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脳卒中の新しいリハビリ法「CI療法」

脳卒中の新しいリハビリ法「CI療法」

脳卒中のリハビリ

脳梗塞など脳卒中の後遺症で、左右どちらか一方の腕や足に運動障害(片まひ)が起こることが少なくありません。足のリハビリは歩けるようになることを目指しますが、腕や手は、短時間のリハビリを毎日続けてもあまり効果がない場合、まひしていない腕で食事や字を書くことができるよう、指導を切り替えることが多いです。


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新しいリハビリ法「CI療法」

これに対し、まひした腕を集中的に訓練する、新しいリハビリ法「CI療法」があります。1989年ごろからアメリカで始められ、英語の頭文字をとって「CI療法」と呼ばれています。

(CI=constraint induced movement therapy 訳「脳卒中片まひの集中訓練」)

この方法は、健常な腕を使わないようにした上で、まひした腕を使う訓練を毎日長時間、2-3週間かけて行うのがポイントになります。

CI療法は日米以外にもイギリス、ドイツ、韓国など7か国以上で実施され、脳の外傷、脳性まひといった脳卒中以外の患者に応用された例もあるといいます。

兵庫医大病院と、分院の篠山病院では、2300年以降、47-81歳の男女20人にCI療法を実施しました。何も握れなかった人が、包丁を使えるようになるなど、14人で改善が見られました。一般に、後遺症が出てから時間が経過してしまうと回復しにくいとされますが、発症後16年以上たっても、ある程度動くようになった例もあります。

なぜ、腕の動きが回復するのか、同医大教授の道免和久(どうめんかずひさ)さんは「脳細胞に柔軟性(可塑性)があるため。集中的な訓練で、運動をつかさどる大脳皮質の障害のない部分が、障害のある領域の機能を果たすようになる」と見ています。

ただし、訓練は過酷です。同医大では、健常な腕を使わないよう三角きんで縛り、まひした手の訓練を毎日5時間、その訓練を10-14日間行います。作業療法士らが付きっきりで「タオルを動かす」簡単な動作から、「小銭をつまむ」「蝶結びをする」など、複雑な動作へと進めていきます。訓練項目は62通りにも及びます。

患者は単調な動作を繰り返す訓練に忍耐を強いられます。それでも、あきらめていた手の動きを取り戻す、喜びは大きいです。従来のやり方では「動く方しか訓練しない」と、物足りなかった患者の不満も解消されます。

CI療法の適用基準

しかし、重いまひの場合、機能回復は難しいです。2004年からCI療法を導入した自衛隊中央病院リハビリテーション科医長の越智文雄さんは「この治療の対象者はかなり限定され、脳卒中の片まひ患者の二割ほど」と話します。

道免さんも「まひが消えて元通りに回復する〃奇跡の治療"ではない」と言い、指や手の関節を自力である程度動かせるなどの適用基準を設けています。

適用基準は兵庫医大、同篠山病院の基準では、まひしている側の手首が手の甲の側に20度以上動かせて、さらに親指を含めた3本の指が10度以上伸ばせることとしている。訓練初期はまったく手や腕が動かないのに長時間、単調な動作を繰り返さなければならないので、患者自身の強い意欲、集中訓練のストレスに耐えられる精神力、血圧や他の病気が安定していることなども求めています。

CI療法の現状

この治療は、日本神経学会などがまとめた「脳卒中治療ガイドライン」でリハビリの一つとして推奨はしていますが、普及していません。医療機関が請求できるリハビリの診療報酬は短時間に限られ、作業療法士が長時間患者に付きそうには、見合わないことも一因とみられています。


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関係医療機関

兵庫医大病院

篠山病院

自衛隊中央病院

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