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手術による「てんかん」治療

手術による「てんかん」治療

てんかん

てんかんは、脳の電気信号の伝達異常によって、突然意識を失って倒れたり、けいれんを起こしたりします。自動車の運転免許を取れないほか、発作で日常生活に大きな支障を与えます。原因は脳腫瘍や、胎児期に大脳が形作られる際の異常、頭部外傷や脳卒中などさまざまあります。患者は1000人あたり5-10人と言われ、決して珍しくない病気です。

抗てんかん薬は患者の三分の二に有効とされています。しかし、薬で改善しない場合を「難治性てんかん」と呼び、人口の0.1%程度の患者がいます。病変が脳全体に及ぶものと、局所にとどまるものがあり、難治性でも局所にとどまれば手術が可能です。手術は脳の病変を切除したり、異常な電気信号が出る部位を切断したりします。手術で全体の95%は発作が以前より少なくなり、その8-9割は発作が完全に消えると言います。手術できる患者は国内で年3000-4000人に上るとされています。しかし、年間手術数は500件程度にとどまっています。

「専門医とされる神経内科医でも、手術は危険で効果が小さいと思いこんでいる場合が少なくない」と、国立精神・神経センター武蔵病院手術部長の大槻泰介さんは指摘します。


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手術によるてんかん治療

手術で改善しやすいのは、脳中心部の海馬と呼ばれる部位に、委縮や硬化が見られる「内側型側頭葉てんかん」や、腫瘍や大脳の形成異常が原因のものなどです。画像で異常が見つかる場合が多く、手術自体は数10年前から行われていたが、治療成績はここ10年ほどで飛躍的に向上しています。画像診断の進歩で、てんかんの原因となる病変が正確に特定されやすくなったためです。

脳の構造の変化などを見るため、以前から使われてきた磁気共鳴画像(MRI)に加え、脳の血流を見る単光子放射型コンピューター断層撮影(SPECT)、ブドウ糖代謝を見る陽電子放射断層撮影(PET)、脳の電気信号の変化をとらえる脳磁図(MEG)などが登場し、診断、治療の大きな力になっています。

大槻さんは「手術で確実に治るてんかんがあることを知ってほしい。従来難しいとされた場所も手術ができるようになり、後遺症も減っている」と言います。

2002年には日本神経学会で、てんかんの治療指針(ガイドライン)がまとめられ、手術の有効性も盛り込まれています。大人では、薬を飲んで二、三年経過を見ても改善しない場合は、手術の検討対象となります。子どもの場合、てんかんが成長に及ぼす影響が大きいことを考慮し、早めに手術することが多いです。発作を起こすことで、日常生活にどの程度支障が出るかも、手術の判断基準となります。

検査や手術などの入院期間は約二か月。治療には保険が適用されます。ただし、脳手術だけに、全体の1%弱には手足のまひや言葉の障害など、重大な後遺症が出てしまいます。手術を受けても改善しない人も5%程度います。日本てんかん学会認定医がいて、手術ができる施設は20程度あります。手術経験の豊富な施設で十分な説明を受け、納得の上で手術を受けること決めてください。

てんかんの薬物治療

脳全体に発作が広がり、意識を失い体を硬直させてけいれんを起こす「全般発作」にはバルプロ酸(一般名)、脳の嘉の機能が間題を起こし、けいれん、しびれ、幻聴などを起こす「部分発作」にはカルバマゼピン(同)が第一選択薬として使われています。

薬で効果がない場合、手術が検討されます。日本神経学会の「てんかん治療ガイドライン(指針)」がホームページで公開されています。


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関係医療機関 国立精神・神経センター武蔵病院

関連サイト 日本神経学会 日本てんかん学会

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