりすることが多かったです。

しかし、胃炎と診断して薬を出しても、胃の運動機能低下による症状は、胃炎治療に使われる粘膜保護薬では治りません。「気のせい」と言われた場合も、患者は症状が治まらないため、かえって不安やストレスが増し、悪化する例も少なくなくありません。

消化管の運動機能低下で胃もたれなどが起きることは、専門医の間では1980年代から世界的に注目されていました。そこで、患者に安心感を与えるとともに、治療の対象にしようと付けられた病名が機能性胃腸症です。

1990年代に、胃炎がヘリコバクター・ピロリ菌によって引き起こされることが分かり、この菌の感染を伴わない機能性胃腸症が区別できるようになりました。世界の医師で構成するローマ委員会は1999年、国際的な疾病の診断基準を定めた「ローマ基準2」にこの病気を盛り込みました。


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機能性胃腸症(FD)の治療法

治療法も確立しつつある東北大病院総合診療部長の本郷道夫さんが代表幹事を務める日本国際消化管運動研究会は、2004~05年、この疾患とみられる患者1000人を対象に、胃腸の運動を促す薬(モサプリド)の臨床試験を実施しました。モサプリドを服用した患者の91%で症状が改善し、有効性が確認されました。

一方、効果のはっきりしない粘膜保護薬(テプレノン)を服用した患者で良くなったのは52%でしたが、これは薬効のない偽薬(プラセボ)を使った海外の試験データと同程度の改善率でした。患者の半数は、薬を飲むという安心感で症状が改善することが示されました。

モサプリドのほか抗不安薬や、ストレスを緩和させる精神心理療法を併用することで効果をあげています。

埼玉県済生会川口総合病院院長の原沢茂さんは「病気について丁寧に説明すれば、納得して症状が治まる患者も多いいです。家族関係や経済的な問題など、患者の悩みを聞くことでストレスもかなり緩和されます」と話しています。

機能性胃腸症(FD)の診断

この疾患と混同されやすいのが、腹痛や下痢などが表れる「過敏性腸症候群」や、胃酸の逆流で食道がただれる「逆流性食道炎」です。これらの病気でないことを確かめ、内視鏡検査でも問題ない場合に機能性胃腸症と診断されます。

日本人の4人に1人が機能性胃腸症を経験したと見られますが、まだ保険適用される病名にはなっていません。

このため、日本消化器病学会は、この病気に「機能性ディスペプシア」という保険病名を認めるべきだとする答申を厚生労働省に提出して、診療指針の作成の検討も始めました。


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関係医療機関

東北大学病院

埼玉県済生会川口総合病院

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