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イボ痔の内痔核硬化療法剤治療(ALTA)

イボ痔の内痔核硬化療法剤治療(ALTA)

粘膜下組織が腫れるイボ痔

成人の3人に1人は痔で悩んでいると言います。肛門付近にイボができる「イボ痔(痔核)」、肛門の皮膚 が切れる「切れ痔」、肛門の周囲から膿(うみ)が出る「痔ろう」があります。その中で半数以上を占める のが、イボ痔です。

イボ痔は、便秘などでいきんだ時に肛門に強い負担がかかり、肛門を閉める括約筋の内側にあって、開閉 の手助けをする粘膜下組織の「クッション」部分が腫れることでできます。直腸側にできるのが内痔核、肛 門側にできるのは外痔核と呼ばれます。

新しい薬物注射療法は、内痔核が対象となります。これには、クッションが緩んで排便時に内痔核が肛門 の外に出たり、出たままになったりするなど、従来は手術が行われてきた重い症状も含まれます。


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イボ痔を縮小させる「内痔核硬化療法剤」

この薬は「内痔核硬化療法剤」(商品名・ジオン注)で、2005年3月に発売されました。治療は、まず 括約筋を麻酔で緩めます。次に、痔核1個につき4か所に注射し、薬剤が全体に行き渡るようにします。

注射に要する時間は10-20分程度です。主成分である硫酸アルミニウムカリウムが、炎症を起こした クッション部分を線維化させ、硬くします。すると、緩んでいたクッションが縮み、元の位置に戻る、とい う仕組みです。痔核の中を流れる血液量も減少し、出血が止まります。注射後1週間から1か月ほどで、痔 核が肛門から出なくなると言います。

社会保険中央総合病院大腸肛門病センターなど全国10施設で行われた臨床試験では、この注射療法は、 痔核を切り取る手術に比べて、治療後の痛みや出血が少なく、平均入院期間も手術をした場合の三分の一の 3.6日に短縮されました。

土庫(どんご)病院大腸肛門病センター(奈良県)医師の高村寿雄(たかむらひさお)さんは「軽度の内痔 核が対象だったこれまでの注射療法に比べると、効果が高いです。日帰りでの治療も可能です」と話します 。

「内痔核硬化療法剤治療」の効果

ただし、痔核を除去するわけではないため、臨床試験データでは、注射後1年間の再発率は16%と、手 術の約2%に比べて高かったです。社会保険中央総合病院前副院長の岩垂純一(いわだれじゅんいち)さん は「今後、どれほど効果が持続するか検討が必要ですが、再発しても再度注射できます」と説明しています 。

岩垂さんによると、新しい薬物注射治療法が向かないのは、

1.内痔核のほかに大きな外痔核もある

2.痔ろう、切れ痔、肛門ポリープを伴う

などの症状がある人です。安全性の面で、子供や妊婦、授乳中の女性にも勧められません。

注射療法には、医師の技術も要求されます。薬が適切な場所に届かないと、直腸筋層が壊死(えし)し、 炎症などが起きる恐れがあるからです。そのため、専門医でっくる「内痔核治療法研究会」(代表世話役人= 岩垂副院長)の講習会を受けた医師だけが、この薬を使用できることになっています。

治療には保険が適用されます。岩垂さんは「医師の技術を高め、痔の治療における1つの武器として確立 させたい」と話しています。

その他の痔核の治療法

イボ痔の治療は、食生活や排便習慣などを改善し、症状の悪化を防ぐ「保存療法」が基本です。

出血がひどかったり、脱出によって日常生活に支障をきたしたりする場合は、薬物注射療法、痔核の根元 をゴム輪で締め付け、痔核を取る「ゴム輪けっさつ法」、痔核に血液を送る血管を縛り、痔核を切り取る「 けっさつ切除術」、日帰り手術も可能な「PPH法」などがあります。

手術が必要なのは、患者さんの1-2割程度です。


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関係医療機関

社会保険中央総合病院大腸肛門病センター

土庫(どんご)病院大腸肛門病センター

内痔核治療法研究会

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