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耳鳴りの苦痛軽減治療TRT

耳鳴りの苦痛軽減治療TRT

耳鳴りの原因

「キーン」「ザー」といった雑音が聞こえる耳鳴り、半年以上続く慢性の耳鳴りは、重症だと不眠やうつ症状を伴って日常生活に支障をきたします。

耳鳴りは、カタツムリの形をした内耳の器官「蝸牛」(かぎゅう)に加齢などで異常が起き、発生することが多いとされています。完全に消す方法はなく、放置されることが多かったですが、苦痛を軽くする治療「TRT」が試みられています。


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苦痛軽減治療TRT

TRTはtinnitus retraining therapyの頭文字で「耳鳴り順応療法」と呼びます。1994年に米国で考案され、ヨーロッパなどで普及して、日本では2002年に導入されました。

「耳鳴りの音自体は変わらないのに、急につらさが増すことがある。発生源は耳ですが、苦痛を悪化させるのは脳内の現象と考えられます」と慶応大病院で難聴・耳鳴外来を担当する済生会宇都宮病院医長の新田清一さんは話します。

私たちは普段エアコンなどの音や雑踏の音は意識しませんが、人ごみで自分の名前を呼ばれると、さほど大きな声でなくても気づきます。「重要」「危険」と思われる音を脳が判断・選択しているのです。

耳鳴りは、疲れなどをきっかけに急に起きることが多いため、「耳が聞こえなくなるのでは」といった心配が、不眠や冷や汗など自律神経系の反応を引き起こします。耳鳴りに気持ちが集中するほど、脳が「危険信号」と過敏に反応する悪循環を生み、苦痛が増すと考えられます。

TRTの治療法は、2つの方法で行われます。

  1. 耳鳴りのメカニズムを知るカウンセリング
  2. 別の音を使って耳鳴りに慣れる音響療法

慶応大病院では、耳鳴りの強さや聴力などの検査後、耳鳴りがどうして起きるか、なぜ苦痛に感じるか、といった知識を丁寧に説明します。患者の希望や状況に応じて臨床心理士の面談も行います。「受診者の約8ー9割は軽症。説明を受けて納得し、苦痛が緩和される人が多い」と新田さんは話します。

重症患者には「音響療法」を行います。音を聞き続けることで、耳鳴りも「危険な音ではない」と脳に認識させる目的です。ラジオの音や音楽でも効果はありますが、「TCI」という専用の機器があります。

補聴器に似た形で、ザーといった4種類の音が出ます。自分にあった音を、耳鳴りを完全に消さない強さに調整、一日6-8時間装着します。1-2年は続ける息の長い治療です。保険はきかず、一台63000円(税込み)しますが、同大では「苦痛が軽減した」「やや軽減」と答えた患者さんが、計約8割にのぼっています。

この治療を行う病院はまだ少なく、慶応大では患者の方が2-3か月待ちの状態といいます。耳鼻咽喉科教授の小川郁さんは「耳鳴りをうまく忘れるには、静かな場所やストレスを避けること。TRT療法は、耳鳴りを小さくしたり消したりする治療ではないことを、理解して受けてほしい」と話しています。


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関係医療機関 慶応大病院 済生会宇都宮病院

関連サイト シーメンス社(TRT療法を行う医療機関を紹介)

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