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脳卒中の後遺症治療「経頭蓋磁気刺激治療」(TMS治療)

脳卒中の後遺症治療「経頭蓋磁気刺激治療」(TMS治療)

脳卒中の後遺症

脳卒中は脳の血管が詰まったり、破れたりして脳に損傷を与える病気です。脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血の3疾患を合わせて脳卒中と呼びます。脳卒中の患者は年間130万人以上で、年間医療費は約1兆9千万円にもなる国民病です。そして多くの場合、体がまひ(運動障害)する、後遺症が残ります。突然身体が動かなくなるため、患者の精神的ショックは大きく、脳卒中になった初期の7割の方はうつ病になります。

まひ(運動障害)の一般的な治療法は、リハビリテーションになります。しかし、それには限界があり、発症してから60日までは眼に見えて回復しますが、それを過ぎると回復が鈍くなり、4ヶ月を過ぎるとそれ以上の回復は見込めなくなります。


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新たな治療法「頭蓋磁気刺激治療」(TMS治療)

脳卒中の後遺症の治療に、画期的な実績を上げているのは、東京慈恵医大病院の安保雅博医師が行っている経頭蓋磁気刺激治療(TMS治療)です。経頭蓋磁気刺激装置という磁気を発生させる機械を使って、頭の上から運動神経を刺激する方法です。

人間の脳は大きく左右に分かれていて、右の脳は左半身の動き、左の脳は右半身の動きをつかさどっています。経頭蓋磁気刺激装置で右の脳に磁気の刺激を与えますと、神経回路を伝わり左半身が動きます。

頭蓋磁気刺激治療(TMS治療)は、損傷を受けていない、正常な側の脳に磁気刺激を与えます。20分間の磁気刺激治療を受けた後は、1時間のリハビリテーション(CI療法)を行います。この治療法により、わずか2週間ほどで驚くべき回復をみせます。そのうえ発症から10年以上たった患者さんも、この治療法によって回復します。

頭蓋磁気刺激治療(TMS治療)のメカニズム

人間の脳は右が損傷した場合、反対の左の脳が、動かない右の脳の働きを助けをすると考えられてきました。しかし安保雅博医師は逆に、正常な脳が損傷した脳の回復を妨げていると考えました。そのため経頭蓋磁気刺激装置で、正常な脳の働きを磁気で抑えてみたところ、脳の損傷した部分の周りが、活発に機能しはじめたのです。

頭蓋磁気刺激治療(TMS治療)は、正常な側の脳の働きを磁気刺激により一時的に抑えて、損傷した脳の機能を回復させるのです。

治療は入院によって行われ、期間は10日から14日間ほどです。現在この治療は健康保険適用外ですが、研究段階のため治療費は病院側が負担します。ただし入院費とリハビリ費用は患者負担(健康保険適用)になります。

治療の適応基準

上肢(腕と手)のまひ、さらに腕を固定して指が1本でも開く動作ができる、患者さんのみに、この治療が適応されます。

経頭蓋磁気刺激治療は足のまひには、効果がありません。その理由は手や腕を動かす脳の部分は脳の表面にあるのに対して、足の運動をつかさどる部分が、脳の奥にあるため、磁気の刺激が十分届かないからです。このため安保医師は、磁気よりも強い電気刺激による治療方法を現在研究中です。

また脳卒中による失語症に対しても、経頭蓋磁気刺激治療による実績が少なく、効果は未知の部分が多いです。失語症の原因は、言語中枢をつかさどる左側の脳の損傷が原因になります。失語症は身体のまひよりも未知の部分が多いですが、現在身体のまひと同じく、正常な右の脳に磁気刺激を与えて、治療を行い一定の成果をあげています。

頭蓋磁気刺激治療による「うつ病」治療

頭蓋磁気刺激治療(TMS治療)は現在「うつ病」治療にも有効です。治療を行っている医療機関は、神奈川県立精神医療センター芹香病院(きんこうびょういん)です。


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関係医療機関 

東京慈恵医大病院 

清水病院(鳥取県)

神奈川県立精神医療センター芹香病院(きんこうびょういん)

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